ミスに気付いたけど後の祭りだった神様
ふぅ……二章がどうやら無事エンディングまで辿り付けそうで安心した。
軟体系の神は安堵の息を吐く。
正直今回は感動の城崩壊を描こうとして失策した。
シークレット王女はかなり地味にして死んでも問題無いようなモブ扱いのつもりだったのだ。
まさかダイスケの好みにドンピシャだったとは思わなかった。
見惚れてしまったシークレット王女を生かすか、それとも予定通りに最後に死亡するようにするか迷ったが、話に手を加えるのが面倒だったのでそのまま死に別れエンドに向かって貰うことにした。
シークレットのコピーを後で送ってやればダイスケの心のケアもできるだろう。
そう簡単に考えていたのだ。
世界の状況を見るために目の前にある画面を見る。
最近神々の世界で主流のパソコン型画面というものだ。
キーボードを使って設定変更などを打ち込むタイプなのだが、画面とキーボードは別々になっている。
そのキーボードに触手を這わせ、次のイベントを打ち込みながら、画面に映る崩れ始めた城を見る。
ダイスケがシークレットの亡骸を抱き上げ、呆然としているのがちょっとやり過ぎたかなと思わなくない。
ルーカがイリスに言われて慌てたようにエンディングのボタンを押しに向かう。
これで崩落に巻き込まれることなく丘の上で崩れる城を見つめる彼らが次の冒険に向かうことになるだろう。
「あー、いたいた、ハロー」
「ん? ああ、マロン神か」
突然背後から声が聞こえた。
全てが暗闇の為相手の姿も見えないが、気配が二つ生まれる。
「やぁ、今回はコラボイベントにキャラを提案してくれてありがとうマロン神」
「はっは。あちしの知り合いだけどそれなりに凄い奴らだからそのコピーでいいなら好きに使っちゃって」
彼女には感謝の念が耐えない。
まさか初の異世界とのコラボが可能となるとは思わなかった。
きっとダイスケも喜ぶだろう。何しろ最強クラスの☆5キャラ出現である。
「それと、第二弾のコラボはこの子の世界住人でいいかな?」
「おお、次のコラボもいいんですか!?」
「いいでしょ? ねぇアルセ」
こくり、頷く気配がした。
どうやら更なる異世界とのコラボが実現するらしい。
「いやー、大した世界じゃないですけど、とりあえずこのベータテストが終われば皆さんにも解放しようって思ってるんですよ」
「初のソシャゲ世界作成だもんね。楽しみにしてます。あ、ちなみに、コラボのキャラなんだけど……別の奴が管理してる世界に行ってるのよね、何かややこしいから事後報告しとくわ」
「え? それ、大丈夫……?」
なんか不安な言葉が聞こえた気がするんだけど?
そのキャラ出して本当に大丈夫? 訴えられない?
「まぁ、管理者自体は酒でも持ってきゃ問題無いからいいとして本人知ったらあちしがヤバいかにゃー。毒液ぶっしゃーされそうだし」
「まぁ、よくわかんないけど、私に危険がないなら遠慮なく使わせて貰うよ」
「おっけー。んじゃまた。アルセの方のコラボキャラが決まったらまた来るわ」
そう告げて、二人の気配が消える。
これはまた楽しくなりそうな予感がするぞ。
ワクワク感に期待を膨らませ、神様は画面に向き直る。
そこは丁度王国の崩壊を丘の上で見つめるダイスケが居た。
ダイスケの背後には彼が手に入れたコピーキャラたち。そしてリーハの上にイリス、サクヤの上にルーカが寝そべっている。
ダイスケはシークレットを抱き抱えており、その傍らには護衛兵のA子とB奈。そしてメイドさん。さらにはイケニエ国王陛下が立っていた。
『すまないシークレット……』
ダイスケが告げる。画面越しなので音声がスピーカーから聞こえてくる。
神は画面をしばし眺め、はて? と違和感を覚える。
そう、本来ここに存在する筈の無い人物が数人見える気がする。
例えばゾンビになる側近二人とメイドさん。
生贄になってローパー化した筈のイケニエ国王。
それに……
『流石に城を救うことはできなかったよシークレット』
『それは仕方無いです。私達が生きてるだけでも奇跡ですよダイスケ君』
「あ、あっれー、おかしいな。なんでシークレット生きてるの? ねぇ、さっき死んでたよね? よね?」
思わず画面を触手で掴んで顔を近づける。
どう見てもシークレットさん生きてます。
『シークレット、結婚してくれ』
『だ、ダイスケ君、も、もぅ、仕方ないなぁ、私でよければ、よろこんで。いいかな、お父様?』
『よくぞ来たダイスケよ。国王として異世界からの賓客を持て成そう。ゆるり、楽しむといい』
『『ぶふっ!?』』
『国王、そういえば台詞一つだけだっけ』
そうダイスケが告げて、皆が笑っている。
どう見ても大団円だ。
死んだ存在が敵とモブ以外誰も居ない。
「どうなってんだーっ!?」
決定的シーンを見逃した神様だった。




