表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/248

強制バッドエンドとルーカの奇跡

 ハンニンバルが倒れる。

 入れ替わるようにして現れたローパーに皆が戦闘態勢を取った。

 でも既に10話は終わってるはずだ。戦闘は無い筈だけど……


「っ!? ダイスケ!!」


 鋭い声は誰の声だっただろう?

 ぼぉっとしていた僕に向け、ローパーが触手を伸ばす。

 え? とそちらを見た僕の腹をやすやすと……


 触手が貫く瞬間だった。

 どんっと真横から身体を押される。

 驚く僕が目にしたのは……僕の代わりに貫かれるシークレットの姿だった……


 まるでスローモーションでも掛かってるみたいだ。

 ゆっくりと崩れ落ちるシークレットの姿を、倒れた僕は何も出来ずに見つめていた。

 皆の動きが引き延ばされたようにゆっくりしている。


「シーク……レット?」


 倒れたシークレットに這いずるように近づく。

 オデーブが遅れて僕らの防衛に回る。

 でも、既に遅すぎた。


 きっとこれもイベントだ。

 僕が襲われ、それを助けるためにシークレットがその身を犠牲にする。そういうイベントなんだ。

 だから、シークレットはここで死ぬ。どんなに助けても、このシーンが来れば勝手に腹に穴開けてシークレットは死んでしまう。


 ふざ……けんな。

 シークレットの抱き起こし、泣きそうな顔を必死に隠し、血反吐を吐き散らした愛しき女性の最後を見取る。

 なん……だ。これ?


「そんな顔、しないで……」


「なんで、僕が死んだって、何度だって生き返るんだ。君が死んだら、もぅ……」


「それでも、貴方が死ぬのは見たくないから……あーぁ。こんなことなら、告白OKしちゃえばよかったなぁ……」


 ごめんね? そう告げて、彼女は意識を失った。

 力の抜けて行く彼女の体を、ただただ抱きしめる。

 なんだよ、これ?


「魔王、やれるか?」


「当然だ阿呆ッ。ダイスケの指示がなくとも我が必殺を持って奴を叩く! 星屑達乃虐殺スターダストディザスター!!」


 ちくしょう……恨むぞ神。

 シークレットをよくも殺してくれたな……


「っし、撃破だ! クソッタレめ……」


「また生き返って来ないだろうな、全員警戒を怠るなよ?」


「アナタ程ウツケではありません魔王。……よし、敵影な……なに!?」


 地鳴りが響く。

 天井がひび割れ、落下が始まる。


「これ、城が崩れる!?」


「イリスどうするの!?」


「もうこの話は終わってるわ! 次の話はっ」


「あ、出てる! 第二章エピローグがあるわ」


「ダイスケは動かないからあなたが押して!」


「わ、わかったっ」


 うなだれた僕に変わり、ルーカが慌てて次の話を選択しに向かう。

 しかし崩れ始めた天井が落ちて来たりで邪魔され、視界を塞がれ、選択肢へと辿り付けない。


「だぁ、らっしゃぁ!!」


 気合い一撃。

 落下する天井を潜り抜けたルーカが選択肢を押し込んだ。

 視界が変化する。

 二章エンディングは、きっと脱出した僕らと滅びゆく王国……


「な、何奴!? ここはシークレット王女の部屋よ!」


 ……は?

 この非常時にルーカがやりやがった。

 必死に押しこんだ選択肢は、丁度シークレット王女と会見するために王城に訪れたところ。そう、近衛兵二人との強制戦闘である。[

 僕が抱き上げた筈のシークレットも突然跡形も無く消え去ってしまっている。


「ちょ、ルーカぁ!?」


 イリスが珍しく慌てた声を出す。


「ひーんっ。ごめんイリス、別の選択肢押しちゃったぁっ」


 アホか!?


「クソッ、戦闘キャラをデフォルト、リーハ、お願い」


「心得た主様よ!」


 そして再びアニキのバギーがシークレットの部屋に突っ込む。

 戦闘はいつか見た時のように強制中断され、中に居たオリジナルのシークレットが驚いた顔をしていた。


「シーク……レット?」


「え? あ、はい。そうですよダイスケ君。でも私、邪神にやられたはずでは……?」


「シークレットッ!!」


 無事なシークレットの姿を見た瞬間、僕は駆けだしていた。

 驚くシークレットにダイビングアタック。


「ひゃぁぁ!? ちょ、ダイスケ君!?」


「「貴様ッ、姫に何をするッ」」


「ええい、今は邪魔をするなしっ。リーハ、サクヤ、やっておしまいなさい」


「黙れ羽虫。貴様の指図は受けん」


「ですが、御屋形様の為に、無力化します!」


 泣きつく僕に最初は驚いたシークレットだったが、困った顔で頭を撫でる。


「どうしたんですか、酷い顔になってますよ?」


「うん。わがっでる。でももうちょっとだけ……」


「仕方ないですねダイスケ君は。ふふ、本当に、仕方無い人ですねあなたは」


 しばし、バブみ要素豊富なシークレットに溺れるように抱きつく僕だった。

 だけど、少し落ち着いた。

 御蔭でなんとなくだけど、反撃の糸口を見つけた気がする。

 シークレットの記憶も存在したままで彼女の身体に傷は無い。まさに奇跡的生還だ。

 ありがとうルーカ。今回ばかりはお前のポカミスに感謝だ。


 もう、シークレットは殺させない。

 神よ、ここから先は反逆だ。

 シークレットのためならば、僕は神殺しすらできるかもしれないっ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ