砂漠の村の石探し
「ひどぃ、酷過ぎる」
「儂、そっちの趣味はないんじゃ」
戻ってきたムナゲスキーとヒリンダース。
乙女のように泣きじゃくるヒリンダースとげっそりとしたムナゲスキー。どうやら双方心のダメージを負ったようだ。一応ヒリンダースの初めては守られたらしい。ムナゲスキーの奴失敗かよ。
正直どうでもいいので理由とかは聞かないでおくことにする。
「仕方ありませんな。折角ですし私もご協力しま「ごめんなさい」」
ヒリンダースが仲間になりたそうにしている。
僕は即座にお断りをした。
こんな劇物仲間にして堪るか。テメェはこの村で一生を終えやがれ。
「あ、そうだ。ヒリンダースだっけ、あんた特殊召喚石とか場所知ってる?」
「ふむ? 知りはしません、しかしながら、そういうことですか。その石を探しだして来ることが私が仲間になる条件、ということですな!」
え、違……
僕が何か言うより早く、善は急げ、とばかりに走り去るヒリンダース。
マズい、あいつが石を見付けたら強制的に仲間になりかねない。
「皆、全力で石を探してくれ! あんなゲテモノに見付かったら強制的に付いて来るぞ!!」
「仕方ありませんね、今回ばかりは協力せざるを得ないでしょう」
苦渋の決断、とでも言いたそうなセフィーリアさんが走りだす。
他のメンバーも街中に散って捜索を開始した。
残ったのは僕とネビロヌ、ナイチンゲルダ二人である。
僕らはまだゾンビ化したままの住民を直す役目があるのだ。
直した住民に聞き込みを行いながらしばし、息を切らせたゼンラー紳士がさわやかな汗を全身から滴らせながら駆けこんできた。
ニカッと笑みを浮かべ、僕に向かって仁王立ち。
「まさか、もうっ!?」
「貴方のお探しのものは、これですかな!?」
そしてなぜか後ろを向ける。
ピシッと閉じられた尻の間に、一つの石を挟んでいた。
何処に挟んで持ってきてるんだあんたは。
ころんっと転がる輝く輝石。うん、これ特殊召喚石じゃねぇや。
一応希少価値の高いダイヤらしいけど、これの尻に挟まっていたと思うとちょっと触りたくない。
売却用なのかな? とりあえずネビロヌさんに頼んでゾンビのおっさんに拾って貰いアイテムボックスにしまわせて貰った。
ネビロヌが操ったゾンビなら僕の仲間として認識してくれるようだ。
アイテム欄に希少ダイヤとあって、とある商家が大切にしている石だとか書かれていた。
うん、これ盗品じゃね? 探して届けに行ってやろう。どこの商家かは知らんけど。
「で、この石どっから盗ってきた?」
「道に落ちておりましたが?」
「うん。これ特殊召喚石じゃねぇよ」
「なんと、ではもう一度行ってまいります!」
そして変態は去っていった。
しばし、無言でゾンビ達を直して行く。
村と言っても結構広いので人数が多い。
何人か見知ったゾンビもいたので、直した先から尋ねてみる。
ムールちゃんとカッツェ君がサボの家にあったんじゃないかな? みたいなことを言っていたので、ムールちゃんに血清を渡してナイチンゲルダ達と共に皆を直して貰うことにして、ネビロヌには治ったキャラに特殊召喚石の事を聞いておくように告げて、僕はカッツェと共にサボの家へと向った。
ここで見付かればいいんだけどな。
えーっとサボの家は……ああ、ここだ。この入り組んだ面倒臭い場所。
サボの家に向うと、その内部を探索していく。
といっても大して探す場所がないんだよな。ここのどこにあるって言うんだ?
「えーっと、確かこの辺りに……」
と、カッツェ君が壁に手を当て、何かを探……なんだと!?
カッツェの腕が壁に吸い込まれた。否、壁を突き抜けた。
「あ、あったあった。はい、これでしょ」
まさかの壁の中にあった特殊召喚石。
こんなもん分かるかッ!?
多分だけどカッツェ君関連イベントでカッツェ君を助けると貰えたりするんだろうな。
かなり端折ってしまった気がするけどまぁいいか。
石を調べてみたけど特殊召喚石で当りのようだ。
そう言えば王国で見つけた召喚石もまだ使って無かったな。
証拠にもなるしまだ召喚せずに持って帰るか。
カッツェ君と共に村の入り口に戻ると、かなりの人が元に戻り、ゾンビは数える程になっていた。
皆はまだ探索中らしい。
ムールちゃんから血清を返してもらい、お礼を言って二人と別れる。
なんかそのままくっつきそうなくらい仲が良いなあの二人。
笑顔で手を振りながら去っていく子供二人を見送って、僕らは最後のゾンビを直してやる。
そこでようやく事の真相がわかった。
奴隷商に奴隷を売りに来たおっちゃんが、その真相を語ってくれたのだ。
話によれば、王国から砂漠の村に子供を移送するさい、子供がゾンビ化していたらしい。
夜になって動き出したゾンビに襲われ、彼らがゾンビ化。そして夜中にどんどんと感染拡大し、変態紳士以外の人が全てゾンビになってしまったのだとか。
話を聞く限りだと、まだ切っ掛けのゾンビは馬車の中に居るということで、僕らはそちらに移動することにしたのだった。