そして裏切り者が動き出す
イリスの指示の元、7話の場所へとやってくる。
どうやら大通りに出れば良かったらしい。
周囲では何処からともなく突然瞬間移動で出現しては大通りを歩いて思い思いの行動を行い、そのまま瞬間移動で消えていく人々が多数いらっしゃった。
「かっぱらいだーっ!!」
目の前を男が一人駆け去っていく。
それを追う兵士さんたちの目の前で、犯人の男は一瞬で瞬間移動した。
どうやら瞬間移動を行いだした自由行動キャラの一人が悪行を思いついたようだ。
見失ってしまった兵士達が歩みを止め、クソッと舌打ち、地団太、路上に唾を吐き付ける。
「大丈夫ですか?」
僕は思わず声を掛ける。
兵士の一人が悪態を見られていたことに気付いてバツの悪そうな顔で頭を掻く。
「ああ、見てたのかい。最近ああいう追剥が増えてね。捕まえようにも一瞬で消えてしまう。手の打ちようがないんだ。どうしたらいいのか……」
よし、GMメールしよう。兵士さんに悪人の居場所が分かるようにできないか尋ねてみた。
―― もうバグ取り許してっていったじゃーんっ。まぁ、これは流石に捨ておけないからやるけども ――
ブツクサ言いながら作業を始めたらしい神様。唐突に目の前の兵士達が上を見上げたまま痙攣し始めた。
え? 何コレ怖い。白目向いて全身ガクガク震えだしてるんだけど!?
声、なんか変な震えた声出てる。集団トリップ事件だこれぇ!?
唐突に痙攣が止まる。
そしてはっと我に返った兵士たちが視線を向けあう。
「この脳内に出来た地図と点は……」
「ああ、おそらくついさっきの追剥野郎だ」
「行くぞ皆! 極悪なクソ野郎に一泡吹かせてやろうっ」
気合いを入れ直した兵士達が走り去っていった。
それを見送った僕らは7話をタップ。すると目の前に突然現れる暗殺者集団。
まさか、貴様等も瞬間移動を手に入れたのか!?
「死ね!」
って、王女を殺しにきとるやーんっ!?
戦闘NPCにマルサを加え、戦場へと送りだす。
戦闘自体は簡単に済んだんだけど、ギドゥが全く攻撃しないのでこれはもうベンチ要員確定かもしれん。
次の戦闘でも何もしないならベンチ確定だぞ?
再びパルマに手を引かれて逃げるのだが、今度は逃げた先にアサシンたちが出現し始める。
まるで行く先行く先がバレてしまっているようだ。
もしかして神様、奴らにも僕らの場所分かるようにしてないだろうな?
思わずメール送ってみるけど
―― 仕様です ――
その一言だけが返ってきた。
ってことは何かしらの理由で先回りされてるってことか。
「誰か分かりそうな奴居ないか?」
「えー、そんなこと言われても……」
「こちらの情報が向こうに漏れていると見た方が良いでしょう。そうですね、ではそこの三叉路を真っ直ぐ向った後に戻って左に向かってみましょう」
「了解」
イリスに言われるままにフェイント掛けて左方向の小道に入る。
すると通路を越えた先にアサシン達が待ち構えていた。
「囲まれたんだが?」
「後ろからも詰められてます!」
「よし迎撃を……」
告げようとした次の瞬間。
突然仲間たちが動き出した。
なんだ? と驚く僕の目の前で。パルマに近づいたマルサが短刀を突き刺す。
が、その寸前でサシャが飛び蹴りを放って短刀を蹴り飛ばした。
何が起こったのか理解できないうちにサシャの回し蹴りを喰らったマルサが吹き飛ばされる。
え? ちょ、奴隷は味方に攻撃出来ない筈では?
「サシャ、奴隷の首輪は……」
「え? このおもちゃ? 既に握り潰してで壊してあるけど? 壊しちゃダメって命令されてなかったし」
軽々首輪を取って見せるサシャ。どうやら最初から奴隷の振りをしていたようだ。
アサシンの群れに突っ込んでいたマルサが起き上がる。
「あたた。ちょっとぉ、なんで邪魔するのよぉ」
「えー、だってその方が面白そうだし?」
ちょっと、今のうちに整理しよう。
今回仲間になったオリジナルキャラは絶望皇女パルマ、鮮血令嬢サシャ、そして帝国のスパイマルサだ。
待てよ、帝国のスパイ? 皇国じゃなくて?
今の僕らは皇国兵に追われてパルマを国に連れ戻されるのを防いでいると思ったけど、違う?
そういえば追ってるのって帝国兵だっけ?
もしも、皇国の中に皇女を今のうちに亡きモノにしたいと考えるモノが居れば? 帝国のスパイが狙っているのが皇女の命だとすれば? 奴隷になったように見せかけ近づき隙を見付けて殺そうとしていたとしたら?
馬車内で殺さなかったのは仕様か、サシャがいたからか。
ともかく、今回のイベントでこいつは今、ココで裏切る予定だったということだ。
そしてサシャが居たことでパルマ死亡フラグがへし折られた。
ナイスサシャ。
鮮血令嬢なのによく助けた!
「なぜ、貴女は今回手を出さないといったじゃないっ」
「あら、そうだったかしら? 目の前で可愛らしい女性が死んでしまうのは嫌よ。どうせ殺すならお風呂場でやらないと。乙女の鮮血は私の肌を潤すためにあるのよ?」
助けた理由ッ!! 思わず叫びたく僕でした。




