プレイヤーのストレスを溜めるのは仕様らしい
「っし、なんとか他のメンバー生き残って戦闘終了」
「酷い勝利だねーイリス」
「結果が全てよ。それでいいんじゃない?」
「え、えーと、ダイスケ君はいい指示、だったんじゃないかな?」
「欲望に塗れた酷い指示だったぞ?」
「魔王に言われたくないと思いますよ御屋形様も」
「下衆の極みが起こした悲劇ね」
見学組の会話が酷い。
なんか僕をディスってませんか?
戦闘が終了したので戻ってきた戦闘班。ナルタさんも普通に復活している。
「さて、結局、あの三人助けられなかったな……」
「今回は諦めるしかないと思うわよダイスケ」
ルーカの言葉に気落ちする僕だったが、視界に映ったシークレットを見て頬を張る。
諦めるな。イリスも言ってたじゃないか。何か方法がないか考えよう。
「それで、次の話はどうなってるの?」
「とりあえず廊下に出てみましょう。次の話になる戦闘場所にゾンビが待ってる筈よ」
「ゾンビ、待ってるんだ……」
結果を言えば、本当に待っていた。
しかも連続戦闘だ。
メンバーそのままにお爺ちゃんきゅぴんが大活躍。
汚物が消毒されて行き、天に召される兵士やメイド、大臣の群れ。
二階から一階に降りると、すでに第八話になっており、一階での戦闘が終わると、都合よく見付かる地下通路。
階段を降りると第九話がはじまり、なんかボス部屋みたいな場所に辿りつく。
このボス部屋で九話の戦闘が開始されるようだ。
そろそろ首謀者が……お、お前は!!
「おや、皆さんお揃いで。あのゾンビの群れを抜けてくるとは驚いた」
「あ、貴方は、宰相ハンニンバルッ!!」
ですよねー。知ってた。
驚くシークレットとなんとなく犯人分かってた僕の温度差が酷い。
「やっぱりアイツ犯人だったわね」
「名前でバレバレでしょう。神様この辺り適当過ぎると思うのよ」
ルーカとイリスは昼ドラ見る主婦みたいにどうでもいい会話を始めている。
「貴方が犯人だったのですね。皆を元に戻しなさいっ」
「ふん、お飾りの王女が凄んだところで意味は無い。この国が滅ぶ様を見ておくがいいわっ」
「ハンニンバルッ!!」
怒れるシークレット王女。でもちょっと待って。
「あー、そのハンニンバル。あんた何でこんなことしたんだ?」
一応理由は聞いておくか。
「理由? 理由は……えー……」
あ、察しちゃった。
これ神様がイベント用に配置した宰相さんだから理由がないんだ。
理由なく皆をゾンビ化させて僕らの邪魔したかっただけだ。
なんか、そんな理由を聞かされると犠牲になった三人が哀れだよね。神、なんかこう、すっごい後悔させたくなってきたよ。
というかこんなイベント作ってる時点で闇が深いぞ神様よ。
「と、とにかくこの国は死人の国となるのだ」
「そんなことさせませんっ」
「ふん、ただの非力な王女に何が出来るっ。見ろ!」
と、祭壇のような場所にスポットライトが当たる。
祭壇上に横たわるのは国王陛下。
あ、これ、ヤバい奴や。
「お父様っ!」
「貴様の父は生贄だ。さぁ現れよ、古に封印されし邪神よ!!」
「い、いやぁお父様ァ――――ッ!!」
どくん、脈打つイケニエ国王の身体が膨れ上がる。
あー、これボス戦じゃね?
「そら、ゾンビ共、奴らを仲間にしてしまえ。貴様等は大人しく邪神の出現を見ておくがいいわ!」
成る程、ここで足止めされて10話で邪神戦ってことか。
おっけー。僕もいい加減頭来た。こういうストレス溜まる展開作った神に物申す。
テメーの手塩に掛けたボスなんざ秒殺してやんよ!
「ナイチンゲルダ、ナルタ、ケンウッド、レスティス。やっておしまいなさい!」
なんでそんなノリなのよ。とルーカが呆れているが無視の方向で。
もはやゾンビ退治も手慣れたもので、ナルタとケンウッドが全ての攻撃を引き受け腰が痛くなり、ロケットパンチが飛び交い、レスティスによりゾンビ達が昇天していく。
ナイチンゲルダたちはもはや汚物消毒部隊として物凄い活躍だ。
「馬鹿な……馬鹿なぁ!?」
「ハンニンバル、思い通りにならなかったようで残念だったな」
「ふ、ふふふ、ははははははっ!! だが一足遅かったな!」
ゾンビ部隊が早々撃破されたので驚いたハンニンバル。しかし、確かに一足遅かった。
こういう闘いのお約束、奮闘空しく敵が邪神の封印を解いてしまうって奴だね。知ってます。
シークレットの悲鳴と共に出現したのはイケニエ国王を生贄にして生まれし邪神。その姿は……
「あ、これ、僕知ってる。ローパーっていう生物だ」
「これはまたうねる触手が気持ち悪いわね」
「触手、魔法処女、あ、察し」
ルーカが何かを察した。というか察すな。その展開には絶対にさせん。
「ふははははは、どうだ。邪神様の復活だっ」
「……許しません。貴方だけは……」
「シークレット王女? ククク、許せなければどうします? 非力な王女様ァ?」
下卑た笑いを浮かべるハンニンバルに、少女は怒りに満ちた瞳と共に魔法のステッ……鞭を取り出した。
「貴方を断罪します。ハンニンバル!!」
そして王女は、力を解放した。




