勇者の剣を手に入れた
「ゆ、優勝は、魔王様と犬チームッ!!」
観客席から絶望の声が響き渡る。
優勝すると思っていた筈の勇者チームが敗北しちゃったもんなー。
まさかコピーリーハが勝利してしまうとは。
ヒーロー君達がすごく悔しそうにしている。
折角オリジナル魔王倒せたのにね。
シークレットの作戦勝ちだったな。
普通のソシャゲならこんなことにはならなかっただろうけど、現実になってるから遮蔽物があった分ダメージが減ったようだ。
まぁ、その遮蔽物が魔王様の身体って言うのもおかしな話しではあるけれど。
一応勇者に勝った御蔭かそのことに付いて不満を言うようなリーハではなかった。
むしろ得意満面で見たかオリジナル。貴様はメインメンバーを揃えておいて負けたが我は勝ち残ったのだぞ!! やーいやーい。とオリジナル魔王様相手に子供の喧嘩をしていらっしゃる。
オリジナル魔王様のほおがぴくついてるじゃないか。
これ魔王だらけの格闘大会が始まっちゃうんじゃね?
「と、とりあえず優勝した魔王と犬チームには優勝賞品である勇者の剣を送るんだゼ」
司会者さんが困った顔をしながらも勇者の剣を魔王様に贈呈。
本来勇者が手にすることで魔王への対抗戦力となるはずなのに、魔王に剣。まさに鬼に金棒ってところかな。
どうすんだこれ? まぁ貰えるモノは貰うけど。折角だし村人君にでも持たしておいてあげよう。
コピーリーハは受け取った剣を鞘から引き抜き、天高く掲げる。
それはまさに魔王討伐に決起する勇者の如く。皆に見えるように剣を掲げていた。
日光に当り煌めく勇者の剣。
流石にこれには観客達も溜息を漏らす。
なんかリーハさんが普通に勇者っぽく見えてしまったよ。
他のコピーリーハたちが凄く悔しそうにしている。
「ふ、ふふ、ははははは! 我が威光を見よ! 人間共よ! 勇者の剣は我が手に有りぃぃぃ!!」
リーハさん調子乗ってます。
でもなんか小さい子が背伸びしてるみたいで可愛い。
勇者の剣を仕舞って表彰式を終えたコピーリーハは、意気揚々、僕らの元へと戻ってくる。
鼻息荒く、というか鼻の穴膨らませる勢いでむふふむふふと含み笑い。
オリジナルリーハが凄くいらいらしていらっしゃる。誰かあれなだめといてくれません?
コピーリーハ1号は僕の前にやってくると、両手を腰に当てて精一杯胸を張ると、どうだっと言わんばかりに得意げな顔をする。
「ぬはは、見たかダイスケ。我は勇者に勝ったぞ! 魔王オリジナルが負けた勇者チームを我がチームが倒したのだ! 凄かろう? 凄かろう。むしろ我こそがオリジナルの魔王でよいと思わんか? なぁ、なぁっ」
「ええい、貴様なんぞコピーで充分だァ!!」
あ。オリジナル魔王が切れた。
「あ、こら負け犬魔王何をする!?」
「ええい。それは我こそが相応しい。貴様が持って良いモノではないわっ!!」
あー、よかった。ただのキャットファイトだ。
勇者の剣を奪い合う魔王二人。
よし、今のうちに剣を、とばかりに他の魔王達まで参戦。六人の魔王による勇者の剣争奪戦が始まった。
「うわー、なんだこれ?」
「あ、ヒーロー君」
「やぁダイスケ」
戦闘が終わったため、僕らの元へやってくるヒーロー君一同。
助っ人の二人とは既に別れたようだ。
四人パーティーになった彼らはしばらくはこの国に居るらしい。
ちょっと落ち着いたら早速本編進めてみるか。ゲリンデルさんが死ぬのかどうかも気になるし。
それに……しばらくはコピーリーハが天狗になってるだろうから事あるごとにキャットファイトありそうだし。
あ、剣が……
ぽーんと飛んで来た剣を村人君を呼び寄せ拾って貰う。
これどうしましょうって? 君が持っとけばいいよ。勇者の剣を持つ村人、うん、このギャップ面白い。
よし、これからこいつのレベル上げまくって魔王に打ち勝てるようにやってみよう。まずはレベル100まで上げようか。
「あれ? そう言えば神様、皆の攻撃力とかって上がる方法ってレベル以外に何かあったっけ?」
―― 今更だね。とりあえず武器装備すれば攻撃力上がるよ。武器は強化出来るよ? ――
おお、武器のレベルとか攻撃力上げることでキャラクターの攻撃とかを一気に底上げ出来る奴だね。よし、んじゃ手始めに勇者の剣を強化してみようか。
えーっとどうすれば、というか強化素材って何処で手に入るの?
「あ、ダイスケ、強化素材ならアイテムに入ってるわよ。ちゃんと今までのイベントこなしてる間に集めてあったみたい」
そうなのか、アイテム入手確認とかしてないから全く気づかなかったわ。
というかどういうふうに調べるんだ?
あ、武器持ってステータス確認すればいいのか。わかりづらっ。せめてチュートリアルでこれやっときなよ。聞かれてから教えられてもこの機能わからないって。