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神々の闘い

「おーっす、ホイホイ君、がんばってるー?」


 黒い影の群れが現れた。

 そこは神々の世界、暗黒が支配する世界で、パソコンを前にした駄女神とホイホイ君が血相を変えて打ち込みを行っている。


「おーおーこりゃやばいわ」


「うっわ、凄い勢いで崩壊しとる」


「これ、もうこの世界無理じゃね?」


 助っ人に来た神々も流石にこの状況を見て速攻匙を投げようとする。

 踵を返して帰ろうとする彼らをホイホイ君が慌てて引きとめた。

 流石にこのまま帰って貰う訳にはいかないのだ。


「せめてダイスケ君だけでも、助けられませんか? 例外で異世界渡航許可を!」


 緊急事態なのだ、それくらいはできまいか?

 自分たちは自由に異世界に人を行き来させているのだから大丈夫だろう?

 頼むお願いだ!


「ダメじゃの。これを例外にしてしまったら他の奴らも自分のお気に入り存在を転移させようとしてくるじゃろ」


「気持ちはわかるけどねぇ、自分の管理してるとこ以外だと……ほら、相手の許可がいる訳だし。異世界人入れるのはなかなか難しいのよ、本人にその気はなくてもいろいろ文明が変化したりするから」


「自分の管理してる所なら、いいのよね?」


「ん?」


 口々に否定する裁判を司る神々に、駄女神が尋ねる。

 小首を傾げた彼らに、駄女神はふっと笑みを漏らした。


「確か、私が管理している世界で、ナーガラスタに滅ぼされた世界の人々を避難させた世界があったわよね、確か、アンゴルモニカ、だっけ?」


「マロン、お前まさか……」


「管理者権限を発動し、ホイホイ君の世界からの異世界人を受け入れます。皆さん手伝ってくださいますか」


「この馬鹿、分かっておるのか? 自身が管理している世界とはいえ異世界人を入れるというのは今まで安定していた世界を破壊する切っ掛けになるやも知れんのだぞ」


「離れ島作って隔離するから大丈夫よ。ただ、ダイスケ君だけだと衰弱死しかねないから他のキャラも纏めて移住させることになるけど」


「むぅ……」


 考える神々。

 影と化した神の一人がはぁっと溜息を吐く。


「仕方ないわね。マロンは離れ島作って転移の用意。モルグ、あんたはマロンと代わってウイルス解析、アルテ、出来るだけ持たせて。おじいちゃんはそこで応援」


「ミルカよ、しかしだの」


「神々同士移住の了解がなされた以上我々が止めるものではありません。裁判所はあくまで犯罪を裁く者、当人同士で了解された移住であれば犯罪に当らない、そう決めたでしょ?」


「うぅむ、仕方無いの。では移住方法の構築を担当しようかの、ただ、時間的にダイスケ君の周囲数メートルまでしか対応出来んぞ?」


「と、なると、バギーやヘリを纏めて、ってのは無理そうね」


「おそらく魔王の身体を纏めて、で限界じゃの」


「ホイホイ君、ダイスケ君に連絡して」


「は、はいっ。でも、なんて?」


「準備が出来次第強制転移をします。範囲は魔王の身体に乗ってる人物のみ、魔王ごと転移、貴方が中心だから魔王から離れれば魔王は転移出来なくなるわ」


 つまり、ダイスケを中心にして魔王の身体とそれに乗っている人物だけを強制転移させるということだ。だから、ヘリに乗った存在も、バギーに乗った存在もこの世界に取り残され死ぬことが確定する。

 それでも、ダイスケと周囲だけでも転移するのだ。この切羽詰まった状況では充分過ぎる成果だろう。


「送りました!」


「おっけー、後はマロン達に合流して」


 忙しなく動き出す神々。

 しかしウイルスの浸食速度はあまりにも早い。

 既に世界は半分が無に返った。


 これではもうソシャゲ世界を遊ぶことは不可能だろう。

 それでも、ダイスケまで殺させる訳には行かない。

 ホイホイ君は必死だった。


「ああもう、ギルガの野郎やってくれたな畜生」


「でも、なんでこんなことを?」


「あいつならやりかねないわよ。とにかく私達が困ることを見て楽しんでる神だから」


「さりげなく巻き込んだけど、マロン、実は、ナーガラスタみたいにあんたの困る顔を見たいだけ、だったりしないわよね。あいつのアカウント名、駄女神絶対殺すマンだし」


「うぐぅっ」


「良し分かった。原因は駄女神ね」


「ちょ、それ私関係ないですよね。おい駄女神ッ、テメーのせいでソシャゲ世界使えなくなったってことか畜生ッ」


「よしよし、ちゃぁんとホイホイ君のせいじゃないって皆に知らせとくからね」


 と、ミルカがホイホイ君の頭を撫でる。まるで親戚のお姉さんがあやすような態度である。


「え? ちょっと待って。なんか結局最後はあちしが悪者にされてない?」


 え? 当然でしょ? 皆の気持ちが一つになった。

 全てが敵に回った気分で駄女神はちくしょぉっと咆える。

 しかしその叫びは誰の胸も打つことは無く、虚空へと消えて行ったのだった。

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