そして不安要素しかなくなった
「さぁて、特殊イベント王国跡地に眠る者編が日の目を見そうだ」
そこは神々が世界の運営を行うための場所。といっても黒い世界でしかないため、区切りというモノは存在せず、他の神々が好き勝手にやってくる状況なのだが、今の所は誰も来ることは無く平常運転状態になっている。
あらかたのバグも直し終え、ようやく人心地付けたところであった。
「特殊召喚石か。また濃いキャラクターだなぁ」
「ふっ。キャラ案は私めが致しましたグーレイ隊長」
「え? 駄女神が監修とか不安要素しかないんだけど」
「ひどっ!? グーレイが酷いよアルセー……っていつのまに!?」
いつの間にか現れていた影に飛びつこうとして駄女神は気付いた。アルセがそこにやって来ていることに。
「グーレイ、宴会準備できた」
「ああ、もうそんな状態ですか」
と、グーレイが席を立って背伸びする。
「あれ、グーレイさん、どっか行くんですか?」
「ホイホイ君、悪いけど今日はこれで帰るよ、また明日。これからアルセの世界で宴会があるんだ」
「ちょっと、あちし聞いてないんだけど!?」
「え? 駄女神なんか呼ぶ訳ないだろ。行くのは私とアルセだけだ。バグ君の歓迎会だからね」
「え? ちょ、行きたい行きたいッ。ほら、私も関係者でしょー」
「そうだったかアルセ?」
「……記憶にない」
つぃっと視線をそっぽ向けるアルセ。駄女神はオーバーリアクションで愕然とした。
「ば、馬鹿な、あの可愛いアルセが、あちしを裏切った、だと!?」
「まぁそう言う訳で、一応駄女神置いて行くけど、発狂しない程度に頑張れホイホイ君。大丈夫、こいつが暴走したら帰って来た時私が私刑に処しておくから」
「ちょぉいっ!? 私刑って何!? リンチはダメよグーレイさん!」
「マロンは反省したほうがいい」
アルセが台詞を残して去っていく。そしてグーレイもまた、宴会に出席するため去っていった。
後には不安しかない駄女神だけが残される。
「とりあえず、余計な事をしないならバグ取りしてくれ。く・れ・ぐ・れ・も、余計なことはするな。フリじゃないからな」
「なんかあちしに厳しくなーい? 前はもっと優しくなかったかにゃー」
「その信頼を裏切ってマルボリック皇国消失させたの誰ですかね」
「ぐふっ」
駄女神が倒れたのでホイホイ君はモニターに視線を向ける。
彼渾身のゾンビモノ第二章の後日談。
特別イベントがついにお披露目である。
ワクワクしていると聞かれれば当然だと言える。
ゾンビモノをとある世界の地球で見た時には雷が落ちたような衝撃だった。
こういう世界がいい。そう思いもしたが、終末世界なんてもうすぐにでも世界が終わる直前である。それでは折角作った世界が直ぐに使いモノにならなくなってしまう。
そこで考えついたのがゾンビを見た時に知ったソーシャルゲームである。
ソーシャルゲームを世界に組み込んだら皆が遊びに来るんじゃないだろうか?
そこに大好きになったゾンビ要素も組み込めば恐怖しながらも立ち向かうプレイヤー。それを見て楽しめる自分。ウィンウィンな関係だ。その筈だ。
ダイスケが凄く嫌そうな顔をしている気がしなくもないが、気のせいだ。
ここをクリアすれば駄女神特製の特殊キャラが手に入る。
なんでも速度特化のアサシンタイプキャラなのだそうだが、詳細は教えてくれなかった。
だからこそ不安で堪らない。けれど見てみたくはある。
期待しているよダイスケ君。
あ、でもよっぽど世界にそぐわなかったりヤバそうだったら消しちゃうから、安心してくれ。
まぁ、ちゃんとこのイベントをこなせるかどうかが問題だけど、全員ゾンビ化したらちょっと進行に支障をきたすかもしれない。大丈夫だろうか?
特にセフィーリアなどがゾンビ化したら眼もあてられない凶悪ゾンビに成りそうな気すらする。
そうなったらもうお手上げだろう。多分ゾンビ化を直そうとしても避けるだろうし。
でも、その辺りはダイスケがなんとかしてくれるだろう。
「んー。しかしホイホイ君」
「ん、なんだ駄女神」
「言い方!? ま、まぁいいにゃー。それより街中ゾンビだらけになってるけどこれ大丈夫?」
「ああ、夜中に出歩くキャラはゾンビ化するようになってるよ。ダイスケ君が戻すだろ、たぶん」
「いや、その、彼が知らないキャラが、ほら、これ……」
砂漠地帯へ向けて移動するキャラバンの一人がゾンビになっていた。
そのまま彼らは砂漠の村へ。
これ、夜になったら……
「まぁ、なんとかなるんじゃないかな?」
「嫌な予感しかしないにゃー。あちきが手を下すまでもないような」
「手を下していた自覚はあったのか!?」
「ぎゃー藪蛇っ!?」
逃げだす駄女神とそれを追って行くホイホイ君。
王国を脱出してしまったゾンビは放置されるのであった……