無敵イベントとか聞いてない
「ちょぉ!? リーハ死んだんだけど!?」
「あ、もしかたら……」
はっと気付いたイリスが神妙な顔をする。
こういう時は一度は言ってみたい名ゼリフ集から抜粋するべきだろう。
「知っているのかイリス?」
「おそらくですが、今のレゴウは無敵状態になっている気がします」
「無敵!?」
「あー、多分変な横槍でレゴウが倒されないように神様が設定したんじゃない? 今回のバトルはリーシャたちを救うのが目的だからレゴウは倒せないんじゃない」
つまり、耐えきるのが正解だと?
いやいやいや、アイツ即死使いだぞ。下手したら5ターンしか持たないぞ。
「クソッ、聞いたな皆。今回はリーシャ達を救うのが目的だ、彼女達が逃げ切るまで耐えてくれ!」
「チッ、初っ端の戦闘に見せ場無しかよ。そら、クソガキ共、ぼさっとしてんじゃねぇッ!」
「な、何よ、恐い顔の癖に」
「顔は関係ねぇ、さっさと逃げな」
舌打ちしながらブラッディレイブンが背中を見せる。
レゴウを向いて、ここから先は一歩も行かせねェと告げるように睨みつけた。
「いいねぇ、その目、最高だァ」
ナイフを舐めて笑うレゴウ。絶対に潰す。
でも、こいつを倒す術も攻撃を避ける術も無い。僕が出来るのはオートで皆頑張れ、というくらいだ。
今のうちにブラッディレイブンのスキル確認しとこう。何か有効な手段ないだろうか?
盗賊頭兄貴ブラッディレイブン Lv10
必殺:
略奪暴走撃
敵全体に土属性の超ダメージ。アイテム窃盗あり。
スキル:
爆走
敵直線状にバギー特攻。
略奪
攻撃と同時に相手のアイテムを略奪。
秘奥・白蓮爆砕撃
敵単体に超速連打。稀に即死爆散。
パッシブ:
漢の背中
フィールド上の部下の数により全能力が増加。
土属性
水属性に強く風属性に弱い。
背に背負うモノ
背後に守るべき存在がある時10%の確率でくいしばり発動。
……と、とりあえずリーシャ達の護衛を任せよう。
「ブラッディレイブンはリーシャ達の護衛を頼む。他のメンバーでレゴウの足止めだ!」
「チッ。了解だ」
「節々が、痛いんじゃぁ……」
「神の導きのままに」
「御屋形様、役立たず魔王など居なくともパーティーは回るということを証明してみせますとも」
ブラッディレイブンが舌打ちしてリーシャ達の守りに入る、リーシャ達も発破を掛けられたことで動き出し、後ろに逃げだした。
サクヤが水流演舞で味方の攻撃と防御を底上げ。即死相手には無謀だが、ただの攻撃相手なら十分耐えきれるだろう。
主は来ませりでレスティスが攻撃。
やっぱりダメージ喰らってる気配が無い。
お爺ちゃんは安定のスタンである。しかもダメージ入ってるし。
あの節々が痛いってのなんとかならないかな?
「ひゃはぁっ!」
レゴウの攻撃、おじいちゃんきゅぴーん。
ふっ、ウチのケンウッドは最速なんだよっ。
「残りターン8です」
「8?」
「リーシャ達が逃げ切る時間よ」
おいおい、残り四人しかいないんだぞ、8ターンとか無理じゃね?
「水弾三連」
サクヤの攻撃が全て当るものの、やっぱりダメージが入って無い。
クソ、アイツを殺す術は無いのか。アイツを……殺す? あ。ああ。そうか。そういうことか。
神ェ、テメーにこの怒りをぶつけてやる、どうせ次はレゴウ自身との闘いなんだろ。ガチ対決で倒せってだろ。
やってやるぜ、潰してやる。
ああ、でもまたガチャらないと。
出てくるかな? 出て来てほしいな。ふく、ふくくくく。
「うっわ、ダイスケがなんかヤバい笑み漏らしてる」
「いつものことでしょ」
ルーカが汚物を見るような目で僕を見る。イリスは関心の無い目で本を見る。
素敵なサポーターたちだ。もっとマシなの居なかったんですか神様よぉ。
「ひゃはっ」
「そんなっ、私が……御屋形様、申し訳……」
サクヤが即死させられました。
残るはレスティスとケンウッド。それが破られればブラッディレイブンだけである。
これで残り7ターンか、行けるか?
「節々が、痛いんじゃぁ」
おじいちゃん、なんかさっきから節々ばっか痛んでないか?
レスティスが攻撃し、ブラッディレイブンが防御する。
「ひゃははっ」
レゴウの一撃、キュピーン。
プルプル震えるケンウッドがぶれるようにして攻撃を避ける。
もはやお爺ちゃんが頼りだ。
残り6ターン。頼むぞ爺ちゃん!
「節々が痛いんじゃぁ」
いやああああああああああああ!? どんだけ痛んでんの!?
なんか気付いたらHP凄い減ってんだけど!?
とりあえず今回もきゅぴーんしてくれたからいいけどさ、後二回痛んだら死ぬんじゃないかじいちゃん。




