緊急メンテ
よし、こうなった原因を探そう。
一念発起した僕は皆と共に動き出すことに決めた。
今の僕はプレイヤーとしての力は無い。だから無数の街を調べようにも即座に別の街に移動する術は持っていないのだ。
石もないからガチャも出来ないし、どうすっかなぁ。
とにかく歩きでなんとかするしかなさそうだし、えーっと、誰かいい移動方法持ってない?
シュヴァイツァーとか居ればよかったんだけどアレもコピーだから居なくなっちまったんだよな。
勇者の町を出て歩きだす。
何処に向かえばいいんだろうか?
あ、待てよ。
「リーハ、もしかして第二形態になった後で僕らを乗せて運ぶとか、出来るのか?」
「ん? 龍珠さえあれば可能だが?」
「返したっけ龍珠?」
「うむ。戦闘が終わった後でな。まさか貴様が奪っていたとは思わなんだ。アレさえあればダイスケに勝っておったというのに」
なくてよかったよ。
ともかく、移動手段は手に入ったようだ。返しといてよかった。
龍珠を使い最終形態へと進化したリーハの両手に皆が乗って、ルーカたちの捜索に向かう。
上空から探すリーハだが、あの大人数が影も形もない。
流石に数時間経ってしまうとどこにいったかわからないな。
とりあえず、で見知った町に辿りついた僕らは、そういえばここに一匹オリジナルキャラ居たな。と思いだす。
ウッディとファラシオンを使ってそいつの回収に向かう。
そう、それは動くよ雪だるま君である。
ずーっと動けなかった彼も、一人きりだったと思うと放置する訳にも行かないと思ったのだ。
皆に見放される恐怖は、あまりにも辛い。彼もきっとそんな思いを味わった筈である。
筋肉祭りで護送される彼もきっと喜んでくれることだろう。
表情筋もない雪だるまなので喜怒哀楽はわからないけどね。
再びリーハに乗って僕らは移動する。
もしかしたら新規参入者たちが来た事でバグが生まれたんじゃないかなって始まりの街を目指すことにしたのだ。
結論から言えば、それは全くの間違いで、正解だった。
僕の考えは完全に間違っていたのだが、目的となる人物はそこに居たのだ。
とはいえ僕がソレを知っている訳もなく、始まりの街に戻ると複数のプレイヤーが慌ただしくなんかメール打ちまくってる姿が見えて、ダイスケに襲撃された、ダイスケに殺されたんだけどアイツ何者?
という不穏な会話がそこかしこで起こっていたのだ。
手短に居たプレイヤーに話を聞いてみる。
可愛らしい幼女体系の女性プレイヤーは凄く憤慨しながら教えてくれた。
魔神美味しいさんによれば、街を出てすぐの場所で待ち構えていた魔王5体の一団に襲われ、即死で死に戻りさせられたそうだ。
魔王5体。そしてプレイヤー名がダイスケ。
どう見ても僕だ。
でも僕はここにいる。
じゃあ、そのダイスケって、誰だ?
「あの、魔神美味しいさん、僕神様と連絡取りたいんですけど、今訳あって連絡取れないんです。メール、打ってくれませんか?」
「えー。まぁいいけど」
ちょっと面倒臭そうに言いながらも普通にメールを起動する女性。
「で? なんて打つの?」
「ダイスケより、僕のアカウント使えなくなったみたいなんだけどどうなってるの? と」
「ふむふむダイスケより……へ? え? あんたがダイスケ!?」
「えーっとちょっとそんな眼くじら立てないでください。僕もよく分かってないですから、多分バグじゃないかと」
「ってことは、あんたを怒るのも筋違いか」
ようやくメールを介してホイホイ君と連絡が出来た。
ホイホイ君も想定外だったようで、即座に緊急メンテナンスが行われる。
もともと緊急メンテは行われる予定だったみたいなんだけど、まだしばらく精査に時間を掛けるつもりだったようだ。
メンテナンスに伴い目の前に居た魔神美味しいさんや他のプレイヤーが世界からはじき出される。
残されたのは僕とこの世界にもともと居た者たち。そして……ダイスケ。
隔離世界に向かわせようとした神様だけど、ダイスケで登録されている人物が別人だと指摘されたことで隔離世界に向かわせるのは諦め、クローズワールド化することで一先ず隔離したようだ。
「さて、僕らはどうするべきかな?」
「とりあえずしばらく待つしか……」
「待たせたなッ」
誰かよくわからないマッチョなおじさんが現れた。
「俺はガイウス。新しきサポーターって奴だ」
なんかまた変なのやって来たんですけどーっ!?
「ほれ、新規登録してやるから名前を教えな」
「えっと、ダイスケ、っす」
「そりゃ駄目だ。既に登録されてる。別の名前を考えな」
あれ? おかしいな。僕の登録じゃなくて本当に新しく登録する感じになってるぞ?
「強くてニューゲーム、とか?」
「オリジナルキャラだが仲間がいるんだ。新しく始めてメールだけでも出来るようにしたらどうだ?」
「それもそうか。じゃあ真のダイスケで」
「分かった。お前の名は真のダイスケだな。よろしく頼む真のダイスケ。これから最強の肉体を目指し魔王を倒そう」
すでに、魔王倒してるんだけどね。しかも仲間になってるんだけどね。
そんな事を思いながらガイウスに同行する僕だった。