サポートキャラが役立たないから新しいサポートキャラ頼んでみた
「ん……」
朝日が差し込む。
眩しさに目が覚めたらしい。
寝ぼけ眼をうっすら開いて起き上がる。
目元を擦りふわぁっと欠伸しながら背伸びする。
ベッドから這いだしうーんと背伸び。そのままベッドに背中から倒れ込む。
ああ、二度寝したい。
「ダイスケさん、起きたなら洗面台で顔を洗ってきてください」
「うーい」
少し冷たい声が聞こえた。
はて、こんな声の人いたかいな?
そんな疑問を浮かべながら起き上がると、ふらふらしながら洗面台へ。
顔を洗ってさっぱりすると、一度部屋へと戻る。
見知らぬ少女が椅子に座って本を読んでいた。
背丈は肘から先の腕位の大きさ。ルーカと同じくらいだ。
背中には羽が生えており、冷めた視線をメガネで隠した青い髪の少女である。
当然ながら僕にこんな知り合いはいない。
「誰?」
「サポートキャラです。前任が役立たないと聞きましたので神様から使わされました」
「ああ、ルーカの代わりか。お名前聞いても?」
「イリスと、お呼びください」
ちなみに、だ。イリス、一度も僕に視線を合わすことなく告げたんだ。
これはこれでちょっと微妙そうなサポーターだぞ?
「えーっと、さっそくだけど、サポーターって何するの?」
「基本は説明ですね。それ以外は自由と言われています。さっさと着替えてください。皆さん居間で待ってますよ」
凄く冷たい印象だ。
着替えろと言われたけど服、コレしか持ってないんだよね。
だから着替える必要は無いんだ。むしろ僕の服装とか全く見てないよね?
「用意は出来てるよ」
「おや、それはパジャマじゃなくて普段着でしたか、恥ずかし……おっと失礼」
マジ失礼だなこのサポーター。なんか僕こいつ嫌いかも。
ぱたんと本を閉じてふよふよ移動を始めたイリス。
僕の頭の上にやってくると、ぺたぁっと寝そべるようにくっつく。そして本読みを再開する。
あ、あの、胸が、胸がダイレクトに頭に……畜生、僕こいつ好きかも。
「さぁ、皆さんの元へ向いましょう」
なんだこれ?
絶対いやいややってるだろ。
なんかこう、やり場のない怒りがふつふつと……
「おお、主様よ、随分眠っていたな」
リーハとサクヤが両手を組んでぐぎぎぎと互いを押し合いながら振り向く。
お前らホント仲悪いな。
まぁ、魔王と巫女さんだし殺し合いに発展しないだけマシか。
「おはよう二人とも。他のメンバーもここに居るのか」
見回す僕は、右側からレスティス、シオ、リーシャ、ダンディ、村人Aの群れとそれに混じってるマリクを見付ける。そして最後に、テーブルの上で憮然と胡坐をかいているルーカ。なんか憎しみを込めた目で僕を睨んでいる。
「おはようルーカ」
「ええ、おはよう。で、何か言うことは無いの?」
「うん? えーっと眠いから二度寝しちゃダメかな」
あ、こいつ舌打ちしやがった。なんだよルーカの奴。
「私、これから先謝るまでサポートしませんからっ」
と、何か酷いこと告げてそのままふよふよシオの頭の上に飛んで行く。
お前も頭の上に居座るのか、まぁいいけど。
とりあえず三話、の前にステータス底上げだな。手に入った強化の種を使おう。
とりあえずサクヤを底上げは確定だな。Lvを10にしてふぅっと息を吐く。
残念ながら初級編で貰える強化の種は少ないようだ。
しかし中級に向かうにはレベルが足りない。
もどかしいところである。
デイリーのプレゼントを貰ってメイン画面に。
「さって、次は3話だな。3話で気を付けることってあるか?」
と、何気なくサポーターへと尋ねる。
「自分で考えなさいよ」
ルーカは本格的にサポーターする気ないようだ。
全くコケシ程度でなんだその態度。
「第3話ですね。今のレベルなら問題は無いでしょう。WAVEは3つですのでペース配分に気を付けてください」
返答は僕の頭の上から聞こえた。
ルーカが役に立たないので口を出して来たようだ。
つっけんどんだけどイリスはしっかり役目を果たしてくれるらしい。
うん、ルーカにメガネかけただけの存在とか思ってごめん。普通にルーカより役に立つや。
「って、ちょっと!?」
そして今更ながら気付いたルーカ。僕の頭の上を指差し震えている。
「だ、ダイスケ、ソイツ、誰?」
「ん? ああ。サポートキャラのイリスだ」
「よろしく、先輩」
本から視線を外すことなく告げるイリスに、口パク状態のルーカは何も言えないで居る。
「な、な、な……」
「よし、んじゃ第3話選択するかー」
「ちょっと、待てぇ――――ッ!!」
「なんだよルーカ」
「なんで? ねぇなんで!? サポートキャラって私だよね?」
「いや、だってサポーターなのにデイリーミッション時来なかったじゃん。ギリギリ勝てたから良かったけどサポートしてほしい時に居ないって、ダメだろ」
「いや、でも、ほら、サポーターだし、私を大事に」
「まぁ、気にすんな。どんだけダメダメでも削除したりとかはないから。サポート業務もほら、神様にどうしたらいいか尋ねたら新しく来てくれたんだ。これからよろしくイリス」
「ええ。面倒だけど仕事はきちんとするわ。ねぇ、せ・ん・ぱ・い」
その時、ルーカだけは見た。イリスの顔が悪魔のように微笑むのを。




