秘密の魔法少女……え? 魔法処女!?
露店をゆっくりと歩く。
今、僕は幸せの絶頂にいるのかもしれない。
何せ隣を見れば、物凄い凶器がばるんばるんと歩くたびに揺れている。
ブラジャー、してないのか? そもそもこの世界にそれが無い?
くぅ、すっげぇよ、なんかすっげぇ感動してるよ僕はっ。
「あ、アレはなんでしょうか?」
シークレットが指差したのは……なんだこれ?
「おぅ、お嬢さんお目が高けぇな。そいつはな、胴体の長さを計れるものさ。嬢ちゃんの細い身体を維持するのに使えるぜ」
メジャーじゃねーか。
「良く分かりませんけど、面白そうですね」
「金貨5000だ」
微妙に高い。
へたすりゃ100円ショップに売ってそうなモノなんだけどな。
作りも簡単だし、つーかおい、何だこの適当は、50cmと100cmの幅が開き過ぎだろ。
これはメジャーですらない。適当に数字刻んだだけの手作り失敗作だ。
でも、お姉さんが喜ぶのなら。
折角だし買ってみるか。
「まーちょっと手作り感が否めないけど、折角だし買うよ」
「お、マジかい」
「おっちゃん、せめてもーちょっとマシに作ってくれよな」
そういいながら買ってやると、おじさんははちゃーっと額に掌を当てる。
「あんたいい人だなー。それ俺が作ったの分かって買ったのかい」
「まぁー彼女が気に入ってるみたいだしね」
「あんま高いモン貢がねーようにな」
なんか凄く心配されてしまった。しかもフレンド登録飛ばして来たし。
まぁ、登録するくらいは問題ないから喜んで。
☆1キャラだ。名前は露天商メメントス。スキル構成見てみたけど、なんていうか、詐欺師っぽい。
じゃーなーと手を振るメメントスに別れを告げて、デートを再開する。
はいよっとメジャーを渡してみると、すいません。とふかぶかお礼され、手にしたメジャーをしゃこっ、しゃこっと伸ばしては戻してを繰り返し始めた。
多分数値を計るモノとしてではなく、この伸ばして戻してを繰り返すのがやってみたかったようだ。
「面白いですね、これ」
「そうだねー」
本来の使い方ではないけどね。
「ふざっけんなテメェッ!」
「……なんだ?」
ドガシャッと重量物が落下する。
人波があったのでその背後から覗き見る。
って、あれは……おじいちゃん!?
ケンウッドがなんか筋肉質のスキンヘッド男に胸倉掴まれ浮きあがっていた。
あれでは自慢の明鏡止水が使えない。
レスティスは? 近くの露天に投げ飛ばされたようで商品の上に尻もち付いていた。
うん、アレはどう見ても僕のお仲間だね。
「ごめんシークレットさん、どうやらアレは僕の知り合いみたいで……って、シークレット?」
いつの間にか隣に居たシークレットが居なくなっていた。
代わりに空から男の頭蓋向けて振り降りてくる一人の女性。
ポニーテールにまとめた髪をなびかせながらひらひらとした魔法少女衣装を着込んだ彼女は男に蹴りを喰らわせる。
「ごあっ!?」
後頭部に受けた蹴りで男が前のめりに倒れ、ケンウッドじいちゃんを押し倒す。
なんだこれ? 乙女系マンガで男が女を押し倒した時の状況になってるぞオイ。
「クソッ、誰だゴルァ!?」
「この国の法を犯す愚か者よ、貴方に名乗る名などありません。貴方のような悪人は、この魔法処女シークレット・メイデンが……法に代わってオシオキですっ」
なんっじゃありゃ―――――ッ!?
なんかすっげー胸のデカい魔法少女……じゃない魔法処女? あ、もしかして!?
僕は人物図鑑を起動して調べる。
シークレットの欄に追記が現れていた。
これによると魔法処女とは律法を順守しないモノに悪魔のような罪罰を与える処女のことらしい。魔法少女とどう違うの?
処女性を失うと力を失うんだとさ。
魔法処女シークレット・メイデン Lv50
必殺:
貴方の罪を数えましょ
敵全体に罪科に応じて処刑具による防御無視の超絶ダメージ。
スキル:
バインドウィップ
敵一体を鞭で捕縛。捕縛付加。
首狩り鎌
即死付きの範囲攻撃。扇状の敵を一撃粉砕。
硫酸投擲
敵範囲に溶解属性の攻撃。溶解付与。
パッシブ:
光属性
闇属性に強く光属性に弱い。
断罪者
敵に罪人が多いほど必殺ゲージの溜まりが速くなる。
……
し、シークレットしゃん?
え? 何このステータス。この人も地雷キャラですか……?
「あ、こんな所に居た!」
「マスター、戦闘が始まります。戦闘キャラを選んでください」
「あ、ああ。そうか、そうだよな」
僕は知らない。シークレットの秘密は知らない。シークレット・メイデンとシークレットはきっと何の関係もないんだ。ほら、目隠れ系美少女がシークレット、ポニーテールの綺麗なお姉さんがシークレット・メイデンさんだよ、なぁ。そうだろ? 誰か、誰かそうだって言ってくれぇっ!




