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確かに残った者

「シーク……レッ、ト?」


「はい、シークレットですよ?」


 なんでシークレットがここに?

 いや、違う。居てくれることは奇跡にも似た幸運だ。

 僕を認識してくれている。僕がダイスケだって理解してくれている。


「シークレットッ」


 僕は思わず飛び付いた。

 勢い余って押し倒してしまったけど、しっかり頭を支えて後頭部をぶつけないようにしておいた。

 ひゃわっと可愛い悲鳴を上げたシークレットの胸に埋もれ、僕は悲しみの全てを吐きだすように泣きだした。


「え? え? あの、ダイスケさん? も、もぅ……仕方ありませんね」


 驚いたシークレットだが、僕が泣きだしたことで何かあったと察してくれたようだ。

 仕方ないなぁ。と頭を撫でてくれるシークレットにしばし甘える。


「主ら、往来のド真ん中で何しとるんだ?」


 不意に、聞き覚えのある声が聞こえた。

 まさかっと顔を上げる。

 困惑した顔の魔王様が仁王立ちでそこにいた。


「ダイスケよ、なんかコピー共がダイスケが呼んでるとか言いながら町の外に出て行ったんだが、お前呼んだか?」


「リーハ……リーハッ!!」


「へ!? ひゃぅぅっ!?」


 コピーリーハたちが居なくなったことでリーハも一緒に居なくなったと思っていた。

 だからこそ、僕の前で僕を認識してくれていた魔王様に思わず飛び付く。

 全身が一瞬で硬直した魔王様は真っ赤になって、は、はなれぇろぉっと僕を引き剥がそうとしたが、力が全く入っていなかった。そのままふきゅぅと力尽きるようにその場に崩れ落ちる。


「何をやっているのですかシークレットさん」


「ち、違うんですゲリンデルさん、私も急に抱き付かれて、何か、あったみたいですけど……」


「ダイスケ、抱き付き魔?」


「ヘルファータぁぁぁ」


 リーハの後ろにヘルファータが居たので飛び付くように抱きつく。


「さすがにヘルファータ相手は犯罪臭しかしないのですが……」


「どうも心の余裕が無くなってるみたいですね。どうしたんでしょうか?」


 理由が分からないシークレットとゲリンデルが小首を傾げる。

 抱き付かれたヘルファータが顔を赤らめ戸惑いを見せ、周囲の人が兵士呼んで来いと叫び始めた頃、 続々と仲間が集まってくる。


「どうした主共、何かあったのか?」


「ダイスケさんが幼児退行起こしかけてます」


「とりあえず引き剥がして宿に戻ろう」


 ネビロヌの疑問にシークレットが返し、シンデルが指示を出してファラシオンとウッディが僕を引き剥がして無理矢理連行し始めた。

 他の皆も宿屋へと向かい、なんとか兵士が来る前に撤収することが出来た。


 宿屋へと戻り大部屋を借り受ける。

 が、お金がなかったので皆戸惑っていたのだが、ヒーロー君が騒ぎを聞きつけやって来て、お金を払って一緒に会議に参加することになった。

 宿屋の大広間に居残っていたメンバーが集う。


 コピーキャラは一人もいない。全てオリジナル。

 あるいは特殊召喚石でやってきたオリジナルメンバーだけである。

 魔王グレヴィウスリーハ、ゲリンデル、ヘルファータ。

 勇者ヒーロー、サクヤ、シークレット。

 サシャ×2、ヘスティカーナ、ネビロヌ、ミケ、トウドウ、ウッディ、ファラシオン。

 村人、アッキス、若ケンウッド、セルジュ、家族の勇者タダシ、クレイズ。


 ……あれ? タダシさんがいる? この人確かコピーだよな?

 なんで居るの?

 あの、タダシさん、貴方はダイスケ探しに行かなくていいの?


「確かに、ダイスケ君を探した方が良い気はするのですが、私には守るべき娘がここにいますので」


 そういえばシークレットを娘設定してたな。

 え? ということはタダシさんはバグで何処ぞにダイスケ探しに行くよりもプレイヤー裏切ってでも娘を守るってこと!?

 いや、むしろ今回はありがとう。残ってくれたこと、ありがたく思います。


「ようやく落ち着いたよ。御免皆。迷惑掛けた」


「いいえ。でも、あんなに取り乱すなんて何があったんです?」


「そういえばダイスケからプレイヤー特有の感覚を感じんな?」


「どうもバグかなんかだろうね。僕、垢BAN喰らった状態になってるんだ。神様に問おうにもメール画面開くシステムが無くなってるから使えない」


「では神にも話が出来ない状態なのか。さすがこの世界の神、クソだな」


「もぅリーハさんそういうこと言っちゃダメですよ」


「しかしなシークレットよ。さすがに致命的バグを放置してワールド解放したのだろう。これ、ヤバくないか?」


「あ、そういえば神様が大量に来るんでしたっけ。どうなるんでしょう?」


「オリジナルキャラはそのプレイヤーごとに出現させるそうだよ。その辺りはどうでもいいんだ。それよりもルーカ達だよ。あいつら一体何処に向かったんだろう?」


 僕の疑問に皆して小首を傾げる。


「あの、そろそろ俺戻ってもいいっすかね?」


 クレイズ君、空気読んでよね?

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