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砂漠の村の超戦士

 もうゾンビは沢山だ。

 二度と出て来てほしくない。

 そんな事を思いながら王国を後にする。


 次に向うのは砂漠の村だ。

 正直ここには行きたくないんだよなぁ。何故かって言えばあの全裸変態男が路上で粗相してる姿が容易に思い浮かぶからさ。

 あの人女の子に酷いことしてるから好きじゃないんだよな。セフィーリアさんが見たら鉛玉ブチ込みそうだし。なんかまた大問題になりそう。


 そう、思っていたんだ。

 まさかすでに砂漠の村があんなことになってたなんて、僕は思いもしなかった。

 バギーを走らせ砂漠の村へ、そこにあった光景は……


「あ゛――――」


「う――――」


 皮膚が緑色に変化して虚空を見つめ続ける住民たちだった。

 え? 意味分かんない。なんでここまでゾンビ化してんの?

 神様どういうこと!?


 ―― あれ、おかしいな。なんで砂漠の村までゾンビパニックになってるんだ? ――


 神様も想定外のバグらしい。


「おや皆さんお揃いで、砂漠の村へようこそ」


 そして、ゾンビ化した住民たちの間から、一人の男がやってきた。

 全ての服を脱ぎ去って、お尻をきゅっと引き締めて、変態紳士が威風堂々現れる。


「あ、あんたは……」


「お久しぶりです皆様。つい先日まで決まったルートを行動していたただの村人、しかしながらこの度女神マロン様によりレギュラーキャラへと進化したゼンラー紳士ヒリンダースと申します」


 紳士のように一礼したヒリンダース。どう見ても少女の出していた出店で粗相した変態男である。

 女神、っていうか駄女神の奴なんて奴に意思を持たせちまったんだ……

 そして何故こいつだけ生身の人間なんだ?


「私は状態異常無効スキルを持っておりますのでゾンビ化は行われません。なのでこうして沢山の人々の合間を全裸で闊歩する喜びを堪能しておるのですよ」


 両手で自身の肩を抱きしめふるふると震え恍惚の笑みを浮かべるド変態。正直知り合いに成りたくも無い存在である。


「あー、とりあえずネビロヌはゾンビを集めて、僕等に攻撃しないようにしてくれ。ナイチンゲルダは僕と共に住民を直そう。全くなんでまたこんな重労働させられるんだ」


 王国からやってきたゾンビにより、パンデミックが起こったことなど知らない彼らはさっさとこのイベントを終わらそうと全てのゾンビを呼び出し直し始める。


「おお、少女よ、ゾンビになってしまうとは情けない。アァオゥ!?」


 ヒリンダースが近づいて来た少女ゾンビにわざわざ自分の腕を出して噛みつかれていた。

 アホがいます。自らゾンビに咬まれにいったアホが居たんです。


「ああ、噛みついている。少女が、私に噛みついて、あああ、この為に、私は生きて来たぁぁぁぁぁ」


 変態行為を堪能出来たらしいアホが両腕を真上で肘曲げ交差させた悩殺ポーズで身体をくねらせ叫びだす。

 セフィーリアさん、とりあえず撃ち殺しちゃっておっけーっす。


「では遠慮なく」


 ズガンッ。ショットガンが火を噴いた。

 吹き飛ぶ男が蜂の巣になって倒れ……ない。

 空中で止まった変態紳士はフフフと不敵に微笑んだ。


「素晴らしい一撃です。しかしながら私を昇天させるには程遠い」


 な、なん、だと!? セフィーリアさんの一撃で死んでない!?

 蜂の巣になったのに再生しやがった!?


「死ねっ」


「オゥ、なんと激しい責め、猛ってしまうではありませんかッ」


 やべぇ!? こいつ全然堪えてねぇ!?

 強敵だと気付いた僕は即座に皆に攻撃指示、手の空いたメンバーが一斉攻撃を始める。

 だが魔王の一撃すらも耐えきった変態紳士は焼け爛れた大地を悠然と歩き近づいてくる。


 クソッ、なんて凛々しい顔をしてやがる。

 パリコレの舞台じゃないんだぞ、そんな歩き方でゆっくり歩いてくるんじゃないッ。

 腰をくねらせながら歩く変態。珍しくセフィーリアさんが歯を食いしばっている。

 手は忙しなく銃器の引き金を引き続けているのだが、変態紳士は全く死ぬ気配は無い。

 やがて、変態がセフィーリアさんの眼前へと辿りつく。


「正直、ここまで変態とは思いませんでした……」


「どうやら勝負は私の勝ちのようですな」


「クッ、何が望みですか……」


「そんなもの分かり切っているでしょうッ、さぁ、見るがいい、我が命のきらめきをッ!!」


 あ、そうか、こいつ戦闘状態じゃないから倒せないんだった。

 ただのNPCだから幾ら攻撃しても意味ないの忘れてたよ。

 じゃあ、唯一こいつに対抗できる存在で。


「くはははは、よく呼んでくれたのぅご主人様よ。この、ムナゲスキーを!!」


「な、何だ貴様は!?」


 セフィーリアさんの目の前にしゃがみ込もうとした紳士に、ムナゲスキーが立ち向かって行く。

 テメーには似合いの結末を用意してやったぜ。地獄に落ちな!


「おい、何処へ連れて行く気だ!? やめろ、私は美女の前で放出したいんだぁッ」


「はっはっは、そう恥ずかしがるな。余に任せよ、至高の悦楽を教えてやろう」


「や、やめろぉーッ!?」そう言いながら、ムナゲスキーに連れて行かれたヒリンダースは見えない場所へと消えていった。


 ア゛――――――――――――――――ッ

 そんな断末魔が、一度だけ、村中に響いた……

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