その奥の手はすでになかった
大空より炎の弾丸が迫り来る。
焦る魔王様はちょ、まっ、と何かを喋ろうとしたのだけれど、すぐさま炎の中に消えて行った。
HPバーが5分の1位減ったがまだまだ元気だ。
流石ラスボス。でも、同じレベルのリーハの攻撃なのに、あ、違う、こいつ一番レベル低いリーハ5号の一撃だった。
次のダメージで5分の1+ちょっと位削れる。
さらに一撃。
魔王様涙目だ。
もうやめてっと声が聞こえてきそうである。
というか、泣いちゃうんじゃないのか? なんか弱い者イジメしてる気がしてきたぞ。
四度目の攻撃で僕と視線があった。やっぱ今回の闘い無し。みたいな顔をしてたけど、自分が言っちゃったことだからね。
最後のリーハ1号の必殺で、魔王様のHPが全損した。
そして、リーハが第二形態へと移行する。
許さんぞーっとドラゴン形態になったリーハは既に必殺ゲージMaxだ。
遠慮なく涙目で必殺を打ち放つ。星屑達乃虐殺EXによりコピー魔王達が一瞬で全損した。
……え? 攻撃力高くね?
魔王特性でも持ってんのか!?
勝利出来たと安堵の息を吐くリーハ。
その目の前で、五体の魔王が第二形態へと移行する。
さらにその全員の必殺ゲージがMax状態に。
「「「「「クハハハハハハハ!! やらせると思うか! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺EX!!」」」」」
「ひ、卑怯だぞぉぉぉぉぉ――――ッ!!」
折角倒したと思った魔王様。自分と同じく第二形態に移行したことでステータスが爆増した五体の魔王による再必殺。
さっきと同じようにダメージ喰らいまくって息絶えていた。
うむ、完勝、かな。一人死んでるけど。
「ぐぬぬ、卑怯者。ダイスケは卑怯だ。我が5体とかこっち我一人だぞ勝てるわけがあるかーッ!!」
ごもっともである。でも僕がそれに返答する理由がない。
「ええいこうなったら。見せてやろう」
戦闘終了と共に懐に手をやるリーハ。何かを取り出す動作をして、取り出したものを真上に掲げた。
そこで微動だにしなくなる。
うん、分かった、こっから10話目になるんだね。
んじゃとりあえず、タップ。
「ふははははは、これは我が力を封じし龍珠である。これを使用せし我が力、とくと味わうがいいわ!!」
……あの、リーハ? 掌の上にはなんにも存在してないよ。
あ、そうだった。僕が回収してあったんだ。つまり、リーハの強化は行われない?
「ここまで、かしらね」
「え?」
ん、どうし……ヒーローくんっ!
何か声が聞こえたと振り向けば、背後でヒーロー君がどぅと倒れる。
隠されたナイフを背中から突き刺され、どさりと崩れ落ちた所だった。
そして、面倒臭そうに髪を掻き上げながらつかつかと僕らから去ってリーハの傍に辿りつく女が一人。
「リーハンッ!? 何をっ!?」
悲痛な顔でサクヤが叫ぶ。
それに、リーハンははっと鼻で笑って返した。
「幾らヒーローが強くてもさぁ、魔王が強化されちゃったら敵う訳ないじゃん。つーわけでぇ、アタシこっち付くんで」
「……リーハン!」
これに反応したのはリベリオ。
凄い形相でリーハンに走り寄ると、本気なのか!? と今更ながら問いただす。いや、本気じゃなかったらヒーロー君刺さないだろ。レスティス呼び出したからほら、回復してあげてレスティス。
「全く仕方無い奴だなお前は。……すまんヒーロー。俺はリーハンと共に生きる」
リベリオも裏切った。
衝撃的事実に愕然とするサクヤ。
うん、絶体絶命だね。でも、だからこそ、古代勇者がサクヤを守るようにリーハンたちに対峙する。
「案ずるな今代勇者の妻よ」
「へ、つ、妻……!?」
「お前達を守ろう。この古代勇者シンデル、命がけで守りきると誓う!」
うん、開幕必殺は君が守りきるね、文字通り命がけで。
「なんかよくわからんが、我が力を存分に喰らうが良い!!」
魔王様、空気読もうぜ?
周囲を気にせずエア龍珠を使用した魔王様。
ふはははは、と第二形態に移行してギャオォと咆え猛る。
戦闘開始である。
ラスボス戦はなんとリーハンとリベリオも敵として参戦するようだ。
馬鹿だなぁこの二人。龍珠すら使ってないんだよリーハ。
強化されてないのにもう一度闘うとか。とりあえずさっきと同じパーティーで、戦闘開始。
「クハハハハハハハ!! やらせると思うか! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺EX!!」
開幕必殺発動。リーハの一撃でシンデルがまた死んでる状態に移行する。
そして僕らのターンで魔王必殺5連続。
そして消え去るリーハンとリベリオ。
流石第二形態だからだろうか? リーハはHPを半分残して耐えきった。
必殺ゲージが溜まってしまっていたので必殺を再度行う。
コピーリーハ達が死亡し、第二形態へ。
そして必殺オンパレード。
こうして強化したらしいリーハはその実力を存分に発揮する間もなく滅びたのであった。