バグが解除されないのだがどうしたらいい?
しばし待った。
しかし、急ぐおじさんとパルマさんは一向に譲り合おうとしない。
入れ替えたいけど僕が前に出たところでおっさんが後ろに向かうことは無かった。
どうします? とパルマが走りながら尋ねる。
うん、まぁ、いうなれば……神は当てにできない。ってことか。
このまま待っても変わらなそうだし、行動起こすしかないかな。
でも、行動を起こすとしてもはて、何をしたらよかろうか?
うん、まぁ、アレしかないか。
「女性陣悪いんだけど目を瞑っといてくれない?」
「目を?」
「ああ、ちょっと見苦しいモノが現れるからな、うん」
皆が目を瞑ったのを確認し、僕は即座に行動を開始した。
目の前に居たおっさんのズボンをずり降ろす。
いや、これだけじゃダメだな。
パンツも思いっきりずり降ろす。
ぱおーんと出現した物を見ないようにして、僕は叫んだ。
「衛兵さん、こいつですっ!」
そしてしばし、声を聞き付けやってきた衛兵さんが下半身もろだしのおっさんを捕まえる。
「な、何だねチミたちは!?」
「ええい、女性の前で公然と猥褻を行うとは何たる奴か」
「え? 待って、わしはただ散歩に。待ってくれっ、誤解だ! 誰かがわしを嵌めようとしているんだっ」
「下半身丸出しのまま言われても説得力がないぞ。さっさと来いッ!」
泣き叫ぶおっさんは衛兵さんたちに連れ去られてしまった。
俺達が前に進むためには必要だった犠牲だ。
すまないおっさん。僕たちは、貴方の犠牲を無駄にはしない。第3話に向けて、行くぞ皆!
「障害が消えた。パルマ、行こう!」
「え? あ、あれ? あ、そうですね。行きましょう」
目を開くと居なくなっていた障害物に、パルマは驚きながらも気にするのは止めて僕の手を引き駆けだした。
皆もそれにつられて駆けだす。
目を閉じていなかったアニキとケンウッドが僕を何とも言えない目で見ていたけど、何か言いたいことでもあるのかな?
「まぁ、必要悪、かな」
「わしゃ何も見とらんわい」
二人ともおっさんの悲劇は見て見ぬふりをすることにしたようだ。
仕方ないよね。だっておっさんが邪魔で神様も助けてくれなかったんだもん。
途中何度か曲がり角を曲がって行くと、ケンウッドの尻に顔を埋めていた帝国兵たちがなぜか僕らを見失ってしまったようだ。
大通りに戻ってきた僕らはふぅっと息を吐く。
この辺りまで来れば見付かることは無いだろう。イベントで見付からない限りは。
んじゃ3話目をぽちっとな。
「あ、3話目はここで始まるみたいね」
ルーカの言葉にふーんと気の無い返事をしていると帝国兵が追い付いてしまった。
見つけたぞ! と大通りにやってきた兵士達がそのまま抜剣する。
周囲の民間人が騒ぎ始め、押し合い圧し合い逃げだし始める。
「リーハ、サクヤ、戦闘を……」
「そこまでだお前たち。街中で抜剣とは褒められたものではないな」
突然、逃げだす人々の波を割って現れる一人の男。男……?
そいつはテンガロンハットを被っていた。
そいつはウエスタンブーツを履いて、ガンマンにしか見えない服装をしていた。
そいつは全身を棘に覆われ埴輪のような黒い瞳と口を僕等に向けていた。
緑色の身体は、どう見ても……サボテンだった。
「あれはっ!?」
突然モブのおっさんが叫ぶ。
「知っているのかサムっ!?」
「ありゃバウンティハンターのサボだ!」
「な、なんだってぇ!?」
どっかの超常現象研究部みたいなノリのモブたちがリアル顔で驚きを浮かべていた。
「お嬢さん方、ちょいと手伝わせて貰うぜ?」
今回のNPCお助けキャラはこのサボテン男のようだ。
手? といっていいのか? サボテンの枝にしか見えない腕に銃がくっつき、自身の帽子のツバを押し上げ恰好付けている。
サボテンの癖に妙に様になっているのが無駄にムカツク。
「ま、まぁいいや。皆よろしく」
戦闘班を送り出しサボと協力して敵と闘う。
サボが力を発揮しようとしたその直後。
「そーれ、スラッシュブラッド」
サシャを仲間キャラに入れた覚えなかったんだけど、なぜか戦闘班と一緒に向かった彼女の初回攻撃で敵が全滅した。
あの、なんで君が戦闘に参加してるのかな?
「え? 戦闘班でしょ?」
何言ってんの? と告げるサシャ。
あ、なんかNPC枠がサシャで埋まってる。
サボは? 消えちゃってるじゃん。どこ行ったサボ!?
戦闘に参加するようなことを言いながら戦場から消え去ったサボ。
一体どこに行ってしまったのか、とりあえずGMメール送ったけどこのバグが解消される気配は無い。
寝てるのかな神様?
しばらく待つがサボが戻ってくる気配は欠片すらなかったのだった。




