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消える世界、そして異世界へ

 虚空へと消えて行くヘリの姿を僕らはただただ呆然と見送っていた。

 最後に覗いたシュヴァイツァーがこちらを見て右の親指を立てる。煌めく歯を僕等に送り、虚空の彼方へと消えてしまった。


 残ったのはドラゴン形態のリーハ。

 僕の傍に居るコピーパルマ、シークレット、ルーカ、イリス、ミケ、ネビロス、サシャ二人、セフィーリア、ヘルファータの10名と僕と魔神。

 これだけ乗ったせいで、というか巨大な魔神さえいなければあと二人くらい行けたはずだけどね。そのせいで他のメンバーを回収することは出来なかった。


 それが分かっていたのか、アニキたちも、シュヴァイツァーたちも笑顔で僕から遠ざかって消えてしまった。

 くやしいけれど、僕らもどうなるか分からない。

 今は僕ら自身の事を考えないと。

 幸い神様がもう少ししたら転移させるとか言ってたし、後少しの辛抱だ。


 ただ、時間はほぼ無い。

 世界は既に目に見える位置以外は全て崩壊してしまっている。

 もしくは世界の端の方はまだ存在しているのかもしれないけれど、僕らの傍では四方八方崩壊が始まり、自分たち以外はひび割れた空が一部、崩壊した大地が少し、半壊した家屋が大地に一つだけ残っている。

 それも、直ぐに闇に飲まれて消え去った。


「ちょ、ちょっとダイスケ、もう行き場がないわよ!」


 ルーカが焦った顔で僕の耳を引っ張る。

 目の前で空が割れて落下していった。

 恐怖からか、こけしを抱きしめ震えだすルーカ。


「お手上げ、ね。内部の私達ではもう打つ手がないわ」


「全くだな。クソ、本当なら楽しいソシャゲ世界になってた筈なのにな。皆、ごめん」


「ダイスケさんが謝る必要はないでしょ」


「そうです。いつも理不尽な神々に振り回されるのは私達なのだから。むしろ憎悪を持って奴らを駆逐すべきだと思うの私」


 セフィーリアさんはブレないな。コピーキャラなのに末恐ろしいよ。


「でも。世界の崩壊、綺麗……」


 目の前で落下していく空だったものの煌めきを見て、ヘルファータが呟く。

 恐怖でしかない筈の世界の崩壊、でも、彼女からすれば世界の終わりが綺麗に見えるようだ。


「ん、綺麗だね」


「綺麗な世界の崩壊に飲まれて綺麗に死ぬ、かぁ」


 サシャ二人は共感しながら諦めないで。僕はまだ諦めてないから!


『ダイスケ、そろそろ浮いているのもきついぞ!』


 リーハの翼、その数cm先が崩壊する。

 もう、余裕は殆ど無い。

 いつこの空間が崩壊してもおかしくないし、リーハの身体が二つに引き裂かれてもおかしくないのだ。


 だから、僕は祈る。

 こんな時には何が出来るものでもないから、僕は必死に祈る。

 神様、僕らを救って、と。


 思いは届いたのか、ぎりぎりで僕らの身体が光り輝く。

 一瞬の視界の暗転。

 どうなったのか分からずしばし呆然と状況を待つ。


 死んだのか? 崩壊に巻き込まれたのか?

 それとも助かった?

 皆の姿は? シークレット? リーハ? セフィーリアさん? パルマ?

 身体に感覚がない。

 すぐ側に居た筈の皆の姿が見えない。

 触感に伝わる筈の、僕が抱きしめてたパルマの身体も、耳引っ張りながらこけしを抱きしめていたルーカの手も、何も感触がない。


 誰か? 誰か――――っ。

 思わず叫ぶ。

 答えは返らない。そればかりか声が出た感覚すらない。

 これは、まさか……崩壊に巻き込まれた?

 意識だけが残って、崩壊した世界の中に閉じ込められた?


 そんな事を思ってしまうと、一気に恐怖が押し寄せる。

 誰も居ない状況で、動けない状況で、僕は、僕はっ。


「……さん」


 声が、聞こえた。


「ダイスケさんっ」


「……はっ!?」


 急速に身体の感覚が戻る。

 心地よく吹き抜ける風の感覚、背中に感じる草の感触。

 周囲から感じる生命の匂い。


 草や土の匂いに思わず涙がこぼれそうになる。

 必死にこらえて眼を開く。

 うっすらと、ぼやけた視界に空が映った。

 直ぐに影が差す。


 視界の中、涙目で僕を見降ろすシークレットの顔があった。

 視界のぼやけが徐々に消えて行く。

 シークレットの顔がしっかりと見えてくる。

 青い空の下、シークレットが僕の無事を確認して微笑みながら泣きだした。


 ゆっくりと身体を起こす。

 視界が空から大地へ映り、地面にへたり込んだ女性達を映す。

 サシャ、ヘルファータ、リーハ。

 少し離れた場所にセフィーリアがこちらに戻ってくるのが見えた。

 サシャとルーカが抱き付き泣き合い、パルマとイリスが周囲を確認して安全を確かめていた。


「ここは……世界の崩壊は?」


「どうやら、別の世界に緊急回避、成功したみたいですね」


 ふぅっと息を吐いたセフィーリアが僕の近くに来て座り込む。流石に緊張の糸が解けたようだ。


「ふむ。異世界か、我が力を振るうには良い場所でありそうだな」


「エンドレスさん止めてくださいっ!?」


 付いてきちゃってた魔神がすぐ後ろで物騒なこと呟いたので慌てて押し留める僕がいた。

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