神様弱音を吐く
「お願いだよダイスケく~んっ」
僕の足に縋りついて泣きだした触手生物。
何だこの絵面。
泣きながら寄生しようとしているクリーチャーにしか見えないぞ。
「神様流石にちょっとウザい」
「酷いな君は。とにかく、バグはもういいだろ? ねぇ、もう許してっ」
「そう言われてもさ、目に付いた致命的なバグが多過ぎて流石に見過ごせないよ。それに僕はベータテスターでしょ。なら他の人にも解放するつもりなんだろうし、だったらこの辺りはしっかりと作り込んどかないと」
「そうだけど、そうだけどさぁ。ちょっと一気にバグ報告来すぎだよ。村の人全員の行動パターン変えなきゃいけないんだぞ!?」
それを僕に言われても困る。
そもそも打ち込んだ神様が横着したり甘い設定で世界に適応させたのが悪い。
それを告げると分かってるから休ませてぇーっと嘆きの声が。
流石に可哀想になったのでじゃあ今日はデイリーミッションだけこなして寝るよ。と告げると泣いて喜んだ。
しばし神様も休息したいそうだ。
よろめきながら神様が僕から離れる。
「ようやく、ようやく寝れる。4徹はきつい……」
なぜ四日も寝てないのかは謎だけど、それだけ頑張ったって言いたいのか?
でも神様。多分四日も徹夜したからこんなバグだらけになったんじゃないかなって僕は思うよ。素直に一日ほど寝てリフレッシュした頭でプログラミングしてくれ。
神様が消えたので僕らは互いの顔を見合し苦笑いする。
んじゃ、皆で宿に戻ろっか。
告げた僕らの目の前を、地面に下半身埋まったおっさんが横切っていく。
神様ーっ!!
思わずGMコールした僕に、頭上から落雷が襲いかかった。
神様がブチ切れて落としたようで、天からうがぁ――――っ!! と謎の轟音が轟いた。
ごめん神様。今のは僕のせいじゃない。横切ったおっさんが悪いんだ。
これ以上バグ報告すると神様が暴走しかねないので素直に宿屋へ直帰する。
すると、ルーカが何やらメールを書いている所だった。
戻ってきた僕等に気付き、メールを送信する。
「誰に送ったの?」
「え? 神様に見つけたバグを報告したんだけど?」
うん、タイミングが最悪だったな。
突如、ルーカの姿が一瞬で消え去った。
うわーお。僕とイリスが同時に声を出す。
一先ず両手を合わせてナムーと告げておく。
どうなるかは知らないけどしばらくしたら戻ってくるだろ。
とりあえず送ったメールとやらを見てみよう。
なになに? ああ、室内の壁に向かって歩く人のバグと、階段滑空落下バグ? え? 何ソレ見たいっ。
アレだろ、おっさんが滑り台降りるみたいに頭から階段落ち決めるんだろ。すっげー気になる。
衝撃的事件を見忘れたことを悔しがり、送信済みメールを閉じる。
デイリーミッションを皆で適当に終わらせ、そのままベッドで就寝することにした。
今日は枕を高くして寝られそうだ。
シークレット一緒に寝る? え? あ、そう? じゃあ一人で寝ます。
うぅ、サクヤ達と寝ることに決まったんだとさ。一緒には寝れないんだと言われてしまった。
これも神の策略か?
いや、サクヤの策略だきっと。
隣のベッドで眠りに入るアニキを見ながら、静かに目を閉じ涙する僕だった。
「ふえぇぇぇんダイスケぇぇぇ――――っ」
不意に、誰かの鳴き声が聞こえてお腹に衝撃が走った。
「おっふ」
思わず叫んで飛び起きる。
お腹のあたりに突っ込んで来ていた生物を摘まみ上げる。
なきべそ掻いたルーカさんだった。
「暗いの。誰も居ないの。何で助けを呼んでも誰も来ないのっ。うえぇぇぇぇ」
あー、多分僕がメンテ中に味わった最初の暗闇に放り込まれたな。可哀想に。
あーよしよしっと頭を撫でてやる。
正直まだ寝ぼけてる気がするんだけど……グゥ。
ルーカの頭を撫でながら二度寝を開始。
すぐ隣で見ていたアニキが呆れた顔をしていた。
女性陣が起き出したのに気付き、僕の身体を揺すって無理矢理起こす。
「お、おお。アニキ?」
「ほれ、起きろ。女どもが待ってるぞ」
「あーい」
寝ぼけたままベッドから抜け出す。
お腹辺りに居たルーカが転げ落ちた。
「ぎゃぴっ」
後頭部打ったみたいでその場で悶絶していたので、忙しそうだなぁと思って放置する。
そのまま顔を洗ってさっぱりすると、後は皆の前にやって来てベッドに座り、神様が眠れたかどうかのメールをしておく。
問題無ければこのまま次の話に向かうし、まだ寝足りないならもう一日休暇だ。
―― ゆっくり眠れたかい。そりゃあ良かった。優秀なサポーター君の御蔭でこっちは5徹に入ったよ。うん、そろそろ幻覚が見えだしてるんだけどどうしたらいいかな ――
とりあえず寝ろよ。素直にメールしてやる僕だった。今日は休暇確定だな。




