勇者飽和地帯
バグはどこだ?
ホイホイ君達に見付かる前にバグを……
いた! 頭の上に鳥の巣が乗ってる人っ、ってああああああっ!?
僕がメールを打つより早く、ホイホイ君による修正が入る。
鳥の巣が取り除かれたおっさんはそのまま人波に消えて行った。
なんてこった。神々め、現在進行形でバグ除去してやがる!?
つまり、これは、競争だ。
僕が見付けて報告するのが先か、神々が見付けて修正するのが先か。勝負!!
僕はルーカ、イリスと三チームに別れ、バグは見付け次第報告ということで別れた。
絶対に神様が修正するより早くバグを報告してやるッ。
神威に屈さぬところを見せつけてやるぜ!
よーし、セフィーリアさん、見つけまくろうぜ!
「あ、今回は面倒そうなのでシークレットさんたちとそこのカフェにいるわ」
「あ、はい」
出鼻をくじかれました。
オリジナルキャラたちはセフィーリアさんと一緒にカフェでお茶して待っとくそうだ。
お金? デイリーミッションでまた稼いだよ。さすがに無一文だと支障が出そうだからね。
基本雑魚戦だから作業ゲーになってるけど、お金は上限の3回まで闘って搾り取らせていただきました。
そのため、カフェくらいなら自由にできるのだ。もちろん人数制限はあるけれど、バグ探しする間位なら問題は無いだろう。
僕は魔王陛下とゲリンデルコピー、ついでに護衛として暗殺猫ミケを引き連れバグ探しに出掛ける。
ミケはなんと恐れ多くも魔王陛下の頭の上で丸まっていらっしゃる。
大物だよこの猫。ガクブルしちゃう。
「しかし、なんだな。コピーとはいえゲリンデルとこうして肩を並べて歩くことになるとは、変な気分だ」
「それはこちらの台詞です陛下。貴女が人族の街を歩いているというのが不思議でなりません」
普段魔王様はずっと魔王城にいることになってるしね。
「別に我が何処におろうがよかろう。ダイスケが魔王城に辿りつくまで闘いもないのだ。なぁダイスケ」
「というか闘うのは闘うのか?」
「何を当たり前のことをいっている? それが宿命だろう?」
「僕はリーハとは闘うより仲良くしたいけどね」
「っ!?」
僕の軽口に眼を見開いて驚く魔王。
「おや陛下、顔が赤くありませんか?」
「な、な、にゃにを言う、我がそんな訳あるか」
そうだそうだ。魔王が顔赤くするとか僕は一体どんな粗相をして怒られるんだ。止めてくれそう言う冗談は。
「ところでゲリンデル。あんたここでオリジナルが出てくるはずだけど、何処に居るか分かるか?」
「私のオリジナルですか? おそらくですがアレがそうですね」
アレ? と指差された方向を見る。
大衆食堂と思しき場所で一人寂しくスパゲッティ食べてるゲリンデルがいらっしゃった。
「なんでさっ!?」
「この時期でしたらこの国を滅ぼす算段を付けて後は時間待ちで自分が犯人だと悟られないために食事しながら次話がタップされて行くのを待っている状況です」
なんだそりゃ!?
どんな策士だよ!?
ここで僕らがイベントに巻き込まれるのを高みの見物? 絶対にさせるか、巻き込んでやる。
「行くぞリーハ」
「う、うむ?」
よく分かっていないリーハと共にゲリンデルオリジナルの元へと向う。
お一人様飯を行っていたゲリンデルは、僕らの接近に気付いて顔を上げた。
「これは驚きました。引き籠り陛下が外を歩いていらっしゃる」
「ゲリンデル。お前なんとも侘しい食事風景だな」
「ぐふっ、放っておいてください。何か御用ですか?」
「いや、ちらっと姿が見えたのでな」
そう告げながら会話どう続けたらいい? といった視線を向けて来る魔王陛下。
え、もう会話終わり? 魔王と四天王の関係マジで薄すぎない?
「我がことながら、寂しい食事ですね」
「っ!? コピーの私か。偉そうに。他者の犬に成り下がった分際で無礼ですよ」
「あら、寄る辺なき身で陛下にすら頼られない策士の分際でよくもいえますね。例え能があろうとも起用されねば無能と同意ですよ」
「「っ!!」」
ゲリンデル同士で自分の蔑みあいが始まったんだがどうしよう?
「おい、そこの、もしかしてお前、魔王か?」
ゲリンデル同士が互いに自爆し始めたのでこれをリーハと眺めていると、一人の男が立ち上がる。
「なんだ貴様は?」
「俺か、俺は勇者キエサルだ! まさか貴様の方から現れるとはな。覚悟しろ魔王!」
「待ちな雑魚キャラ。魔王、この勇者カマセが相手だ!」
「お前こそ邪魔だ咬ませ犬ッ、魔王、私こそが勇者ピン・チーよ! 貴女は私が倒してやるわ」
ガタッ、ガタガタッ。
一人、また一人と立ち上がる自称勇者。
なんだこの店、勇者だらけじゃん。
しかもあそこに居るのは勇者ヘタレーくんじゃんか。
店の隅っこの方で震え始めたぞ。めっちゃヘタレ。
あれは当てなくてよかった。
というか。なんだこの勇者だらけの店。魔王用のデストラップか!?




