本意無き合流
最初の村を出た僕らはバギーに乗ってシークレットの故郷である街へとやってきた。
当初こそ城があったものの、ゾンビパニックにより崩壊してしまい、今は宿屋の一室が臨時の王城になっている国だ。いや、城が無いので街といった方が良いのだろうか?
一先ず街中を探索してみる。
最初期の街だからかバグ取りは念入りに行われたようで、眼に付くバグが見当たらない。
気になると言えば多少緑色っぽい肌の人がふらふら歩いてるくらいか。
……なんか、この街も結構ヤバくね?
「あの緑色の肌の人たち、少し前王城で見かけたゾンビに似てる気が……」
シークレットも自分の国の事だからか不安そうだ。
そうだ。ナイチンゲルダは戦闘中じゃないから幾らでも注射器使えるだろ、あのゾンビっぽいの直してみてくれ。
と、言う訳で、巨大注射器がお尻にぶっさされ、太った男の人がぶひぃっと正常に戻った。
突然何をすると憤慨するおっさんに肌が緑になっていた原因を聞いてみると、どうも夜中出歩くキャラが襲われているそうなのだ。
夜に何か徘徊してるってことか?
「あれ? ちょっと待ってダイスケ、なんかストック内のキャラからメッセージあるわよ」
ストック内って、なんぞそれ?
「どうも最近付け加えられた仕様みたいね。イベント関係で必要なキャラがいればルーカか私に連絡が来るみたい。今回イベントがありそうなキャラは武器屋の親父ダンディね」
ダンディさんか。なんだろう? まぁ、彼ならそこまで危険は無いか。
ストックからダンディさんを出す。
すると、ダンディは困った顔で頭を掻いていた。
「おう、わざわざ悪いな」
「それは良いけど、何か用事?」
「ああ、この辺ゾンビっぽいのが居るだろ、ちょいと武器屋に向ってくんねぇかな。店番頼んだリーシャの嬢ちゃんとマリクの小僧がその、心配でな」
オリジナルの二人か、っていうか、あの二人に店任せてるのかよ!?
ダンディと、ついでにアニキが心配だってことで武器屋に確認に向かう。
「あー……」
「うー……」
カウンターにゾンビが二体ふらふら立っていた。
ナイチンゲルダ――――ッ!!
そして二人が回復する。マリクだけ一回副作用でゾンビになったけど、まぁ問題無いよね?
「うーん、なんだかしばらくぼんやりしていた気分です」
元に戻ったリーシャが眼がしらを揉みほぐしながらカウンターを出て僕等に一礼。
「武器屋ダンディにようこそ皆さん。目一杯ガラクタ買ってお金を貢いでくださいね」
毒が凄いっ。
どうも彼らは夜遅くまでここで働いて帰りに襲われたそうだ。
話しによれば怪しい人物は城跡の方から現れているらしい。
夜中に城から這い出て来るモノ、か。嫌なイベントがまた起こってそうだ。
とりあえず次は宿屋だな。
王様に会って現状を確認しないとな。
宿屋に付くと、何度も繰り返した部屋に向う。
砂漠の村からここに戻った時は神を殺せるくらい恨んだものだが、今となっては良い思い出だ。
思い出したらなんかムカムカしてきたけど。
扉を開く。
がちゃりと開くと、頬を染めて困った顔をしているA子とB奈、そしてフハイちゃんが僕等に気付いた。
彼らが驚きに眼を見張る。
「お父さまはいらっしゃる?」
シークレットの声に、困った顔をしながらベッドに視線を向ける三人、僕らもそちらを見ると、そこには穏やかな顔で眠るシークレットの父親と、同禽しているハレンチ王ムナゲスキー、そして村人D。
僕はぱたんと扉を閉じた。
見なかったことにしたかったがA子さんが扉を内側から開いて僕らを無理矢理部屋に引き込んだ。
「おとう……さま?」
「あ、あの、シークレット様、お、お気を確かにっ」
「その、あの、えっと国王陛下はお疲れで……」
明らかに狼狽する護衛騎士二人。
うん、何が起こったかわかったし、これはこの二人を放置した僕らの責任だろう。
いや、むしろ、僕らはムナゲスキーの実力を見誤っていたんだ。この男、流石に国王なだけはある、相手が国王だろうと遠慮はしなかったということか。
ハレン・チー王国行きたくないなぁ……
というか、一国の王様だろうシークレットの父親、フハイちゃん妻にするんじゃなかったのかよ。
あ、そうだ。この護衛騎士たちだけでもいいや。
現状を認識できてるか聞いとこう。
ド変態国王ムナゲスキーはストックにぶち込んで、村人Dについては隔離でストックに入れておく。
これで間違って他の村人Dを被害者にしなくて済む。
はぁ、でも、この街の問題が二つに増えちまった。
この国大丈夫かね?
まぁ最悪シークレットと王様ごっこやって余生を過ごす未来もありかもしれないけどなぁ。うん、まぁこの国はあの変態になっちまった王様にお任せしよう。
僕は特殊召喚石手に入れたらオサラバ、近寄らないようにしようっと。