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てんやわんや

「はぁ、はぁっ、や、ヤバかった。危なかった。どうすんだこれ!?」


「ひ、火消、火消しなきゃ。ホイホイ君、あちしはこっちやるから、ホイホイ君は……」


「だ、ダメだ。私の世界だけど私がどうにかできる気がしない。マロンさん、お願いします。火消の方を私が」


「わ、分かったわ」


 神々の世界、ソシャゲ世界の管理者たちは、突然のことに慌てふためいていた。

 ホイホイ君は自分の作った世界を直すことを諦め、突然締め出された神々の不満を引き受ける。

 駄女神マロンは何が起こったのかの捜査だ。


 唐突に緊急警報が鳴り響いたので慌てて皆を世界からはじき出したのだが、再開直後だっただけに不満は爆発するだろう。

 だからこそ、火消に駄女神が出て行くのはむしろ火に油を注ぐ結果になりうる。

 結果的に言えばホイホイ君が引き受けたことは良いことだったかもしれない。


「でも、何が起こって……ああもう、ダイスケ君からメール来てるけど返信してる余裕ないじゃない。なんだこれ? まさか……ウイルス!? 世界ごと破壊するつもり!?」


「え? 何だってマロンさん!?」


「なんでもない。ホイホイ君はそっちお願い、あと出来るならプログラムに強い奴数人呼んで! 迅速さが重要だわ、お願い」


 駄女神だって変な事を行おうとしなければとても有能なのだ。有事である今の状況、彼女も遊んでなど居られない。珍しく真剣な目でソシャゲ世界のプログラミングを調べて行く。

 思った以上に侵攻の早いウイルスだ、世界を侵食して行くのがここからでも分かる。


 もしもこれに飲まれてしまったら、きっとダイスケは二度と蘇生できないだろう。いや、下手すれば魂の情報も破壊されて転生すら出来なくなるかもしれない。

 どうする? 最優先事項はソシャゲ世界か? 否、自分たちの都合でこの世界のテストプレイヤーになっているダイスケだ。

 彼を死なせてしまうのが一番の敗北。第二がソシャゲ世界。ウイルスの浸食速度から言えばこれはかなり難しい。


「いきなりこんな、いや、犯人はやっぱりアイツか。やってくれるじゃない」


「助っ人頼んだけど来てくれる人が居るかどうか……」


「手は空いた?」


「なんとか。皆結構暖かかった」


「そりゃよかった。でもこれが続けば擁護派は消えて大炎上よ。今の状況分かる? ソシャゲ世界が崩壊ウイルスに浸食されてる。折角作った世界の片隅が既に喰われてる」


「嘘だろ!? どうしてこんなこと……」


「発動は多分偽ダイスケが倒された頃。時期的に言ってギルガでしょ」


「なんでだよ、なんでこんな。そのギルガって奴はなんでこんなことできるんだよ。必死に、私もダイスケ君も必死に頑張ってこの世界を作って来たんだぞッ」


「ソレを無碍に奪うのが好きな奴なのよ。ええい、ダメだこのウイルス新種なうえに検閲出来ないっ」


「はっ。そうだ。ダイスケ君は!? 彼はどうなってる!? これ、巻き込まれたら彼はどうなるんだ!?」


「死ぬわ。文字通り、転生も多分できなくなる。この世界ごとデータの海に沈んで回収できないくらい分解されて、残るのは無よ」


「そんな……」


 世界に居る以上、彼に逃げ場は無い。

 確実に崩壊していく世界から、せめて崩壊を遅らせる為に無事な場所を探して逃げるしかないのだ。

 でも、その先に生還は無い。

 彼は既に詰んでいる。このまま何もしなければ仲間たちごと消え去るしかない。


「ダイスケ君の回収を!」


「どこにっ! 予備の世界でもあんの!? 別世界に送ればいいの? そんな事すればそれこそ断罪裁判が開かれるわ。無許可で神が異世界に移動させたってことになればね、まぁ、司法やってるお爺ちゃん達なら好き勝手しても問題無いんだろうけどね。あんたも私みたいに神の権限殆ど奪われてパソコンいじるくらいしか出来ない身体にされたいの!」


「それは……でも、ダイスケ君が」


 彼にこんな危険な事をさせるつもりなどなかった。

 死んでも生き返る仕様の世界で面白可笑しく、ちょっとくらい喧嘩しながらも二人三脚でこの世界を完成させたかったのだ。

 断じて、彼の魂すら殺す危険な状況になどさせるつもりもなかったし、アカウントを奪われる状況にだってさせるつもりは無かった。


「助けて、くれマロンさん。ダイスケ君を、彼らを絶対に!」


「やれるだけやるわ、でも……ダイスケ君一度死んでるでしょ? 断罪されないようにとなると新しい世界作らなきゃだからさすがに……」


「私の能力が封印される位どうでもいい、だから、ダイスケ君たちを生還させてくれって言ってるんだよッ!!」


「あんた……」


 必死に叫んだホイホイ君に、マロンは振り向き目を見開く。

 決意に満ちた瞳に、馬鹿ね。とだけ告げて、パソコン画面に向き直った。


「おっけぇ、後のこと気にしないならなんとかなるわ。で、ダイスケ君だけでおっけ?」


「それだとダイスケ君は私達を許さないよ。せめてリーハとそれに乗ってる奴全員。それくらいはできるだろ!」


「離れてるのはむずかしいけど、それくらいなら、ね。罪、重くなるわよ?」


 こくり、頷くこの世界の神に、マロンはふっと優しい笑みを浮かべるのだった。

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