イベント開始、そして破綻する
「それでは初フレンド登録が行われましたのでご説明します」
フレンドについての説明、そう言えば一人以上出来てから説明するとかルーカが言ってたな。
結局説明してくれるのはアイツじゃなくてイリスじゃないか。
まぁいいや。確かフレンドポイントが溜まったらフレンドになってる奴の中から召喚可能になるんだっけ。
魔王、もう既に一体いらっしゃるんですが。
えーっと、ああ、コレで必要フレポイント見れるのか。
魔王様の必要ポイントは、初回のみ100ポイントだ。
魔王が100ポイントで仲間になるとか、それなんてクソゲ?
魔王様自分を安売りし過ぎじゃないか?
「ちなみにイベントでNPCが戦闘に入った場合は100ポイント入るわ。フレンドキャラは20ポイント、他のフレンドを適当に呼び出す場合は10ポイント。協力はしてくれるけど他のフレンドは戦闘を手伝ってくれるだけ、会話すら不可能よ」
なんだそれ?
「フレンドキャラはコピーが呼ばれるわ。まぁ今回はオリジナルさんのようだけど」
つまり、以降フレンドキャラを呼び出し戦闘を手伝って貰ったとしても、会話で好感度が上がったり何か貰えたりとかはないということらしい。あくまで闘いだけの関係だそうだ。
ツレナイ世の中である。
ちなみに今のフレンドポイントなんだけど……400あります。
何故って言えば多分だけど最初からいたNPCのヘイグルの御蔭だ。
アイツが戦闘参加してたからこれだけ溜まってるようだ。惜しい奴を無くしたぜ……なんてな。
最初の数話選べばまた会えるからそこまで悲観できないんだよな。
「それじゃ、フレンド説明はこの位にして、イベントの説明をするわ」
そうだった。最初のイベントがあるんだった。
えーっとなになに、初回イベント名は【×××の反逆】?
とある少女が憎悪を募らせ仲間と共に主人公に襲いかかって来た。
無数に出現する敵を薙ぎ散らし、少女を反省させよう。
……少女? 憎悪?
僕は思わず周囲を見回す。
皆理解したようで、呆れた顔をしている。
「ほぅ、来たぞ小僧」
遠くの方から無数のバイクが迫ってくるのが見える。
立ち昇る砂煙、改造された痛々しい刺付きバイク。
乗っているのは世紀末に跳梁跋扈してそうなヤバい感じのヒャッハー集団。
モヒカン男にスキンヘッド、カラスマスクに箒頭。滅茶苦茶ヤバい集団じゃないか。
その奥、一際デカい、あれはバギーかな?
改造された刺々しい四輪駆動のオープンカー。ただしハンドルは丸型ではなく『ひ』型のハンドルで、一人乗り。そこに乗っているのが両足を投げ出し両腕を組んで、グラサン掛けた不良少女。
うん、どう見てもあれルーカだわ。
「ルーカの奴だな」
「あの馬鹿、サポートの癖に何をしているのやら」
イリスが沈痛な顔をする。アイツマジ最悪だな。タバコ吸えないからエアタバコで吸う真似をしてやがる。アホの子だ。
「今回のイベントは総当たり戦になります」
「総当たり戦?」
イリスが無理矢理真面目な顔を作って告げる。
イベントの内容説明を手早く教えてくれるようだ。
「あそこに居る敵全てが一気に押し寄せてきます。今いる戦闘メンバーだけでなく控えのメンバーも全員使っての総力戦になりますので今のパーティーメンバーが死んでも戦闘は続きます。全員が死んだ時点でこちらの敗北。勝利は敵の全滅、あるいは敵対象の撃破。今回はルーカですかね? あるいはボスキャラがどこかにいるはずです」
「なるほど。じゃあメインメンバーは後に回した方が……」
「面倒だ、さっさと終わらせるぞ小僧」
「へ?」
メンバーの出陣順を決めよう、そう思うより早く魔王様が前に出る。
「見るがいい小僧。これが魔王という者だ。クハハハハハハハ!! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺!!」
ごめん魔王様、それ既に見た。
目の前にカットインが現れ魔王様の顔がアップ。目の前に持ち上げられた手に魔力が宿る。
真上に片手を上げて魔力を集中。というか、開始直後に必殺ってどういうこと?
放たれた魔力は天高く撃ちあがり周囲の雲を消し飛ばす。
円状に逃げた雲の合間を突き抜けて、しばし。真上から流星雨となって敵陣へと降り注いだ。
迫り来るバイクの群れが火炎弾の流星群に襲いかかられ阿鼻叫喚の地獄絵図。ああ、バイクごと空に上がったモヒカンが次の流弾に激突されてカクカク移動しながら空高く上がって行っている。
そして敵に背中を見せて仁王立ちする魔王様がふははははははは。と高笑い。背後では地上に激突した無数の魔力弾が地面を穿ちバイクが爆発、死山血河の悪夢が広がっていた。
はは、人がゴミのようだ。……敵、イベント開始直後に壊滅です。
あの、これは……?
「多分ですが、ボスキャラクター特有の特殊スキルですね。開幕直後の瞬間チャージと思われます」
やはり魔王は魔王であることを、僕はこの時痛いほどに痛感させられたのであった。




