第9話は夜イベントらしい
「ぎゃあ――――ッ」
「なんだぁ!?」
さぁ寝よう。と思った僕の耳に、突如外から悲鳴が飛びこんで来た。
「ああ、多分寝ようとするまでが第8話のイベントだったみたいですね」
「多分だけど今寝ても9話終えるまでは夜のままよこれ」
どうでもいいと本読みながら告げるイリスとどうすんの? とどうでも良さそうに告げるルーカ。
見てくれよこれが僕のサポーターたちなんだぜ? 泣けてくるだろ?
「どうすんだクソガキ、見に行くなら付いて行くぞ?」
そのクソガキ呼び何とかなんないかなブラッディレイブンさん、略してブラブンとか呼ぶぞコンチクショウ。
「何やら面白そうな気がするな。我も見に行くぞ」
「私は御屋形様に付いて行きますよ」
「えー、リーシャ面倒なんだけどなー」
「だ、だったら僕と一緒に部屋に居よう、それがいいよリーシャ」
「おう、坊主、こいつ等は俺が見といてやるから行って来な」
「晩御飯はまだかのぅ?」
「既に食べておりますよケンウッド様。寝るまでお祈りいたしましょう。空腹も紛れます」
「お、おら遠慮してぇだ。絶対殺されっぺよ」
皆が口々に告げる。
リーハとサクヤは一緒に来るつもりらしい。
リーシャは面倒そう、マリクはそんなリーシャと一緒に居たいだけ、彼らはダンディの言う通り三人で留守番させればいいだろう。
あとケンウッドは痴呆症患ってんのか? 空腹紛れに祈るってことはレスティスもお腹減ってんの?
村人共は声揃えて告げるんじゃない。ハモってんじゃねーか。
「そうだな、どうせ今日起こることならさっさと話数進めるか」
折角なので強化の種を周回で集め、ブラッディレイブンに全部詰め込むことにする。レベルを10に上げて村人Aと戦闘メンバー交代させておいた。
村人A、ホント弱過ぎんだもん。こんなの数居たって意味無いじゃんか。
「よし、んじゃ外に出てみよう。皆一応気をつけて」
役に立ちそうにない村人共はリーシャ達と置いて来た。
なのだけど……
辿りついた先に、ダンディが居た。リーシャとマリクを庇い、丁度斬り殺されたところである。
月明かりの無い暗い夜。誰も居ない大通り、そこに彼らは立っていた。
銀光を放つ不気味なナイフには、黒い染みがこびり付き、先程ダンディを背中から斬り付けた人物が何者なのかを物語っていた。
怯えるリーシャ。必死にリーシャを背中に隠し、木の棒構えたマリク。
その表情は青ざめ歯茎がかみ合わずにカチカチと音を立てていた。
対面に居るのはダンディを斬り殺した男。
見覚えがある。というか、見覚えしかない。
許せないほどに味方を壊滅させた最悪の男だ。
「快楽殺人者、レゴウ……」
ついにオリジナルが出やがった。
目にした瞬間いいようのない憎悪が湧き上がる。
「皆、頼む」
「我に任せよ」
「よしなに」
「しゃーねぇ、やってやらぁ」
「迷える子羊に神罰を」
「ところでここは、どこかいのぅ?」
皆頼もしく返事……頼もしく? まぁいいや、とにかく戦場に殴り込む。
「ひゃはははははは、次に殺されてぇ奴はどいつだぁぁぁぁぁ!?」
レゴウが楽しげに叫ぶ。
さぁ戦闘だ。そう思った僕に、イリスが声を掛ける。
「どうやら今回は警護戦のようです。非戦闘員であるマリク、リーシャさんが逃げ切れれば勝利になります」
「そうか。つまり二人が殺されなければ勝利できると? 別に、倒してしまっても構わんのだろう?」
一度言ってみたかった台詞を告げて僕はレゴウを睨みつける。
最初から、あんたは目の上のタンコブだった。
僕にとっては邪魔者でしかなかった敵だ。
味方のフリして壊滅させてくれたのは記憶に新しい。だから。オリジナルもさっさと消えて貰う。
「全員、全力でぶっ殺せ!」
「うわぁ、ダイスケの憎悪が透けて見えるわ……」
「何かあったので? まるで親の仇を見る目をしてますが」
「最初の戦闘で味方殺ししてね、アイツのコピーのせいで全滅したの」
「ああ、成る程、心中お察しするわマスター」
イリスに同情されながらも指示を出す。初めから全力攻撃だ。
破絶之爪撃、水神破砕線、天罰のロザリオ、節々が痛い。そう言えばブラッディレイブンのスキル構成見てなかったな。
「んじゃ勝手にやるぜ。ウラァッ」
何と肉弾戦だ。巨漢を生かしたタックルを受け、レゴウが吹っ飛ぶ。
飛び退いたブラッディレイブンの後ろから水神破砕線が襲いかかる。
さらに真上から天罰の雷。最後にリーハの一撃が襲いかかった。
爺さんは安定のスタン中だ。
しかし、レゴウのHPが減らない、だと!?
「ひゃはは、おもしれぇなテメーら。行くぜェ、死になァ」
「ば、馬鹿な!? この我が、魔王だぞ? この我が、滅……びる?」
はぁ!? ちょ、え? リーハが、一撃死、だと!?
敵の反撃で即死が発動、一番レベルが高いリーハが即殺されてしまった。




