エピローグ
ソシャゲ世界にやって来て、数年が経った。
最初の方はイベントやら何やらがあったり、緊急メンテが入ったりメンテの後にメンテが入ったりと大変だったソシャゲ世界も、数年が経てば軌道に乗ったようで、ここ最近はメンテナンスが行われてはいない。
最近はホイホイ君からの連絡もあまりなくなり、普通にこの世界の住民として生活を始めている。
世界の一部に島を貰って、そこで皆と暮らしているのが現状だ。村というよりは宮殿に住んでいる状態で、プールとか食堂とかが付いているのが嬉しい。
食材に関してはショップで買えるようになったし、お金はデイリーイベントで稼げる。
もはや引き籠り生活である。
イベントクリアし終えたからやることもう無いんだよ。
シークレットといちゃつくぐらいしかね。二人もいるからどっちがどっちかときどきわかんなくなるけど。
でも、だからこそ危機感を募らせている。
なんの危機感かって? ソシャゲ世界の終わりさ。
最近、フレンドになってた魔神美味しいさんも少し前からログインしてない。
次々に神々が消え、この世界にもソシャゲ特有の過疎化が始まっているようだ。
当然だ。ここで生活するシークレット達と違い、彼らは遊びに来たプレイヤー。遊び飽きたら去っていくのが世の常である。
「寂しくなっちゃいましたねー」
ポニーテールにまとめた髪を揺らしながら、シークレットがやってくる。どっちのシークレットだろう?
島の砂浜で遠くの本土を見つめていた僕の傍らにやってくると、風で揺れる揉み上げを掻き上げる。
「フレンドでまだ残ってるの、駄女神とギルガだけなんだよね」
あの二人だけは最後まで居続けるだろう。どっちが長く居るかで賭けしてるみたいだし。
きっとサービス終了まで居続けるだろう。
―― ダイスケ君、久しぶり ――
あれ? 神様?
久しぶりにメールが来たので返信する。
―― 残念なお知らせだ。ソシャゲ世界はそろそろ神々の遊び場から撤退するよ ――
ああ、ついに、来たのか……
ずっと続けばいいかと思っていたこの世界にもついに終わりが来たらしい。
へんてこなキャラとかバグの多い世界だったけど、住めば都。僕にとっては凄くいい世界だったんだけどな。
それで、僕はどうなるの?
―― 二つ、道を用意したよ。一つは転生して新しい人生を歩むこと。もう一つは、終わりまでこの世界に居続けること、かな ――
そっか……じゃあ、残るよ神様。
―― やっぱり、そうなるか ――
うん、この世界には知り合いが増えたんだ。
シークレットとか、リーハとか、パルマとかさ、だから、僕はここで皆と消えるよ。世界ごと消された後にでも、転生するよ、記憶は、無くてもいいかな。
―― ん? 何か勘違いしてないかい? 遊び場としては終わるけど私が作った世界だよ。世界の終わりまでは存在し続けるに決まってるじゃないか ――
え? あれ? それって……
―― とりあえず報告しといただけだよ。今まで通り生活してくれて構わない、次の転生時には私が引き取ったりはしないから自然転生になるけどね ――
「それって、ダイスケさんはずっと一緒にいるって、ことですか?」
「ああ、そう、なる、のかな?」
「そっか、ふふ、じゃあ、これからも、よろしく、ですね」
そう言って前に歩きだすシークレット、海辺に足を付け、こちらを振り向いた姿は、日差しを浴びて一枚の絵画のように、さわやかな笑みを輝かせていた。
「……あ。ああ、うんっ」
しばし見とれていた僕は、はっと我に返って微笑み返す。
「皆さんに報告しないと、ですね。行きましょうか?」
「そうだね。皆にもこれからよろしくって言わないとね」
シークレットと手を繋いで帰宅する。
僕はこれからもこの世界で生きて行く。
だってここには皆がいてくれるから。
手を繋いでいる所を見付けたリーハとかが喚きだしていろいろ大変なことになりそうだけど、毎日が楽しいんだ。
ホイホイ君には感謝してるし、この世界に来た事を僕は幸運だと思う。
ソシャゲシステムは解除されて行くそうだけど、僕らの生活はずっと続くんだ。
「くぉら貴様等ーっ。毎度毎度我の見ていないところでイチャつきおってからにぃっ、ダイスケは我のだぞーっ」
拳突き上げお怒りのリーハ。
その近くで笑い合うオリジナルキャラの仲間たち。
ああ、本当に……
「皆と一緒に居れて、僕は幸せだよ」
そう幸せ……ん?
声の聞こえた方角に思わず視線を向ける。
動くよ雪だるまがひっそりと置かれていた……
「しゃ、しゃべ、しゃべったぁぁぁぁぁ!?」
その日、僕は初めて雪だるまが喋ることを知ったのだった。
本日でソシャゲ世界は終了です。
皆様応援ありがとうございましたm(__)m