廃城探索
「とりあえず、夜まで待つ方がいいのか、それともこのまま調べに行っていいのか」
「まずはこの状態で調べに行くのが良いと思うわ」
その心はセフィーリアさん?
宿屋に戻ってきた僕らはオリキャラ達と共に作戦会議を始めていた。
正直な話乗り気はしない。
特殊召喚石がそこにあると確証がある訳でもないし、でもほっとくとゾンビパニックが起こりそうな気配があるので原因を調べて倒すなり直すなりして行かなきゃならない。
「夜中だと視界が見えずらい。敵が活発に移動している可能性が高い。そして犠牲者がゾンビとして増える可能性が高い。なら今のうちに原因を潰しに向った方がいいでしょう。もしも夜中しか出て来ないなら二度手間になるけれど、そのくらいの労力で済むなら、また街中回ってゾンビを直して行く手間がなくなるでしょ」
「それもそうだな。よし、休憩終わり、城跡に向おうか」
僕らは即座に城跡へと向かうことにした。
シークレットにはキツいかも知れないと思いつつ、王城に向う。
辛かったら宿屋に戻っててもいいと告げてみるが、あの父親と一緒の方が辛いと言われたので一緒に来て貰う。
シークレットとしてもここで暮らしていた以上知り合い達が死んだ思い出の場所になってしまったのだ、辛いはずである。
「……それなのですが、どうにも城を抜けだす前の記憶があいまいなんですよね、ダイスケ君と会った頃からは普通に思い返せるんだけど」
……聞いてみるとこんな言葉が返ってきた。
それ、多分シークレットが創造されたのがそこからってだけで王女設定はあっても昔の記憶は設定されてないからでは?
そうか、この世界って結局ソーシャルゲームとして作られた世界なんだよな。
だから登場人物であるこの世界の人々が作成されたのも僕が来る少し前、生活を始めたのは僕が来た頃からかもしれない。
そう考えると、ちょっとゾクッとした。
初めから役職が決まっていて、死ぬことも決まっている人がいて、過去が無いのに自分が自分であると設定されて日々を過ごしているんだ。
それって……人と呼んで本当にいいのだろうか?
いや、この世界は今始まったばかりなのだからそれでいいのかもしれないけど……
「あら、嫌な気配がしますよ」
セフィーリアの声に我に返る。
思わず変な思考をしていたようだ。
危うく気付いちゃいけない真実を暴きだしてしまう所だった気がする。
この思考は考えないように丸めて心のゴールポストに3Pシュートしておく。
セフィーリアの向いてる場所に視線を向けると、崩れた壁や天井の隙間に人が一人入れる空洞が出来ていた。
これはもうダンジョンとしか思えない。
おそらく城の内部にダンジョンが出来てるんだろう。
セフィーリアさんが安全確認をしながら入って行く。
お願いだからゾンビ化しないでねセフィーリアさん。貴女がゾンビ化するとなんか想定外のクリーチャーになりそうな気がするし。
滅茶苦茶動きが素早くて強力なゾンビとか、正味無理っす。
後方にナイチンゲルダ二人と、カミナ、前衛にナルタを配置。後一人はどうすっかな?
お爺ちゃんでいいか。
「あら、マズイわダイスケ」
どうしたイリス?
「ここ、全階層フリーエンカウント戦闘になってる」
どゆこと?
「ようするに何処から出てくるかわからない敵を倒して行く感じ? 今までと戦闘方法は変わってるみたいだから気を付けて」
「ようするにバイオ○ザードみたいな感じ?」
「よくわからないけど全員参加型みたい。私達も襲われる可能性があるってこと」
「オリキャラたちも危険か。全員密集隊形、周囲に気を配って直ぐに敵に対応してくれ」
あと、ウッディが武具持ってなかったので適当な剣を渡しておいた。
ナルタが光を灯して、僕らはゆっくりとダンジョンを進んで行く。入口こそ狭かったものの、内部はかなり広い。
一応城の通路で出来てるみたいだけど、こんな道通った覚えが無いぞ?
階段があったので降りてみる。
空気が変わった。
なんというか、鼻を突く嫌な臭い、死臭と言うべきかなんというべきか。
それに息遣いというかうめき声が聞こえる気がする。
どうやらここから先は手を抜けないようだ。
「誰か来るよダイスケ」
「生者がいる訳ないでしょう」
ルーカが指摘した方角に、即座に銃弾を叩き込むセフィーリア。
アーと言いながら近づいて来た人型が踊りながら後ろに下がって行き倒れる。
「ゾンビ、だね」
「そういう場所みたいだからな。ラスボスはおそらく宰相のゾンビ、かな」
近づくゾンビ達を遠距離攻撃で撃破していく面々。
絶対に近づくのは遠慮したいのでセフィーリアさんやカミナ、ナルタ、魔王軍団が有利である。
魔王様被りまくったからな。既に本物入れて4体もいるし。
余程の事が無い限りは余裕だろう、多分。