最後の一人
嘘……だろ?
魔王グレヴィウスリーハが5体。
ついさっき倒した筈の魔王である。
「まぁ、流石に高過ぎてちょっと本数は少なねぇがなァ。魔王だけでも充分だろォ? なァ?」
「ぐっ」
マズい。リーシャ、アニキ、デビデブーだけなら勝てそうだったけど、魔王が復活したとなると話が違ってくる。
勝てるか? そもそもあいつらを倒したとしても、復活薬はまだある。
倒しても生き返ってくる以上今居る敵を全て一瞬で倒さないと勝利するのは難しくなる。
「そら次のターン開始だ! さっさと死ねぇ!!」
次ターンが開始されてしまった。
偽ダイスケがアイテムを使って敵キャラ全員が必殺使用可能状態へと移行する。
魔王五連撃にデビデブーの男殺し。リーシャを守るアニキも堅牢だ。
「おらがいるだ。ダイスケ殿、おらが、いるんだ!!」
そいつは僕の前に躍り出た。
勇者の剣を携えて、必殺の一撃を発動する。
村人達の無念を剣に。
今まで必殺を使わずタダシさんに守られていたためいつでも発動可能だった必殺技。
敵全体に防御無視の超ダメージ。犠牲になった村人一人につき威力が10%増加。というある種凶悪な必殺である。
場に出ていた村人たちなので、敵でも味方でも村人一人を1とカウント。つまり400人以上の村人達が犠牲になったここで、彼の必殺威力は4000%以上の威力へと跳ね上がる。
デビデブーの一撃はケンウッドがきゅぴんで避けて、代わりに拳を叩き込み吹っ飛ばす。
魔王五連撃こそ発動されるが、頭上から落ちてくるまでのタイムラグがあった。
御蔭で、リーシャを盾にすることに成功したセフィーリアが敵の必殺を避けて行く。
サシャ二人は無理だった。
タダシさんが防具を頼りに防いでくれていたが、共に生き残れなかったのである。
それと、アニキは背後に守るべきリーシャが居なくなったことで炎に飲まれて死んでいった。
最後の必殺合戦。
僕側で生き残ったのはセフィーリアさんと村人。
デビデブーを倒したケンウッドだったが、魔王の連撃を一発喰らってしまった。
流石必殺だけあってケンウッドは即死だった。
敵で生き残ったのは? リーシャはセフィーリアさんの盾になって散ったし、アニキは復活なく倒れたようだ。
デビデブーも即死。
残ったのは第二形態へと移行した魔王5体だけである。
「チッ。まだ隠し玉が居やがったか。ただの村人だと思ったらよォ」
まぁ、その内終わるだろうけどな。と偽ダイスケが呟く。
サクヤを復活させる偽ダイスケ。
何故かと思ったが直ぐに分かった。第二形態だ。
例え何らかのイレギュラーを使って魔王5体を倒したとしても次のターンまで生き残る為だろう。
そうすればまだ復活薬で魔王を生き返せるし、即敗北、という訳にならないからである。
こずるいことに頭が回るなこいつ。
クソ、この状況かなりまずいぞ。
セフィーリアの必殺が溜まってるけど、それだけだし。
村人の代表スキルの御蔭で村人はほぼ無傷だけど、どんなに頑張ってもダメージは受ける。その内負けるのは確定的だ。
あとはどれだけアイテムを消費させて倒すところまで持って行けるか。
もはや消耗戦だ。
村人の村人たちが死亡するたびにステータスが5%UPする特性の御蔭で2000%UPしてるからダメージ自体は1とか2だ。
やれるか? やるしかないんだけど……味方が二人だけしかいないのが辛い。
セフィーリアも次の必殺では防御できる敵が居ないから直撃だ。
多分生き残れない。
つまり、次の闘いは村人君だけになってしまうのだ。
「「「「「クハハハハハハハ!! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺!!」」」」」
「そして全てが灰になる」
村人君の攻撃でサクヤが即死、そこにすかさずセフィーリアの必殺が襲いかかり魔王達を消失させる。
しかし、魔王の放っていた必殺がセフィーリアと村人に襲いかかった。
そして、第二形態となったサクヤが復活する。
「そら復活復活」
やる気なさそうにアイテムを使用する偽ダイスケ。
魔王5体が復活した。
そして、悔しげに偽ダイスケを睨みながらセフィーリアが消失する。
敵、魔王5体、第二形態サクヤ。
僕、村人君。
ヤバい、追い詰められた……
「ひゃははははははッ、これ以上の戦闘は無意味じゃねぇのかァ?」
「まだだ。まだおらがいる!」
「分かってる。頼む村人。君だけが頼りだ」
こうなるかもと思ってオリジナルの村人達を集結させた。
戦闘で村人達が闘ってくれたのは全てこの時の為だ。
この村人のステータスを増加させるための贄になって貰ったんだ。
だから、ここで負けたら皆の死が意味無い物になってしまう。
「やるぞ村人君!」
「おぅよ! おらがやるだ!」
例え最後の一人になったとしても、諦めないッ!
「あー、もうメンドクセェ、やっちまえギドゥ」
え? ギドゥ?
ひたり、僕の喉元に何かが当てられた。