準決勝戦開始
「さぁ、準決勝戦1試合目は、全員勇者チーム対魔王様と犬チームだぁぁぁ!!」
勇者ピン・チー、勇者マケスギ、勇者ボロマケー、勇者ジバーク、勇者チョロスケ、勇者モーダメーの面々は、連続しての勝利に浮かれ気味である。
まぁ、ここまで魔王二体も撃退した実力派と言われているから天狗になってるんだろう。
実際には第一試合裏切りで魔王が死に、第二試合では毒ガスに耐えられなくて自ら脱走したことで勝利が転がり込んだだけなのだが、彼らが勘違いするには充分過ぎた。
魔王なんか目じゃねーぜ。そんな雰囲気の彼らが相対するのは、リーハコピー一号、シークレット、サクヤ、サシャ、サシャ、ケンウッドコピーというほぼメインメンバーだ。
実力者が多いせいでサブメンバー扱いになってるけどね。
「試合、開始ィッ」
「「んじゃ、いっくよー」」
勇者たちが動き出したその刹那、サシャによるスラッシュブラッド二連撃。
一回でHP半分を失った勇者たちは二人目のサシャが攻撃した瞬間HP全損で退場した。
「って、えええええ!? な、なんとここまで魔王二体を倒した実力者と思われた全員勇者チーム、まさかの二撃で全滅だァ――――!?」
想定外過ぎるだろ。これがサシャたちのいつもの攻撃なんだぜ?
「なんと、これで魔王が準決勝以上に二人も居残り、勇者はたった1チームになってしまったぞ!? どうする勇者ヒーロー。勇者たちの矜持は、誇りは、意地は、君達の頑張りに掛かっているぞーっ!!」
そして湧き起こるヒーローコール。
「満を持して登場だ――――ッ!!」
「勇者ヒーロー!」
歓声が湧き上がり、ヒーロー、ヒーローと皆が盛大に名を告げる。
何か知らないけど滅茶苦茶ヒーロー君の株が上がってるぞ!? ってか誰だ、今ロリコンヒーローとか言ったぞ!?
そのせいでヒーローコールがローリーコールになっちゃったじゃないか。
凄くヒーロー君が顔真っ赤にして震え始めた。
可哀想に。
「そして、対するはァ!! なんとこれぞ本家本元大魔王、魔王グレヴィウスリーハ率いる魔王と仲間達チームだァァァ!!」
控室から現れる魔王様。
観客からは帰れコール。
いや、違う、ローリーコールが再発したぞ!? 魔王様が我はロリではなーい。とか顔を真っ赤にして怒ってやがる。
ちょっと可愛い。あ、こらコピーリーハども、お前らまで顔を赤くして怒ってないで、ほら、どぅどぅ。押さえて押さえて。
魔王達を押さえていると、ついに戦闘が開始された。
「クハハハハハハハ!! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺!!」
「行くぜ、秘奥義魔王消滅剣!!」
ちょぉぉ!? 両方開幕必殺やりやがった!?
魔王の必殺で勇者以外がほぼ壊滅。サクヤさんが第二形態になる。
ほぼ同時に、魔王チームは魔王が第二形態に。
他のメンバー? まさかの壊滅。今回ケンウッドのキュピンが発動しませんでした。
「お、おのれ勇者めぇぇぇ!!」
「くそ、これが魔王の実力か……」
死に体の勇者ヒーロー。それでもガッツが発動したらしくHP1だけを残して立ち上がる。
「うおぉぉぉ!」
ヒーロー君のスキル連続斬。
リーハ第二形態のHPを半分以上削り取る。というか、かなり少なくなった。
魔王様の攻撃、火炎ブレスでヒーロー君を撃破。
が、その瞬間、唯一残っていたサクヤ第二形態の蟒水流撃がリーハに襲いかかった。
あ、HP全損した。
「ば、馬鹿な!? この我が、魔王だぞ? この我が、滅……びる?」
まさかの結末に僕らはただただ唖然とするしかなかった。
運が良い。そう、これは運が良かった結末だ。
魔王が生き残っていたせいでタダシさんの必殺が発動仕切らなかったせいもある。致命の一撃は第二形態に移行することでリセットされてしまったのだ。
守るべき相手が傷付いてないということになってしまい、タダシさんの本領が発揮されず消滅したようだ。
せめて絶対防御掛けとけばまだ勝利の可能性があったのに。
あとケンウッドが避けなかったのが痛い。
そしてセフィーリアさん。嫌にあっさり消滅したな。普段は殺そうとしても死ななそうだったのに。
「ゆ、勇者が勝ったあぁぁぁぁぁぁッ!!」
司会者さんもびっくりの結果である。
「しょ、勝者勇者ヒーローチーム!! やりました、やりましたッ!! 魔王を破っての決勝戦進出です。凄い、凄い快挙だ!! 我らがヒーローがやりました!! 魔王をついに倒したのです!!」
「馬鹿な!? こんなはずは……やり直し、やり直しを要求する! セフィーリア、なに簡単に死んでおる!? ケンウッドも、あれ位避けんか!」
「陛下……お見苦しい」
慌てふためく魔王を見てハンカチ使ってさめざめと泣く真似をするゲリンデル。あんたも大概上司に酷いな。