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がめつ過ぎる存在は身を滅ぼす

 うぅ、物凄い高い買い物をしてしまった。

 おそらく人生最高額だ。

 これ以上の金を使用することは多分今後も無いだろう。

 たった一つで全財産が消失するとは、宝石、恐るべし。


 セフィーリアさんが物凄いご機嫌で手に嵌めた指輪を眺めている。

 その姿は神々しいくらいに綺麗で、思わず見惚れたくなるのだが、心情的にお金の減り具合によるダメージが勝っているので彼女に注視することはなく、溜息を吐く。

 お財布空になっちゃった。


 どうすんだよこれ? まぁ滅多に使わないからいいけどさ。

 一つ前の風雪地帯みたいにショップに必要なものあったらどうする気だよ。

 お金……稼がないとなぁ。


 デイリーミッションにお金が手に入る奴あったよな。あれ、やるか。

 セフィーリアさんにはお金分の働きをして貰わないと割りに合わ……


「ダイスケさん、ありがとう存じます」


 満面の笑みで告げるセフィーリア。

 とても綺麗な笑みに思わず心奪われる。

 ……ま、まぁこの笑顔が見れたならあのくらい買っても問題は……ない訳あるかッ。危なっ。もう少しでセフィーリアの罠に嵌ってしまう所だった。

 僕は騙されないからなッ。絶対に元取らせる。


「それで、貴方の家内はいづこに?」


「ん? あー、えー、家の中じゃないかな?」


 こいつ、居場所知らないのに高額商品買わせやがった。


「おっさん、ちぃっと面かせや?」


 僕は笑顔満面でおっさんに近づき、強引に肩を抱いて連れて行く。


「え? あの……」


「いやー、僕もね、あの額の商品買うのは、まぁ仕方ないと思うんだ。だって情報を得るためだし、セフィーリアさんへの日頃の感謝って思ったら、まだ許せるだろ。でもさ、その情報がカスだったとか、少々がめついんじゃないのかな? 僕まけてくれって言ったよね? あんた言ったな、妻の居所が知りたくないのか、まけていいのかね? ああん? ってさ。知らないのに、よく言えたねぇ」


「あ、はは、いや、その、あの……か、買った以上返品は受け付けんぞ!」


「よく言った。だから僕も心置きなく召喚できる。召喚・ムナゲスキー」


 僕はストックからコピームナゲスキーを取り出す。連れてきといてよかったよ。こういう時、こいつは罰として便利だ。

 変態にはご褒美にしかならないが、おっさんにとっては罰だろう。


「ムナゲスキー、こいつ、お前の好きにしちまいな」


「おほっ、よいのか! ええのんかええのんかっ。うほほーい」


「ひぃっ!? なんだお前は、止めろ、来るな、尻を撫でるなぁぁぁっ」


 ムナゲスキーを放置して、僕は店の奥から店内へと戻る。


「あ、ダイスケ君、さっきの店主さん、どうしたの?」


「彼かいシークレット。彼はがめつ過ぎたから新たな扉を開くことになったんだ」


 ふっとニヒルに笑みを浮かべ、宝石店から外に出る。

 こうなったらそこらじゅうで聞き込みするしかなさそうだ。


「ア゛――――――――ッ」


 背にした宝石店から断末魔が聞こえた気がしたが、僕らは一度も振り返ることは無かった。




 と、言う訳で近くで聞き込みを開始。

 すると、どうもこの時間宝石商の奥さんは井戸端会議に参加中だと言うことがわかった。

 井戸端会議の開催場所は街の中央広場にあるそうで、僕らはそこへと向うことにした。


 井戸を中心にして、おばさんが三人。手首を上下に振ってやーねーとか、とりとめも無い話題をしたりしながら時間を潰していた。

 しばし聞き耳を立てていたのだが、夫の鼾が煩いとか、どこそこの犬が吠えて困るとか、どうでもいい会話だったので、近づいて行くことにする。


 あまりこういうおばさん連中には関わりたくないんだけどな。

 なぜって? だって一度掴まると話が長いんだもん。

 ずっとマシンガントークされる身になってくれ。アレはある種の拷問だ。


 一応話の区切りを探っていたんだけど、誰かが話し終わると別の誰かが言葉を引き継ぐ、まさにマシンガンの応酬で割り入る暇がない。

 ここは空気を読まない魔王陛下にお願いしよう。


「我に頼むなよ全く。これ貸しだぞダイスケ。おいそこの者」


 陛下が躊躇なくおばさん達に割り入る。

 自分が魔王だから人間の女程度問題無い、そう思っていそうであるが、残念、彼女はおばさんという生態を知らなさすぎる。


「あらあら、可愛らしいお嬢さんじゃない」


「あら、でも人と違う気が……ああ、亜人の方なのね。飴ちゃんいる?」


「あ、飴?」


 意味が分かっていないリーハの手に強引に飴を乗せるおばちゃんたち。

 そしてリーハを肴にさらに話題を膨らませて行く。

 ついでにたまにリーハを振り向いて質問したり同意を求めて来る。


 話を聞く筈だったリーハはう、うむ? と軽く頷くだけの存在となってしまった。

 ふぅ、危なかった。陛下がダメなら僕が向った日には一日くらい聞かされっぱなしになるところだった。

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