見つけろ砂漠の村のバグ探し8
今、目の前で起こっていることをありのまま言うぜ?
壁に頭を押しつけ歩く無数の住民たち。
大通りに出ると、おっさんと同じように進行方向を邪魔され壁に向かって歩行する住民の群れがいた。
あまりに多く縦列を作っているので騒ぎを聞いてやってきた兵士達も困惑していた。
みんな一列になって壁に向かって歩いてるんだ。
一部壁に向かって歩いている人に向かって歩いている人もいる。
女の子の後ろを歩くおじさんとか普通に女の子に股間を押し当ててるように見えて通報案件だ。
兵士さんあいつです。
「な、何だ君たちは!? ま、待ってくれ? 幼女を襲う? 私は家に帰っていただけだ。無実だ。無実なんだ――――っ」
恰幅の良いおじさんは僕の通報により兵士さんたちに連れて行かれた。
ふぅ、無辜の民に犠牲が出ちまったぜ。
神様、これでバグ取ったとか、正気かね?
しっかりこれも報告させて貰う。
すると、次の瞬間壁の住民たちが一人、また一人とテレポーテーションし始めた。
目の前で無数の民が消えて行く姿はある意味恐怖だ。
砂漠の民がチート化し始めてるぞ。その内住民全員がテレポーテーション出来るようになるんじゃないか?
そんな事を思いながら大通りを越えて郊外へ。
おっと、ここには奴隷商の屋敷があるようだ。
せっかくだから店の中を見せて貰うことにしよう。
室内に入ると、さっき助けた揉み手のおっちゃんが居た。
「おお、貴方はあの時助けて下さった!」
「あ、うん。ここはあんたの店、でいいのか?」
「はい。こちらがウチの商品となります」
笑顔満面で、誰も居ない牢屋を紹介するおっちゃん。多分ここで助けた時に貰った奴隷以外の奴隷を買うイベントがあったんだろう。
残念ながら三人とも既に仲間に居るので牢屋には誰も居ない状態になっているのであった。
いや、もしかしたら彼には三人の奴隷が見えているのかもしれない。
金額を提示して来たおっちゃんに今は持ち合わせがないと断って店を出る。
空の牢屋を前に意気揚々またお越しくださいと言えるおっちゃんは精神がちょっと逝っちゃってる人なんだと理解して、僕はここには近づかないことを誓うのだった。
路地を歩いていると、また壁に向かうおじさんが居た。
なぜか物凄く顔が青い。
大丈夫だろうか? 心配になったので聞いてみると、トイレを我慢しているらしい。
家に帰り付きたいのだがなぜか前に進まないと嘆いていた。
壁、見えてないんですか?
下痢しちゃってるらしい彼を早めに家に返してあげよう。
僕はしっかりとバグ報告をしてやった。
彼は即座に下痢○テーションしていったのだった。
……ふと、思ったんだけどさ、これって多分室内でも起こってることだよな?
誰にも気付かれないまま壁に向かい続ける家屋内の人々。これ、ありえる気がするぞ。
当然のように思った事を神様に報告。これで可哀想な人々は救われるだろう。
しばし村を散策していると、突然目の前におっちゃんが出現した。
なんだ? と驚いていると、次々に出現する人々。
理由を聞いてみると、皆さん家の壁に阻まれ移動出来ていなかったそうだ。
なるほど、テレポーテーションしてここにでてきたのか。
ますます住民がチート化しちまったな。
「あは、お兄ちゃん、アレ見てー」
「あれ?」
サシャが何かを見付けて指差す。
なんだ? と視線を向けてみれば、出現位置が被ったおっさん二人が重なっていた。
気持ち悪っ!?
しかも普通に融合したみたいで別々の場所に行こうと足が左に向かいながら身体は右に向かおうという体勢という謎の姿で動き出す。
神様ー、新たなバグできたよー。
オワターと送っておく。速攻でおっさんたちは分離された。
そうか、これがいしのなかにいる。ではなくおっさんのなかにいる状態か。
恐ろしい現象だぜ。
えーっと次のバグは……って、あれ? 神様?
なんと目の前に神様が出現しました。
どうした神様。なんか目元にクマできてるよ?
軟体生物にはありえないことだからメイクか何かかな?
そんな神様は僕の前に触手を折ると、土下座体勢になった。
「え? 神様どうしたの!?」
「もう、堪忍してぇっ」
「はい?」
「もうバグは沢山なんだっ。バグ取りもう嫌だ、ゆるしてぇっ」
かみは なきごとを さけんだ。
しかし ダイスケには こうかがなかった!
「運営でしょ。バグ取りは責任だと思うんだけど」
「シークレット姫関連と砂漠で独りぼっちになったことを恨んでるんだろうっ。もう許してくれ。ここまで粗探ししなくてもいいじゃないかぁっ」
もはや外聞もなく神様が縋りついて来て泣きだした。
なんぞこれ?
そんなドラ○もーんみたいな感じに泣き付かれても困るんだけど。




