神への反逆
「来たわ」
異世界に緊急回避出来たのはいいんだけど、これからどうしよう。ちょっと途方に暮れていた僕に、セフィーリアさんが呟いた。
来たって、何が? と思った次の瞬間、近くの空間が歪んで何かがやってきた。
にゅるんっと現れたのはタコ足の触手。
触手は空間を押し広げるように溢れだし、空間に亀裂を空けるようにしてその体躯を出現させる。
ぎゃあぁぁぁ!? SAN値が! 正気度がぁ!?
うにゅるんっと無数の触手が出現し、空間引き裂き古の神が現れる。
「やぁコピーセフィーリア、SAN値直送ルルイエ急便だよ」
「待っていました、オリジナルは?」
「ここに居ますよ。さぁ行きましょうコピーさん」
え? なに? これなんなの?
気色悪い海の悪魔っぽい生物の背後に馬車の幌みたいなのが付いていてそこからセフィーリアさんがでてきたんだけど。
セフィーリアさんが二人いる!?
あ、待って、あのセフィーリアさん、左手になんか持って……ひぃっ!? 血塗れのピエロさんが!?
びくんって、今びくんってしたよ!? あ、止めて上げてセフィーリアさん、そんな死にかけのピエロに銃弾撃ち込んじゃらめぇっ!?
「さぁ、行きますよ」
「え? ちょ、僕も!?」
腕を引っ張られて強制的に幌に乗せられる。
幌に入る時踏んでしまったSAN値直送ルルイエ急便さんの皮膚はとてもぶにょんとしていた。
「ふむ、おもしろそうだから一緒に向かってやろう」
「なんだ、魔神も来るのか」
「そういう魔王もか、足手まといではないか?」
「抜かせ、貴様こそ直前で逃げだすなよ」
魔神に噛みつくリーハ、ごめんリーハ、どう見ても魔神の方が強いよ?
「な、なんかよくわからないけど、シークレット、ちょっと行って来るよ」
「はい、無事に返って来てくださいねダイスケさん、私、待ってますから」
「ああ、必ず帰る」
シークレットにそう告げる間も惜しいと、直視出来ない古の神は空間の裂け目へと入り込んで行く。
うぅ、幌の中に入れば見えなくなるけどなんか凄く気持ち悪い。
しかも振動も独特なせいでなんか嫌だ。
「で、セフィーリアが二人いるのと、何処に向かってるのかとか、いろいろ疑問があるんだけど」
「おや、わかりませんか? 彼女がオリジナルです」
はぁ、おりじな……マジか!? なんでオリジナルセフィーリアがここに!? っていうかそのピエロってもしかしなくてもセフィーリアさんの世界の神様!?
復活するから定期的に銃弾打ち込んで殺しまくってるってこと!? あ、コピーセフィーリアまで殺害に加担しないで、可哀想だよ!?
「そして向かっているのは私達を弄んだ憎き神ギルガという愚か者の場所です。とりあえず、殺してしまっても問題ありませんよね?」
いや、神様だよ相手、殺しちゃダメでしょ!?
「そう言えば駄女神の知り合いに神殺しがいるんだよ。ギルガも殺されるのかねぇ」
マジで!?
というか古の神様普通に会話に参加して来たんだけど、あんたここの会話聞こえてるの!?
「私も神だぜダイスケ君。君の心の声までまるっとお見通しさ。あ、でも私の姿直視し過ぎちゃだめだよ。正気度下がるから」
やっぱこの神ヤバいアレだった!?
「で、でも相手神だろ、どうするつもりなの!?」
「問題ありません。ここにはほら、神が二人もいるではありませんか、こいつ等を嗾けて弱った瞬間総攻撃でお殺してさしあげるのです」
何事も『お』を付ければ丁寧な言葉になると思わないでオリジナルセフィーリアさん。っていうかコピーがコピーだからなんとなく違和感なく接したけども、初対面なのに好き放題し過ぎでしょ!?
「魔神と魔王が手伝いに来てくれたのならそれなりに使えそうですね」
「我もいるぞ」
「にゃー」
うぉ!? 幌の中が暗かったから分からなかったけどいつの間にかネビロスとその頭の上にしがみついたミケがいる!?
「お前らも来たのかよ!?」
「付いて来た方が面白そうだったからな」
ミケも頷くようににゃーんと答える。
全く、二人とも相手は神だよ? 神相手に猫がどうにかできるとは思えないし、死霊が何とかできるとも思えないんだけど。
でも、一緒に来てくれるだけでも嬉しいよ。
「ふふ、我が力を試すいい機会である」
「ずっと封印されておったらしいしな、今まで暇だったのは我も同じだったから気持ちは分かるぞ。まぁ、我はダイスケに助けてくれと懇願されたから召喚に応じて手伝ってやっていたがな」
あれ? おかしいな、魔王は勝手に出現してフォローした後勝手にあと付いて来て最後まで一緒だった気がするんだけど?
「ふ、ならばこの先は力不足だな、先程のシークレットだったか、あの女のように見送る側に居た方が良かったのではないか?」
「なんだとぉ!?」
きしゃーっとお怒りの魔王様、魔神に襲いかかろうとするが魔神にはバリアが張られ届かない。
あれ、これ、大人にぐるぐるぱんちして頭押さえられてる子供を幻視してしまうのは気のせいだろうか?
ちょっと微笑ましいと思う僕でした。




