表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/248

決勝戦波乱を呼ぶコピー魔王VS最強勇者

「ヒィハァァァッ!! 見てるか皆ーっ。なんと我らが勇者ヒーローがなんと、なんとぉっ!! 試合とはいえあの魔王を打ち破ってしまったぞーっ!!」


 魔王を退治してしまったヒーロー君の株が爆上がりである。

 しかも、決勝戦で当るのはコピーの魔王。

 オリジナル魔王を倒したヒーロー君の敵ではなかった。


 そりゃ司会者さんもテンション上がるよね。もうヒーロー君の優勝決まったようなもんだし。

 むしろ最後の魔王もヒーローに倒されると期待して皆の期待度もMaxである。

 こりゃヒーロー君達負けれんわ。


 リーハコピー一号、シークレット、サクヤ、サシャ、サシャ、ケンウッドコピーと対戦するのは勇者ヒーロー、サクヤオリジナル、リーハン、リベリオ、ダイダー、マニー・アワセである。

 正直ヒーロー君の予備人員が酷過ぎる。代打君と間に合わせ君である。


「ではさくさく倒していただこう、決勝戦、開始ィィィィヤァ!!」


「行くぜ、秘奥義魔王消滅剣!!」


 勇者ヒーロー、調子に乗って戦闘開始とともに必殺攻撃。

 来ると分かっていたせいか、シークレットとサシャ二人が魔王の後ろに隠れる。

 それ意味あるの?


 あ、いや、意味はあったっぽい。

 大ダメージこそ喰らったモノの三人とも一割程HPが残っている。

 リーハコピーの影に隠れた御蔭でダメージが少し少なくなったようだ。


 HP全損したのはリーハとサクヤ。

 双方第二形態へと移行する。

 お爺ちゃんはなんときゅぴんして避けてしまったらしい。


「畳みかけるぜリーハン!」


 リベリオ達が攻撃のために突撃する。

 襲いかかったのは? 盾役として一番前に居たケンウッドお爺ちゃんだ。

 リーハン、リベリオ、ダイダー、マニー・アワセの連続攻撃。

 その度に僕の視界に映るのはお爺ちゃんの眉毛に隠れた目が一瞬キュピンする姿。

 ぶれるように攻撃を避けまくるよぼよぼのおじいちゃんに僕は思わず胸を熱くする。

 頑張りすぎだよ、お爺ちゃん。


 魔王すら殺す必殺技を喰らったうえに敵の攻撃ターンまで受けて全員生還しちゃったよ。

 しかも大ダメージに見合った必殺ゲージが溜まっている。

 つまり……


「「血桜舞夜ちざくらまいや」」


 サシャ二人が同時に必殺を使用する。

 単体攻撃ながら防御無視ダメージに加えて与えたダメージ分回復しちゃう凶悪技である。

 サシャ二人が同時に走りだす。

 なぜか視界に月明かりのエフェクト。月下の暗闇に二人の影が踊り勇者とサクヤオリジナルに襲いかかった。


 無数の剣閃、舞い散る血飛沫。そして意味不明に出現する桜並木から桜が舞い散り倒れる二人を覆い隠す。

 月明かりに照らされ影が露わに。血塗れのサシャたちが手の甲に着いた血をチロリと舐める。その姿が妙に妖艶に映った。


 って、なんだ今のエフェクトは!?

 エフェクト終了とともに視界が戻る。

 試合会場では超ダメージを喰らったサクヤが第二形態に移行しており、ヒーロー君は三割くらいのHPを残している。

 しかもサシャ二人のHPが回復したので勇者君の必殺が事実上キャンセルされたような状態になってしまった。


「マズい、このままじゃ……サクヤ、必殺を」


「クハハハハハハハ!! やらせると思うか! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺EXスターダストディザスタージエンド!!」


 けれど、サクヤオリジナルが行動するより早く、コピーリーハが必殺を使った。

 はっと見上げる勇者たちの頭上に、赤き連弾が迫り来る。


「う、うわああああああああああああああ!!?」


 あー、こりゃひでぇ。

 しかもなんとか生き残った勇者パーティーにコピーサクヤの蟒流水撃。

 これはもう番狂わせじゃね?

 必殺の連撃に司会者さんも唖然と見送ってるし。


「まだだ……まだ、死ねないッ」


 しぶとい、さすが勇者。

 コンマ一ドット残ったHPでなんとか立ち上がったのは勇者ヒーロー。

 他のメンバーは今ので倒れてしまったようだ。


貴方の罪を数えましょエクスキュート・メイデン


 ちょ、シークレット、流石にそれはオーバーキル……っていうか勇者にやる技じゃないよね!?

 必死に立ち上がったヒーロー君に拷問という名の悪夢が襲いかかる。

 これは酷い。そしてこれぞまさに魔王の所業。

 倒れかけた勇者に対する仕打ちじゃないよね!?


 どさり、ボロクズとなった勇者が会場に伏した。

 しんと静まった静寂の中、司会者さんがおそるおそる手をあげる。

 が、倒れた筈の勇者が消えてない。


 ゆっくりと、勇者が立ち上がる。

 剣を支えに、震えて力の入らない身体を必死に起こす。

 誰かが呟いた。負けるな、ヒーローっと。

 誰かが告げた。立ち上がれ、ヒーローと。

 誰かが叫んだ。がんばれ、ヒーローと。


 多くの声援を受けて勇者は立ち上がる。

 まだ負けられない。

 例え仲間が皆倒れようとも、自分一人になろうとも。

 宿敵たる魔王を目の前にして倒れるなどありえない。


 必死に睨みつける視線を前に向けたその瞬間、目の前に映ったのは一人の老人。

 魔王が居ると思っていた勇者は一瞬目を見開き呆気にとられる。

 そんな勇者に向けて……


「ほい」


 ぽこんっと杖で叩くケンウッドおじいちゃん。


「ぐはっ!?」


 ガッツで生存したためHP1しかなかった勇者は頭に杖の一撃をくらって倒れた。

 戦闘中に死亡したためその体が消えて行く。

 声援がぴたりと止まる。

 もはや誰も何も言える雰囲気じゃなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ