墓に遺体、とくればアレ
ザッシュ、ザッシュと土が掘り返されて行く。
二人のヘイグルコピーが掘り続けているのはヘイグルの墓である。
ここにはこの世界に来て最初期にゴブリンに頭勝ち割られたヘイグル君の遺体が眠っている。
そこに、特殊召喚石が埋まっているらしい。
ガッと何かにスコップが当る。
何かあるぞ、ヘイグル達が喜びの声を出す。
僕らも期待に胸を膨らませた。
がしり、スコップの先が掴まれるまでは……
そう、僕らは墓を暴いたのだ。それはつまり死者の眠りを妨げたことに他ならない。
「ひっ!? 待、助け……」
スコップごと、ヘイグルの一人が穴に引き込まれる。
「あああああああ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛……」
なんか変なもん掘り出したか!?
焦る僕の目の前で、穴から手が伸びる。
地面に辿りつくと、ガシリと掴み、ゆっくりとせり上がる。
ゾンビ化したヘイグルが二体現れた。
って、なんで二人とも頭が割れてんの!? 怖っ!?
驚く三人目のヘイグルに二人が群がる。
悲鳴が轟き、しばし、頭の割れたゾンビヘイグルが三体に増えた。
「せ、戦闘、ダイスケ早く!」
「あ、ああ。えっとナイチンゲルダ二人だろ、前衛はナルタ、レスティス、あとは……光属性の若巫女チハヤ! 頼んだ!」
ナイチンゲルダ二人が回復用の注射器をヘイグル君に突き刺す。
ゾンビ化が解除されたヘイグルは副作用でゾンビになった。
レスティスの光の光線がヘイグル1体を撃破。
ナルタのロケットパンチでヘイグル1体がふっとぶ。
チハヤの符術が残ったヘイグルにひっつき轟炎と共に消失した。
ふぅ、びっくりしたぁ。
まさかヘイグルがゾンビ化して襲ってくるとは。やっぱり墓暴いたりしたからだろうなぁ。
あ、ちょっとセフィーリアさん、不用意に近づくのは……
「見つけましたわ。ナルタさん、こちら取っていただけて?」
「了解されます」
セフィーリアに告げられてナルタが何かを拾い上げる。
「特殊な召喚石、おそらくこれでしょう。目的達成しましたしさっさとこんな場所オサラバしましょうか?」
そうだな。目的手に入ったもんな。
コピーのヘイグル二人が還って来なかったけど、尊い犠牲だったとしよう。
さらば、ヘイグル。
暴かれたままの墓を放置して、僕らはそそくさとその場を後にしたのであった。
ヘイグル君の墓には二度と近寄らないようにしよう。
ちなみに、これ以降ヘイグルがガチャから出現した時、ゾンビ化してしまうことを、僕はまだ知らなかった……これが、後にヘイグルの呪いと呼ばれる悪夢の始まりである。
さて、気を取り直して特殊召喚石を使ってみよう。
オリジナルキャラが出現するらしいけど、どんな生物が出てくるんだろう。
召喚画面で特殊召喚を使ってみる。
ぺっかー、と光輝き現れたのは……村人Aだった。
いや、村人Aの姿だけど、眉毛がゲジ眉でなんか凛々しい。
熱血漢溢れる村人さんだ。
これは、村人Bが特殊な存在だった、とかか!
村人 Lv1
必殺:
村人達の無念を剣に(オールフォーワンストラッシュ)
敵全体に防御無視の超ダメージ。犠牲になった村人一人につき威力が10%増加。
スキル:
一揆突撃
場に出ている村人と共に一斉突撃。
急所突き
クリティカル確率UP。即死付加。
おらが守るだ
自身にくいしばり付加。
パッシブ:
村人の代表
村人達の代表。場に出ている村人が多い程能力UP。また村人たちが死亡するたびにステータスが5%UP
立ち向かう心
敵が強敵、あるいは大人数である程ステータスが増加。ダメージカット。不屈付加。
☆0村人が仲間になった。
なんというか、ステータスこそ弱いけどこれは化ける可能性のある村人だ。
ちょっと育ててみたいとコレクター魂がうずうずしてます。
村人さんは一振りの剣を腰に佩き、両手で竹槍を持っている。
「オラを呼びだすなんてあんた結構酷いなぁ。墓暴きはやっちゃなんねェだよ?」
ごはっ!?
正論をぶつけられて僕は四つん這いに崩れ落ちた。
だって、特殊召喚石墓の中って言われたんだもん。
「あ、私気付いたんだけどさ、ヘイグルが生きてる状態の話に飛んでから墓のあった場所調べればよかったんじゃ……」
「……あ!?」
僕ははっと気付かされた。
というかルーカ、ソレもっと早く言っといてくれないかな?
そうだよ、そもそもヘイグルが生きていれば墓暴く必要なかった、というかそもそもその時なら村長の家にでも置かれていたかもしれなかったんじゃん。
「ま、まぁよろしく村人さん」
「おう、おらで良ければ力になるべ」
僕らは握手を交わし合う。
彼はオリジナルキャラなのでストックには入れられない。
なのでこれからは一緒に同行して貰うことになる。
暇を見てレベルとか上げといてあげよう。
決してヘイグルへの罪滅ぼしではない筈だ。




