直送中の会話
「思うんだけどさぁ、ルーカ」
「はいはい、なんだねダイスケ君」
暇を持て余した僕は隣に居たルーカに声を掛ける。
さっきまでやかましかったリーハは、なぜか僕の隣に座った瞬間から固まったように微動だにしなくなってしまった。
騒がしい時は迷惑なのに、こう大人しいと逆に落ち付かない気分になるのが不思議だ。
いじり相手がいなくなった魔神はドカリと座ったまま目を開けて眠りだしたし、ネビロヌはなんか黒魔術っぽい行動を始めている。
ミケは外に出て神様の触手を食べてるようだ。外から止めてぇ食べないでぇ、らめぇぇぇぇ。とか海魔の声が聞こえている。あいつ、実は意外と神殺し出来る存在なのだろうか?
セフィーリア二人は同じ顔付き合わせて相談中である。
神様を屠るいい方法を模索中らしいんだけど、なぜかピエロまで一緒になって相談している。
まぁ、青い顔で両方の側頭部に銃口付き付けられてるけどね。
「思ったんだけどさ、一応、僕がプレイヤーだから主人公、だよね?」
「そうだねー」
「気のせいかな、途中からセフィーリアさんの方が主役っぽくなってる気がするんだけど」
「あっはっは、つまりモブキャラ然とした容姿のダイスケは結局主人公ってよりも脇役だったと」
「こけし破壊していいかな?」
「やめてっ!? 血も涙もない卑劣漢だよあんたぁ」
抱きしめていたこけしをさらに抱きしめ僕から隠すように動かすルーカ、こいつは何でこんなにこけし好きなのか。
「主人公より活躍するキャラなんて何処にだっているじゃない、中にはライバルキャラとして美形男子が出て来てヒロイン取ろうとしたり」
「お前何の話してんの?」
「まぁ、そういう奴は決まって彼女出来ないボケキャラにされるか酷いことになるんだけどねぇ、主人公の幼馴染に惚れられたキャラは国ごと滅ぼされてゾンビにされたり」
「何の話っ!?」
「あの人なんてヒロインといい感じになった瞬間子供の放った矢に当って死んだし」
「だから何の話!?」
「つまり、脇役は脇役らしく、変に主人公に張り合おうとしない方がいいってことよダイスケ」
「ちょ、それってまるで僕の方が脇役扱いされてない!?」
「え? 自分主人公だ。とか思っちゃってるイタい人だったの」
なんでお前そこで引くの!?
「よく考えなよダイスケ、幾ら神様に選ばれたプレイヤーだからって物語の主人公に成れるわけないじゃない。ああいうのは努力、友情、熱血を持ってるか、それに類する知識、冷静、起死回生スキルを持つ存在じゃないと。後はイケメン?」
「よし、こけし壊そう」
「やめてぇ、この人でなしっ。あんたをそんな子に育てた覚えはないよぉっ」
僕も育てられた覚えは無いよ。
とはいえ、今回ばかりは僕がどうにかできる問題じゃない。
セフィーリアが二人もいるし、魔神やリーハがいるからお任せだね。神様二人もいるし。
「さぁ、そろそろ着きますよ」
セフィーリアの言葉と共に幌内が揺れ始める。
次元を押し広げるため幌が揺れているそうだ。
事前に神様から連絡あった。まぁ神様って言ってもタコみたいな正気度をごっそり削る神だけど。
空間を割り砕きSAN値直送ルルイエ急便がギルガの元へとやってくる。
なんか外の方がやかましいけどなんだろう、男の悲鳴が聞こえた気がする。
「「3・2・1、Go!」」
セフィーリア二人が突撃を開始、オリジナルはピエロさんの首根っこ掴んだまま飛び出して行った。
「さて、我らも行くか」
あ、魔神さんいつの間に起きたんだ?
目を開けたまま寝てたから分からなかったぜ。
「行くぞダイスケ」
そして僕の腕を引っ張るリーハ。あのねリーハ、僕は行かなくてもいいと思うんだけど、あ、やっぱだめ?
ルーカが僕の頭の上に乗ってくる。
行くぞーっと拳を突き上げてるけどこけしどうした?
結局幌内の床に転がしてるし。まぁいいけど。
幌から出る。
やっぱり出がけに神様の胴体を踏まないといけないらしい。
このぶにょんとした感覚は何とかならないものだろうか?
「あれが、ギルガ?」
そこに居たのはピエロにも似た存在だった。
とはいえ、セフィーリアさんに持たれたピエロほどピエロっぽくはなく、半分だけ白く塗って赤鼻を鼻にくっつけた顔、服装は赤と青で半分に別れたピエロっぽい服で襟首や裾にシャンプーハットみたいなのが付いている。
「お、おお!? 何だお前ら!?」
「ギルガっていうのは貴方ね?」
「げっ!? まさかダイスケが戻って来たのって、ただ失敗しただけじゃ……」
「「問答無用、殺してやるからお覚悟を」」
ジャキン、セフィーリア二人が銃器を取り出し戦闘態勢。
もはや逃げ場は無い。魔神も戦闘態勢に入り、リーハも僕を守るように不敵に笑う。
うわぁ、なんかこっちの方が悪役っぽい配列だよこのメンバー!?
どうでもいい小ネタ
国滅ぼされてゾンビ化した人 → ブルーブ○イカ―のイ○ルさん
子供の放った矢に当った人 → エメラ○ドドラゴンのヤ○ンくん
哀しい、犠牲でした。