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こいつが本当の勇者様

 いい事をした。

 僕らは満足しながら教会を後にする。

 で、結局教会って何しに来たんだっけ?


 ゲリンデルが行きたいっていうから行っただけか。ならもう用は無いな。

 次は何処行こう?

 バグを探しながら色々と見て回る。


 やっぱりさっき時間を掛け過ぎたせいでバグらしいバグが見当たらない。

 勇者共の乱闘さえなければ……

 おのれ勇者、我が道を阻む愚か者共め!


「居た! こいつだ!」


 なんだ?

 現れたのは四人組の男女。

 駆け付けると同時にリーハを見て足を止め、その場で抜剣。どう見ても勇者共の仲間だろう。


「うーん、イベントって訳じゃないみたいだけど戦闘はできるっぽいな」


「では我が相手すればよいのか?」


「いや、なんかイラつくし、相手したらどんどん勇者来そうだし、ここは僕に任せてくれリーハ」


「む、いや、しかし……」


 別に闘うくらい気にしないぞ? と告げようとしたらしいリーハ。何故か僕の横顔を見て押し黙る。


「し、仕方ないな。お前に任せる……」


「ふふ、どうしました陛下、顔が赤いですよ」


「だ、黙れゲリンデル。我は怒っておるだけだ」


「へー」


 僕に邪魔されたから怒っちゃったか、悪いことしたな。

 でも、散歩中に何度もからまれるのは嫌だからな。

 話し合いで解決できるならそれに越したことは無い。


「あのー、何か御用ですか?」


「何か、だと!? この国に魔王を連れ込んでおいてよく言えるな!」


「魔王? 何言ってるんですか。この子はリーハ。僕の知り合いですよ」


「な、いや、そいつは魔王だ。間違いないんだ。だから……」


「なぜ魔王だと分かるんですか?」


「それは、俺が勇者だからだ。俺は勇者ヒーロー、君は騙されてるんだ、だから……」


「僕としてはいきなり道を塞いで俺は勇者だからお前を魔王認定して倒す、とか言って来る気違いにしか見えません。衛兵さーん、なんか突然襲いかかって来て殺そうとする自称勇者がいるんですけどーっ」


 近くに兵士さんを見付けたので大声で呼ぶ。

 なんだなんだ? と寄って来た兵士さんに事情を説明する。

 魔王似だからって理由で襲われていると告げると勇者が連行されて行った。


「馬鹿な!? 待ってくれ、あいつは魔王なんだ。倒さなければッ」


 兵士二人に腕を持たれて引きずられていく勇者君。物凄い暴れているせいで周囲の人々がなんだんなんだと犯罪者見付けたみたいな目で見られてるんだけど、大丈夫か?


「あのー、貴方達はどうします?」


 勇者と一緒にいたお兄さんとお姉さんに尋ね……


「あれ? サクヤさんじゃん」


「え? はい、私はサクヤですが?」


 蛇巫女サクヤのオリジナルがここに居た。

 確か彼女って勇者パーティーに所属してたんだっけ。

 あれ、ってことは……今のがマジで正当な勇者だったのか!?

 やべぇ、勇者を牢屋送りしちゃったんだけど、どうしよう……


「どうしたダイスケ?」


「いや、多分アレ、マジで一番有力な勇者。悪いことしちゃったかも」


「えー。いや、貴様がやったのだろう?」


「そうだけど、サクヤさんがいるパーティーだったとは、あ、サクヤさん、もしよければお茶でもいかがです? 驚きますよ」


「よくわかりませんが……魔王らしき存在に付いても話が聞きたいですし、ご一緒しましょう」


「俺はヒーロー迎えに行ってくるぜ。お前ら何処に居るの? アイツ回収したら行くよ」


「えーっとどこだっけあのカフェ。確か猫がなんとか」


「猫が付くカフェなら山猫マロンですね」


 まさかのゲリンデルから名前が出て来た。

 僕らが一斉に彼女に視線を向けると、少し恥ずかしそうに眼を逸らす。


「別に、人間の食事を調べるために飲食店を梯子していた訳ではないですから」


 それ、自分から暴露してるのと一緒だよ。

 ゲリンデル、実は結構ツンデレさんか?

 そう思うとちょっと可愛らしく思えて来たぞ。綺麗なお姉さんだけどね。


「了解、ダイスケ、そこの魔王っぽいのは本当に大丈夫なんだな?」


 やっぱり初対面でも僕の名前は普通に呼ぶんだな。

 分かってたけど見知らぬ他人に親しげに呼ばれるとなんか違和感を覚える。


「ああ、今は自分から闘いとかしないから大丈夫」


「じゃあサクヤ、リーハン、彼らに同行しておいてくれ」


 ……ちょっと待て。名前。サクヤさんとこっちに来てる女の人、リーハンさんって、漢字で書けば離反? めっちゃアウトじゃん。

 顔もそこまで可愛くは無いし、なんて言うんだろう、汚ギャル系魔法使い?

 今もこちらに視線を向けることなく自身のツメを見ている。

 うん、この人絶対勇者裏切って窮地に晒すイベントキャラだ。


 サクヤとは敵対したくないし、とりあえず仲良くできるように頑張ってみよう。既に勇者とは仲直り出来ないかもしれないけど。

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