王城に潜む地獄の蓋
「ゾンビ……ですか」
「ええ、何か情報ないですかね?」
「残念ながら、私達は部屋からでないので、ええ、でませんので……でれたら……よかったなぁ」
ああ、二人揃って虚空を見つめてやさぐれ始めた。
まぁ、部屋から出られないってことで王様とムナゲスキーの情事をずっと見せられたんだし、精神的負担は計り知れないだろう。
今日からは多分大丈夫だから、あいつら封印しといたから、安心して寝ておくれ。
「街の治安に関してでしたら騎士団に聞くのが一番かと思いますよ」
フハイちゃんに言われて騎士団を思い浮かべる。
あの三人のシオがいるへっぽこ騎士団だ。
果たしてこの異変を察知出来てるのかどうか?
いや、むしろ全員ゾンビ化している可能性が高いんじゃね?
よし、とりあえず元に戻すためにも向うとするか。
ただ、ナイチンゲルダ二人だけだとどうにも……範囲回復系のキャラはいないのかな?
そういえば、ガチャに本格的な回復職っていなかったよな。レスティスくらいじゃないか?
彼女も回復職というよりは光属性の魔法使いっぽいし。
回復使えるクレリックとかいないのだろうか?
一先ずガチャを覗いてみる。
8章ようのピックアップがあった。
☆5砂漠の王女テリアルテ、軟体王ナンディ。☆4ハレンチ王ムナゲスキー……
うん、またムナゲスキー出て来そうな気がするからこれは引かない方が良いかな。
コラボガチャの方は?
と、カーソールをタップして別のガチャに移動させた瞬間、そこにはコラボではなく、特殊イベント用ピックアップガチャというガチャがでていた。
☆5絶対消毒ナイチンゲルダ、救世主カミナ、☆4古代兵器ナルタがピックアップ。二人は既にいるし、ゾンビ特攻用だと分かるが、救世主カミナ? ちょっと気になるな。もしかしたら使えるかもしれない。
僕は当然のようにガチャを回した。
おお、開幕☆5! これは期待でき……
「くははははは。我が名は魔王グレヴィウスリーハである。図が高いぞ我が主よ! はーっはっはっはっは」
「り、リーシェは僕が守るっ」
「うぉれぇぇぇわぁぁぁ、オマエだぁぁぁぁぁ!!」
「さては南京たますだ……あら? 召喚されてました?」
「くははははは。我が名は魔王グレヴィウスリーハである。図が高いぞ我が主よ! はーっはっはっはっは」
「これが、運命か……」
「さぁ共に祈りましょう。主は我々をいつも見ております」
「闘いだけならアホでもできる。あっぽーぅ!」
「初めましてカミナです、これからよろしく」
おいおい、☆5が三つも出て来たぞ。しかも魔王様2体って……
これはツイてるかもしれない。そう思った次の瞬間、10体目のキャラが召喚される。
「お、ダイスケ君じゃないか、よろし……あ、あぁ……ア゛ア゛ア゛ァ゛」
ひぃぃっ!? ヘイグルが召喚されたと思ったらゾンビヘイグルに変化しちまった!?
召喚されたマリクに噛みつこうとするゾンビヘイグル。
即座に動いたのは、セフィーリアさんだった。
ズダンっと引き金を引いたショットガンがヘイグルを粉砕する。
あ、焦った。なんだこのトラップ。
ヘイグルの墓を暴いたせいか召喚されるヘイグルがゾンビ化して召喚されるようになってしまったようだ。
「なんかゾンビが多過ぎません?」
「私に聞かれても困るわ。神が好きなんでしょ?」
「ホイホイ君どうなってんの?」
神様達にメールする。
―― ゾンビパニックって、いいよね? ――
ホイホイ君自身がゾンビマニアだった。
多分襲われる中を必死に逃げのびるのが好きなんだろうけど、当事者にしないで下さる?
カミナさんのレベルを上げながら騎士団詰め所へと向かう。
案の定、騎士団は全滅、全てゾンビ化していらっしゃったのでゲルダさんが嬉々としてずっぷし注射器を振るっていた。
シオ、オリシオ、ナルシオの三人娘とグラッツに話を聞いてみたところ、どうも怪しい生物は崩れた城の奥から夜中にやってくるらしい。
これはもうゾンビの生き残り? 死んでるから生き残りじゃおかしいな。なんて言ったらいいんだろう? 死に残りか?
ゾンビの死に残りが騒ぎを起こしていると見ていいのかもしれないが、日中にゾンビパニックが起こってないって言うのが気になるな。
まぁ、行ってみればわかるよな。
にしても、至るところにゾンビがいるな。見付け次第ゲルダさんのお注射が炸裂してるけど、結構な数の民がゾンビ化している。
皆夜中に徘徊する人らしいけど、レゴウイベントのときは殆ど人居なかったじゃん。何でこんなに多いんだ?
あ、砂漠の村側からこの国に来てた行商人さん発見。
見事ゾンビ化してたので回復しておいてやる。
さぁ、昼間のうちに城跡調べてみるか。
この時の僕は、地獄の蓋を開けてしまうことになるなんて、全く思いもしていなかったんだ……