運命の選択
「がはっ」
第二形態だったせいで更なる変化が起きる訳もなく、魔王様は敗北した。
再び元のリーハに戻った少女が血を吐き散らしてその場に膝を付く。
背後にいたドラゴンは目がバッテンマークになって伸びているようだ。
「馬鹿な、なぜだ。我が力を持ってしても、勝てんというのか? 龍珠だぞ、龍珠を……あれ? なぜ我持っとらんの」
「え? ごめん、その珠僕が回収してるけど?」
「ダイスケぇぇぇぇぇぇ――――っ!?」
がふっと血を吐いてそのまま倒れるリーハ。
死ぬだろうけど直前に戻って仲間のままエピローグを……って、まだ死んでないなリーハ。
「えーっと、リーハ、まだ生きてる感じ?」
「多分次の話まで持つぞ我」
肩で息しながら辛そうに告げるリーハ。メタ発言は止めてください。
というか、次の話まで持つのか、じゃあ次の……あれ? エピローグ?
「イリス、エピローグで死ぬってなるともしかして」
「ええ。今までのような回避法が使えそうにないわね」
―― ついに来てしまったねダイスケ君 ――
これは、視界の片隅に出現した白い文字。神か!?
―― 予想の通り、魔王の死はエピローグに確定するよ。残念だったね ――
え? 待って。それじゃ、リーハ生き返せない?
―― そもそもオリジナルキャラをバグを利用して手に入れるって言うのが間違っているのさ。御蔭で他の神用にオリジナルキャラ複製しなきゃいけなくなったじゃないか ――
それ、本当にオリジナルと呼んでいいのか? もはやコピーじゃね?
―― さて、今回僕と駄女神で勝負をしているんだ。君が魔王を生還させるか否か ――
ん、っていうことは、リーハを生存させる方法はあるのか。
―― ああ、当然存在するよ。駄女神が特定の行動を起こすと生存するようにしたらしい。エピローグをタップすると魔王の体力ゲージが減り始める。100秒で全損してそこで終わりだ。それまでに生存させなきゃ、ね。後は分かるね? 肉体は残るけどヘルファータの復活じゃ復活しないように設定している。他のキャラの回復魔法でも回復しないからね。あ、でもネビロヌなら死者として復活させられるようにしといたよ。魔王ゾンビ、最高じゃないか! ナイチンゲルダとかのスキルでゾンビ状態は回復しないように設定してるからねー、ゾンビ化した時点で終わりだよー ――
お前の趣味をこっちに押しつけんな。
しかし、駄女神が何かしらの方法で生還させるプログラムを打ち込んだそうだ。
その特定行動さえすればリーハは生き返るらしい。
でも、駄女神だぞ、アイツ絶対ろくな方法考えないだろ。
エピローグでリーハが死亡する。
なんとかならないか?
ヘルファータの必殺なら死者も生き返るらしいんだけど、このままだと……ルーカ、イリス、駄女神ならこんな行動を起こすことで救えるようにするなんて行動わかるか?
「分かる訳ないでしょ、イカレた神の思考回路なんて」
「んー、駄女神がお勧めしそうなことかぁ……」
まぁ、二人に聞いたって分かる訳ないかぁ。
―― さて、このまま考えられても困るんで、エピローグ始めるよ ――
へ? あ、ちょ、待って、まだ何も考えれてないんだけどッ!?
リーハの頭上にHPバーが出現し残り100秒から減り始める。
「理不尽だわ。やはり神は理不尽な存在ね」
「嘘だろ。このままじゃリーハが死んじまう」
「と、とにかく、駄女神だってダイスケの現状とか知ってる筈だし、持ちモノ使えば治るみたいなの無いの!?」
「こけしでなんとか治るのか!?」
「治る! 少なくとも私はッ」
「黙れこけし娘ッ」
寝ぼけたことを告げたルーカを邪険に扱っているうちにリーハ生存時間が50秒を切ってしまう。
もう1分もない。
クソ、いきなり時間制限付きとか勘弁してくれよ。
何か、何かないか、リーハ、このまま見殺しになんてできないよッ。
「ダイスケさん……リーハさん、助けてあげてください」
シークレット。分かってるよ、でも……
ん? シークレット?
あれ? なんだ、今、何か閃きが……
なんだ? 僕は何を見落としている?
シークレット関連、思い出せ、思い出せ思い出せッ……
……あっ。
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神は慌てふためくダイスケを見て勝利を確信していた。
駄女神との賭けは私の勝ちだ。
魔王はこのまま滅びが確定する。
今この状態から駄女神が求めた劇的な生還劇が行われる訳がない。
奴がプログラムしたのは魔王と口付けを交わすこと。
シークレットという彼女がいるダイスケが魔王に口付けする訳がないのだ。
きっと脳裏に掠めすらしないだろう。
さぁ、もう終わりだよダイスケ、魔王はゾンビ化して……ん? え? ちょっとダイスケさん、何してんの、え? それは……馬鹿な!? 奇跡の水、だとぉッ!!?
ゴム人間と初めて対応した雷の神、ハラキリはスポーツではないことを知らされた異星人、あるいは記憶喪失の三眼娘たちが起こした騒動を見たナパ○バさん。
見開き1ページを使用する勢いの驚き顔で愕然とする神の姿が、そこにはあった。