初イベントでメンテナンス待ち、そして初フレンド
ルーカを探そう。そう思い動き出そうとした時だった。
突然世界が赤く明滅を始める。
「な、なんだぁ!?」
サイレンのような耳触りの音が響き渡る。
イリスがああ。と納得したような顔になるが、説明が無いので意味が分からない。
「イリス、これは?」
「緊急メンテが入りますね。致命的欠陥が見つかったりした場合メンテナンスが入ることがありますので、その時はこんな感じでサイレンがなります」
メンテナンス!? こんな時に?
「どうやら時間は一時間程ですね。目の前が真っ暗になると思いますので慌てず一時間お待ちください」
へ? 待つの?
思った次の瞬間、許しも報告も無くいきなり目の前がシャットダウン。
さっきまで居た街道が突然暗闇に切り替わり、目の前にデカデカとダイアログボックスが出現。
只今イベント設置のため緊急メンテナンスを行っております。
ご不便をおかけしますがなにとぞご了承ください。
メンテナンス終了は1時間後になります。
……
なぁ、神様。これってさ、メンテナンス中、僕何も出来ないよね?
しばしぼーっとする。
ずーっとぼーっとする。
そして飽きる。
その場でごろごろ。
仲間キャラも見当たらないしサポートキャラもいないので何もすることが無い。
ちょっとはこちらが過ごしやすい環境をね、ずーっとメンテとかだと飽きるよ?
そして体感1時間終わった後でさらに体感1時間を過ごし終えると、ようやく1時間が経過した。
さぁ、そろそろメンテも終わりだ。そう思った次の瞬間だった。
ダイアログボックスのメッセージが変わる。
メンテナンス延長のお詫び。
メンテナンスに関しまして多少の不備を発見致しましたため1時間の延長を行います。
ご不便をおかけしますがなにとぞご了承ください。
「ぬがああああああああああああああああああああああああああ!?」
暗闇の中僕は頭を抱えてもがき悶えた。
心が壊れそうな何とも言えない苦痛とストレスで頭が変になりそうです。
せめて光を、話し相手を……
暗いよ広いよ怖いよぉっ。
誰か、誰でもいい、話しを……
暗闇、コワイ……
オレ、オマエ、マルカジリ……
……
…………
……………………
「……ター。マスター」
ハッ!? 声ガ、聞コエル!?
「あ、戻りましたかマスター」
戻ル? 戻ルッテドウイウ意味ダ?
僕は……ああ、そうだった。僕は暗闇に一人じゃない。
「あー、うん、おはよう?」
「ずっと起きてましたよね。三角座りでブツブツ何か言ってましたよ?」
「お兄ちゃんキモかった」
ドスッ。リーシャの言葉が胸に深く突き刺さる。
だってしょうがないじゃないか。暗闇に二時間だぞ。スマホも無いしソシャゲも出来なかったんだぞ。発狂するだろ、普通。
戻って来れただけマシだと思うぞ。
速攻神様にメール送信だ。精神的に死ぬわッ。
メールを終えると速攻お返事が。
―― ごめんごめん。次のメンテからは君と君が指定したメンバーを隔離空間に移動するようにしておくよ。そこで寛いでてくれ。あと、お詫びの品送っとく ――
な、なんて不義理設定。
謝り方が上から目線、だと!? クソ、このクソ運営めっ。
神様を罵りながらプレゼントを確認することにした。
まずは緊急メンテナンスのお詫びに召喚石×2000
メンテナンス延長のお詫びに召喚石×1000
ケチか!? 3000づつぐらい出せよっ!?
で、コレが精神的負担を掛けたことに対するお詫び?
戦闘サポートキャラ呼び出しチケット?
なんだこりゃ?
あー、三回、ランダムで強力なオリジナルの☆5キャラクターを呼び出して手伝ってもらえるのか。
三回あるみたいだし一回使ってみるか。
イベント内容を見ることなく適当に使用してみる。
検証だ検証。
チケット使って出現したのは……魔王グレヴィウスリーハだった。
自分の仲間にも魔王がいるので二体目の魔王様である。
彼女は召喚されたと同時に僕らをギロリと見つめ、周囲を見回す。
なんか、凄く攻撃的というか、自信溢れるしぐさがウチのリーハと段違いだ。
まさにラスボス感が漂っている。
「神と名乗る奴から我直々に指名された。貴様等の闘いを手伝え、とな」
待てよ、☆5のオリジナルキャラだっけ、つまり、リーハみたいなコピー体じゃなく、この世界に存在する本物の、魔王様!?
レベルを見れば90もある。
ああ、こりゃ本当にラスボスだわ。
「小僧、貴様が我が手を借りたいという者か? なぁに、今回は体験だ。その内敵対する者として相手の顔を見てやろうと思ってな。神の願いを聞き届けてやった」
「ああ、うん。穂高大介です。えーっとよろしくリーハさん」
「むぅ? リーハだと?」
あ、やべ、普通にリーハって言っちゃったよ。リーハ自体は親しみやすい魔王様だったからツイオリジナル魔王相手にも言ってしまった。ええい、ままよ。
「我に対して随分と気安いではないか小僧」
「そうかな? リーハ可愛らしいから略称そう呼びたいなって、ダメかな?」
「……」
目を見開き驚く魔王様。
しばし、考え、何かを操作する。
僕の目の前にフレンド登録申請画面が出現した。
「え?」
「さっさと申請しろ。気が変わらんうちにな」
魔王の機嫌が変わらないうちに慌てて了承する。
なんだかよくわからないけど、初めてのフレンド、出来ちゃいました。




