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皆のアニキ

 残り5ターン。頼むぞ爺ちゃん! そう思っていた。


「節々が痛いんじゃぁ」


 まさかの宣言。ケンウッドのHPは既にレッドバー状態。後一回節々が痛んだら死ねる状況だ。

 レスティスが頑張って攻撃しているが、レゴウを倒すことは不可能。

 レゴウの攻撃がお爺ちゃんに迫る。

 プルプル震えるお爺ちゃんに逃げ場はない。

 ひゃはっと狂気の笑みを浮かべ、レゴウが老人を切り裂く。


 きゅぴーん。

 刹那、お爺ちゃんの目がきらりと光った。

 ぶれるお爺ちゃん。レゴウの一撃がスカっと空ぶる。

 残り4ターン。


「御使い様、必殺の準備が整いました。神の御加護を」


 レスティス!? そうか、レスティスの魔法は確か無敵が確率で付く筈。

 レスティスにはお爺ちゃんの回復を頼みたかったけど、これならっ。


「頼むレスティス!」


「はい、神の御加護をここに。神よ、奇跡をアルマ・エ・リタナ


 真上からぺっかーと光が降り注ぐ。ついでに天使の羽だろうか? 羽根がひらひらと数枚舞い降りて来た。

 そして仲間たちに無敵が付与される。


「節々が、痛いんじゃぁ」


 お爺ちゃぁん!? 折角少量HP回復したのにソレ全部減らしやがった!?


「よし、まぁいい。これで1ターン浮いた!」


「ざぁーんねーんっ」


 レゴウの一撃がレスティスを切り裂く。ダメージは無効。しかし、即死の文字が躍る。


「ああ、神よ、身元に参ります……」


 いやあああああああああああああああ!?

 レスティスさん、無敵なのは良いけど即死の状態異常防御覚えといてぇぇぇ!?

 レスティスが死亡する。

 残り3ターン。


「ほぃ」


 お爺ちゃんついに動く。相手が無効だから効かないが、おそらく効いたとしても1ダメージの一撃。

 レゴウの反撃。

 お爺ちゃんきゅぴーん。


 残り2ターン。

 まだ行ける。お爺ちゃんがんばって、ここから怒涛の回避を見せてくれっ。

 このままなら、行け……


「節々が、痛いんじゃぁ」


 お爺ちゃんがダメージ有りのスタン発動。HPが0になる。


「どうやら、お迎えがきたようじゃ……」


 ぎゃぁぁぁぁぁすっ!?

 まさかの自滅で僕のメインメンバーが死んだぁ!?


 逃げだしているリーシュたちはまだ走れば追い付けてしまう距離だ。

 とはいえレゴウから守る壁は既にたった一人だけ。

 新規加入の盗賊頭ブラッディレイブンだけである。


「チッ。即死ってなぁ厄介だなァオイ。背負った荷物が重くていけねぇや」


 一度ちらりと背後を見る。

 逃げる少女と少年の背中があった。


「チッ、損な役回りだ」


 その容姿は完全に悪役で、やられるために生きているような姿。でも彼だって己の矜持の為に生きている。


「来やがれ殺人クソ野郎! ここから先は一歩も進ませねぇぞゴルァッ!!」


 レゴウ向い走りだすブラッディレイブン。

 渾身の力を込めて拳を振りぬく。


「秘奥・白蓮爆砕撃! オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」


 無数の連撃を叩き込む。

 レベルさえ高ければ結構な高威力ダメージになるな。流石盗賊頭だけあって結構強そうだ。

 だが、レゴウは今回無敵状態。全く意に介していない。付加スキルもレゴウ程の付加率が無くて不発に終わった。


「そーら、終わりだ馬鹿が」


 反撃の一撃がブラッディレイブンに襲いかかる。即死の文字。

 ああ、終わった。

 ブシャァと血飛沫が袈裟掛けに噴き出す。


「クソ……ハードラックとダンスっちまったか……」


 そして戦場から、最後の仲間が消えて行く。完全な敗北だ。

 僕らの負け……

 次は絶対に殺す。そう誓った瞬間だった。

 レゴウの前にそいつは姿を露わした。


「ふざっけんなっ。背後に守るもんが居るだろうがァッ!!」


 ブラッディレイブンのパッシブスキル、背に背負うモノが発動。くいしばりは一度死んでから舞い戻るエフェクトらしい。

 これは心臓に悪いと思う。

 でも、繋がった。レゴウの前に壁は未だ存在している。

 残り1ターン。


 けど、 依然綱渡りなのは違いない。

 何しろこちらの攻撃は効かないのだ。

 ただ、あと1ターン耐えきるしかない。


「クソがッ」


 拳の一撃がレゴウを穿つ。

 レゴウは心底楽しげに反撃を行う。


「ガアァッ!?」


 逆袈裟掛けで切り裂かれたブラッディレイブン。


「クソ……ハードラックとダンスっちまったか……」


 即死が発動し、再び戦場から消え去った。

 ダメだ、頼む。あと1ターン、この攻撃をしのぎ切るだけじゃないか。

 頼む、戻ってくれ、あんただけが頼りなんだ。


「負けるな、負けるなアニキぃぃぃ――――ッ」


 僕の思いを言葉にしたように、ルーカが泣き叫ぶ。

 少女の勝利を願う嘆きの声に、男は……答えた。


「男にゃなぁ、死んでも守るべき時があンだ。今が、その時だろうがッ」


 二度目のくいしばりが発動。

 戦場に舞い戻ったブラッディレイブンが僕らに漢の背中を見せつける。

 この先は絶対に行かさない。俺がここで止めてやる。そう、背中で語っていた。


「アニキだ……」


 思わず、僕の口からそんな言葉が零れた……

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