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彼はやり過ぎたんだ

「うぅ、もうやだガチャ引かない……」


 あまりに出現率が低すぎる。

 こんだけガチャ回して出て来ないってなんだ? 詐欺か? 確率操作してんのか?

 体育座りで砂漠の隅に一人ずもーんと引き籠る僕。そっとしておいてください。


 でも砂漠なので熱い。

 一分と立たずに皆の元へ戻ることになった。

 お尻焼けちゃう。真っ赤なお尻になってしまうよ。


「ほら戻ってきた。言ったでしょ心配するだけ無駄だって」


「でも、流石に可哀想かなって」


「いいのよダイスケなんてアレ位が丁度いいんだから」


 張っ倒すぞルーカ。

 えーっとさっきのガチャで現れた新人さんは☆3が二人と☆4が一人か。

 ☆3が哀愁漂う貴族のおじ様。哀愁侯爵カイエンさんと、あー、なんだ。外人が想像する日本人像昭和版っていうのかな? ほら、あの七三カットに黒ブチ眼鏡、細い糸目と口から出ている出っ歯。ピンクの服に首に掛けたカメラが一つ。昭和世代ハッサンというちびっちゃいおっさんがいた。


「これが、運命か……」


「もうかりまっかー」


 うん、まぁ、両方ストック行きで。

 さてさて気を取り直して☆4のキャラは……

 優しき殺し屋ギドゥ。優しいのに殺し屋なの?


 腕組んで佇む背中はなんか凄い恰好良さそうなんだけどさ、ほら、寡黙な頼れる男みたいで恰好は良いんだよ?

 でも砂漠でそんな恰好付けられても……暑くね? 汗だらだらじゃん。

 熱中症で倒れんじゃないかってくらいに汗だくです。

 しかも寡黙だから大丈夫なのかどうか判断付かない。気付いたら倒れてる可能性大だ。

 心配だからストックに入れておこう。


「はぁ、これ以上ガチャ引けそうにないか……」


「まだ引く気かよクソガキ」


「アニキ……でも、限定ガチャなんだよ。限定コラボで……」


「だからどうした。そんなもんの為に金も石も全て注ぎ込んで女に心配させてまでやることか?」


 ぐさり、僕の心にクリティカルヒットの言葉が刺さる。

 近づいて来たブラッディレイブンは僕の首元を掴み引き寄せる。


「異世界がどうだか知らねぇが、ンな訳わかんねェ奴いなくたってなぁ、テメェの傍にゃ俺らがいるだろうがッ、少しは今の仲間を見やがれッ」


 でも、コラボガチャが……そう思いながらも、口からそんな言葉が出ることは無かった。

 分かってるんだ。コラボだからって無理に引く必要は無いってでも、でもやっぱり限定キャラって聞いたらつい、欲しくなるじゃんか。限定品に弱いんだよ僕はっ。


「別にガチャ引くなっつーわけじゃぁねぇ。限定品って響きは俺も嫌いじゃねぇからな。でも仲間に無理しいてまで手に入るかどうかわからねぇガチャ引く必要があんのかよ。仲間虐げてまで手に入れる価値があるのかよッ!」


「アニキ……ごめん。僕、暴走してた……」


 アニキの胸に飛び込み僕は涙する。

 そんな僕にアニキは軽く頭を撫でしばし無言で……って、あぶなっ!? 思わずアニキ空間に嵌りそうになってた。危うくルーカみたいにアニキ最高とか洗脳される所だった。

 慌ててアニキから距離を取り、涙を拭く。


「あー、その、なんだ。次の話に進もう、第3章が待ってるだろうし」


「はっ、その意気だ。限定キャラが手に入らねェ分俺らが頑張るからよ、ちゃんと俺らのこともみとけやクソガキ」


 そう言ってニカッと微笑むアニキ。

 ルーカが感動したらしくアニキカッケェと感涙咽び泣いていた。


「んじゃー、行こうか」


 気を取り直し、第三章第一話をタップ。

 皆が話し合いしながら歩きだす。

 僕も歩きだそうとして、そして……その場から動かなくなった。


 ……ん?

 足は動く、でもどれだけ踏み出してもその場から進まない。

 んん?

 皆は気付かず次のイベント向けて歩いて行くのでどんどん引き離されて行く。


 あ。あれ? おかしいな。

 どれだけ踏み出しても動かないぞ?

 これ、もしかしてバグか?


 その場でメニューを呼び出しGMコール。

 ちょっと神様、動かないんだけどー!?


 ―― いや君、体力見てみなよ ――


 体力? ああ、左斜め上の奴か、確か少し前は1038/106とかだったっけ?

 と、見てみれば……0/106になっていた。

 体力、というか行動力が……0?


 ―― あれ? 説明してなかったっけ? 一定数歩くだけでも行動力減るよ? 0になるとその場から動けなくなるから。あ、回復は日を跨がないと回復しない仕組みにしてあるよ? ――


 え? ちょっと待って。じゃあ、じゃあ僕は今日一日、この場から動けない?

 慌てて周囲を見る。

 見渡す限り砂の山。

 太陽はぎらぎらと周囲を照らし、僕は砂漠に一人きり。

 全身からいろんな汗が噴き出す。

 熱い、恐い、不安だ、これ、死ぬんじゃね?


 ガチャ石を手に入れるためにハードモードの話数走破、そしてデイリーミッション周回、これによる体力枯渇で、僕はその日、灼熱の太陽に炙られながらただひたすらにその場に佇むのだった。

 皆、全く気付かないでやんの。何が俺達がいるだろ、だよっ、アニキのバカヤローッ!!

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