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司祭様が感謝したのは魔王様

「うむ、なんというか……勇者ってゴロツキでもなれるのか?」


「というか、全員ゴロツキにしか見えないねこれ」


 目元に青あざ作ったお姉さんが剣の柄使っておっさんの急所を襲撃、切ない断末魔と共に沈む男の鳩尾を踏み付け前方に居た女勇者の喉輪を掴み取る。が、その背後から鞘付きの剣を振り下ろされ意識を刈り取られる。


 男性勇者は厳つい男と真剣で斬り結び、バックステップしたところで死に体の男勇者の身体につまづき転倒。その顔を超重量級おばさん勇者の尻が襲いかかる。

 ぐべっと断末魔を響かせ男性勇者は気絶してしまった。

 すると今度は厳つい男がおばさん勇者に斬りかかり、おばさん勇者と対峙していた無口な男勇者がその隙見付けて喉輪突き。槍の柄で一撃必殺、厳つい男が沈む。


「うーむ。なんというか、酷い、な」


 腕を組んで困った顔のリーハ。

 闘う相手が大乱闘中なので何とも言えない顔をしている。

 しかもこの勇者どもめっちゃ必死に同士打ちしてんの。一部勇者は相手を殺害し始めてるし。

 血に染まりながらよっしゃ次ぃっとか正直引くわ。


 デブッたおっさん勇者は近くの勇者を持ち上げては投げ飛ばし、壁にぶつかった勇者たちが戦線を離脱する。

 拳法使いの勇者がそのおっさん勇者の前へと躍り出た。

 いつものように掴み取ろうとしたおっさん勇者の手を掻い潜り、懐に辿りついた拳法勇者、そのまま拳を連打。おっさん勇者の腹がなんか凄い感じに波打つ。


 しかし、デブッたおっさんは脂肪が分厚過ぎたのかダメージを受けていないらしい。笑いながら拳法勇者を掴み取ろうとして、拳法勇者が咆えた。

 おお、なんかすご……待って、この光景どっかで見たぞ。お腹の肉が戻るより早く連打してなんか掌底っぽいの打ち込んだ。

 あ、そっか、これ北……げふんげふん。


 しかし、拳法勇者の快進撃はここまで。おっさん勇者を倒した次の瞬間、アサシン勇者が背後から忍び寄り心臓を背後から貫く。

 ばかな!? それが彼の最後になった。

 ちなみに死んだ勇者たちは一時間後に教会にて復活するそうだ。

 ということは、一時間したらこいつらまた復活して大乱闘に加わるのか。

 永遠に、終わらないんじゃないか、これ?


 あ、これ、イベントとして戦闘にできるや。

 んじゃリーハさんとゲリンデルコピーとミケとNPCにゲリンデルを入れてっと。

 戦闘開始、ぽちっとな。


「ん? ダイスケ?」


「リーハ、なんかもうめんどっちいから相手したげて。開幕必殺よろ」


「仕方ないな。クハハ以下略、星屑達乃虐殺スターダストディザスター


 や、やる気ねぇ!?

 そして教会に降り注ぐ炎の群れ。

 不意を打たれた勇者たちが気付いた時には、既に避けられる状態ではなかった。


「は、謀ったなぁまおぉぉぉぉぉ――――っ」


 勇者の誰かが叫びながら消えて行った。

 南無ー。

 成仏しろよー。


 あ、勇者ヘタレー君だけ生き残ってら。戦闘に参加してなかったからか?

 ヘタレるのもこれはこれで生還率に影響するんだなぁ。というかこの子酒場の方にもいなかったっけ?

 そして、喧騒が収まったことに気付いた司祭さんが教壇の影から顔を出す。


「お、終わった? のかの?」


「うむ。勇者どもは殲滅。一時間後までは誰もでてこんわ」


「な、なんと、なんという……」


 衝撃的な光景に、司祭様はゆっくりと、よろめきながら僕らの元へとやってくる。


「ああ……神よ。なんということをなされるのですか、このような試練を……」


 よろよろとやってきた司祭様、魔王の前へとやってくると、おおおおっとゾンビの如く手を伸ばして来る。

 流石のリーハもこれにはひきつった顔をしていた。

 でも司祭様が攻撃して来たりする気配は無いので何をするのかやりたいようにやらせるようだ。


「よくも、勇者様方を殲滅してくださりましたな……」


 恨み事を吐くつもりか?


「ありがとうございますッ」


「は?」


 勇者倒しまくって感謝される魔王様の図。


「あの勇者共ッ、おっと勇者様方はこの教会に入り浸っており信者の足が遠のいておったのです。何度も復活しまくるものだから勇者同士で徒党を組みだして、まるでここが冒険者ギルドのような扱いをされて困っておったのです」


「それは、なんというか、気の毒な」


 勇者共が大量にいるから信者さんがミサにこようにも座席が開いてなかったり、祈ってる途中に勇者復活して賑やかになったりでお祈りどころではなかったようだ。

 そのため司祭様としてもあいつらが殲滅する様を間近で見られて勇者共ざまぁと胸がスカッとしたのだろう。聖職者としてどうかという問題があるけど、厳つい男達がたむろう場所に一人居続けることを思えばむしろよく耐えてると思える。


「感謝は良いが一時間後には元の木阿弥であろう?」


「それはそうですが、気分が晴れやかになりましたのでまた頑張れます」


「勇者待機所と祈祷所分けたらいいんじゃね?」


 と、言いつつ神様にメールしてみる。


「しかし、この教会は神より賜った……」


 ―― んじゃ勇者の出現場所ちょっとずらしとくよ。外でいいよね? ――


 司祭さんの心配を他所に、勇者の出現場所が教会から教会の外へと変わったのであった。

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