見つけろ砂漠の村のバグ探し3
……マジか?
砂漠の村のバグ報告したら一瞬にして緊急メンテがはじまったんだが、どうしたらいい?
だからメンテ入る前に連絡メール送れって告げたんだ。
そしたらどう返って来たと思う。前向きに善処します。だってよ。
それ絶対やらない政治家の常套句だろ。
清流な川からくみ上げた水がシシオドシをかっこんっと鳴らす。
風流な日本家屋に今、僕らは集まっていた。
メンテナンス状態ではここに転移させられるのはいつものことだ。だが、やっちまったな神様よ。
「お、御館様ぁ、助けてくださぁい……」
半泣きで告げているのは水巫女カルシェさん。なんとここに転移した瞬間、丁度しゃがもうと上半身を倒した状態だったらしい。
まさかの転移で壁を貫通してしまった。
まさに、壁の中に居る状態だ。いや、正確に言えば押入れの襖に突っ込んだ間抜けちゃんみたいな状況になっていた。
押し入れの中に上半身が、こちら側には可愛らしいお尻が見えている。
ふえぇぇんと泣きだすカルシェに、僕らは何も出来なかった。
だって、襖と同化しちゃってんだもん。これ下手に抜いたら襖の真ん中がカルシェのお腹の中に入ったまま状態になっちゃうよね。速攻GMメールしないと。
壁に嵌った女の子なんて普通に凌辱対象じゃないか。なんて、なんてメシウマ……じゃなかった。なんとか助けないと。
メールを送って数分。突如カルシェが消える。
そして次の瞬間僕らの後ろに出現した。
「あいたっ」
「おお、無事戻れたか」
「た。助かりました」
神様もメンテ時に移動させるのは良いけどこっちに来た時の体勢とか考えて送ってくれないとな。毎回こんなキャラ出されても困るぞ? 左半身壁に埋まってるとか、便器と同化してるとか笑えない状況になったらどうしてくれる。
抗議だ抗議。ねっちねちと抗議してくれるわ。
神様にクレーマーにしか見えないメールを送ってしばらく、今回は結構早くメンテナンス終わったな。
それでもまぁ1時間かかってはいるんだけど。
戻って来たのは宿屋の一室。前回砂漠の真ん中に落とされたからメールした御蔭だろう。
どうやら僕らが休むために取った宿屋ら……おいまて、なんでイケニエ国王がここに居る?
「なっ!? なぜシークレット王女様達がここに!?」
「旅立たれた筈では!?」
近衛の二人が驚いた顔をする。ごめん。僕らも驚いてるんだ。
「多分第三章に入ってないから向こうじゃなくこっちの国の宿屋に転移したのね」
え? 何その不親切機能。
「次は第三章一話をクリアしてから街に入りましょ」
「うぇーまたあそこまで歩くのかよめんどくさい」
僕らは不平不満を口にしながら再び王国から砂漠へと向かい、次の村へと向かうのだった。
行動力を温存するためにアニキのバギーに僕とシークレットとリーハ、そしてサクヤが乗り込む。
他のメンバーはストックに入って貰い、ルーカとイリスは場所を取らないのでサクヤの膝の上とリーハの膝の上に乗っている。
魔王様の膝に座るイリスって肝座り過ぎだろ。
砂漠の街には20分位でついた。流石バギー。素早い動きだ。
ついでにそのまま襲われているらしい馬車の元へと向かう。
お―、確かに襲われてるなぁ。
僕らが来るまでずっとあの状態だったの? なんかそれはそれで大変そうだな。
よし、んじゃさっそく、戦闘メンバーれっつごー。
リーハ達が嬉々として参戦する。
が、どっちが敵なんだ?
一台の馬車は逃げるように街に向かっている。
常道ならばこの馬車を逃すのが目的だろう。
馬車に居るキャラも女性割合が高いし。
でも、それを襲ってる馬車はなんか凄く豪奢で襲っているのもどっかの国の兵士さんにしか見えない。
こっちに味方するのもアリなんだろうか?
いや、でもやっぱり弱者の味方ってことで。
僕は追われてる方を助けるように指示を出す。
皆で襲っていた豪奢な馬車から現れた兵士達を駆逐していく。
どうせ倒してもリポップして去っていくんだろ。
まぁいい、さっさと倒して村に向かおう。
とりあえず倒すだけ倒したあとはお礼の話も聞くことなく村に戻る。
何か今日は疲れたし、さっさと寝よう。
結局昨日は砂漠で一夜過ごさせられたしな。
村に戻ってくる。その僕の頭上を、お兄さんが歩いて行った。
バグ……治って無くね?
村を思わず見回す。
「どうしたのダイスケ?」
「いや、まだバグが残ってる気がする。臭う、臭うぞバグの臭いだ」
「いや、分かる訳ねぇだろ」
呆れたアニキを無視して壁に向かう。
僕の手が壁の中に入り込んだ。
「ええ!?」
「やっぱりあったか。何となくそうだと思ったんだ」
人同士はぶつかっても壁は素通り。もしかしたら全員にそういう設定してるんじゃなくて、壁自体を透過するように設定してたんだ。それが治っていないってことはバグの殆どが治っていないと見ていいだろう。
さっきのメンテナンス。神様一体何をやってたの?




