賞金稼ぎは、初めから居なかったのさ
「あ、あれ? サボさんどうなった?」
「うーん? 消えちゃったねぇ?」
「帝国兵どもは戦闘終了と共に逃げだしたぞ?」
僕とサシャが小首を傾げていると、リーハが近づいてくる。
そう、死んだ筈の帝国兵たちは戦闘終了と共に復活して慌てて逃げだしたのだ。
身体真っ二つになってたのに五体満足で復活するとか、この世界の住民は超人ばっかりか?
「とりあえず4話始めたら出てくんじゃないの?」
「ああ、その可能性はあるか」
ルーカの言葉に頷き3章4話をタップしてみる。
「やぁ、危なかったな君たち」
すると突然何処からともなく声が聞こえて来た。
僕らは周囲を見回すが、そこには誰も居ない。
当然サボの姿は無い。だが声だけは聞こえている。
「私はバウンティーハンターをしているサボというものだ。何やら金の匂いがするな。良ければなにがあったか話してみてはくれないか?」
「えっと……どうも皇女が奴隷に紛れてたらしくてさ、そこの国の兵士達が取り返しに来てるんだ。ただ、皇女様は国の連れ戻されたくないみたいでさ」
「私は、もうあの国に居たくないの……」
「はっ。そりゃ大変だ。帝国軍も躍起になってあんたを探すだろうな。分かった、500000金貨で請け負ってやる」
金、取るんだ。
強制的に取るつもりかな? でも少し前にガチャに注ぎ込んでお金ないよ?
「お金、ない。今奴隷だし……」
「なぁに、出世払いでいいさ。気長に待つさ。常に共にある訳だしな」
どうやら付いてくるようだ。
でもね、サボさん姿が見えないんだけど、どこにいったの?
ってかどっから話してるの?
「まぁ、気楽に任せな、俺があんたを守ってやるさ」
だから、姿すら見えないのに一体どうやって守るのさ!?
「居たぞ、奴らだッ」
「おっと、無粋な奴らがまた来たか。おう、そこの旦那。皇女の護衛、俺も手伝ってやるぜ」
だからどっから声出てんだよ?
とりあえず戦闘メンバーのNPCを調べる。サシャ、マルサ、パルマ、サボが選べるようだ。
折角なのでサシャを下げてサボを戦闘メンバーに加入させてみる。
そして戦闘開始。
リーハとサクヤが戸惑いを浮かべているのは、仲間に入った筈のサボの姿がないからだろう。
うん、僕からも見えないからね。どうなってるの? 戦場に居るんだよね?
神様から何かしらの反応があればいいんだけどその気配も無いし。
サボが復活する気配も無い。
というか、攻撃している気配すらないぞ?
WAVE移行が3回あったけどサボの攻撃している様子が見当たらない。
というか攻撃の声とかもでなくなってるよな。もしかして完全に消失した?
結局その後にサボらしき声が出てくることも無く、帝国兵を撃退して終わってしまった。
「困りましたね」
「イリス?」
「どうしますかダイスケ。サボさんが居ないと次の話進まない気がするのだけど」
「え? 重要キャラなの?」
「はい。下手すればパルマさんが死にかねません。次の話は狙撃手が出てくるので」
「それは最悪だな。よし、ストックからあいつらを出そう」
僕は優しき殺し屋ギドゥ、古代兵器ナルタ、華奢トロールオデーブを出現させる。
とりあえず防御特化と思われる二人と、殺し屋だから何かしら対策出来るんじゃないかなって思ってギドゥさんを呼んでみた。
あとは先頭をアニキとナルタで護衛にオデーブ。ギドゥは遊撃かな。後一人は……レスティスにしよう。君の無敵に期待する。
とりあえずその場でデイリーミッションを周回して彼らのレベルを上げておく。
流石にレベル1で闘うには不安があるしな。アニキが居るから前衛は問題ないけど、せめて10レベルくらいは欲しいところだ。
戦闘自体はリーハ達に任せて強化の種だけ集めてナルタ、オデーブ、ギドゥのレベルを上げる。
よし、じゃあ5話目に行ってみるか。
5話をタップしてみると、何故か皆が戸惑い始める。
どうしたのかとイリスに聞いてみれば、どうもサボが案内するイベントらしく、彼の隠れ家に向かう筈なのだそうだ。
サボしか隠れ家が分からないので移動が不可能になっているらしい。
「あれ? お兄さん何してんの?」
「君は……確か猫が邪魔で閉じ込められてた……」
「カッツェだよ」
たまたまこの付近を行動していたカッツェが困った顔の僕らを見て近づいて来た。
「いや、サボの隠れ家に行かなきゃいけないみたいなんだけど、サボが消えちまってな……」
「ふーん? よくわかんないけどサボさんの家に行きたいの? こっちだよ?」
まさかの知ってた!?
これは、もしかしてサボ居なくてもイベント進行可能なのか?
神様は反応しないし、いいか、サボ居なくっても。
そうだよ、サボテンガンマンはいなかったんだ。そういうことにしておこう。




