20連ガチャ、増えるA・前編
さーって20連ガチャとしゃれこもうか。
僕がガチャのボタンを押そうとすると、皆が集まってきた。
「おにーさん、それガチャ?」
「リーシャ? うん、そうだけど?」
「私やりたいっ」
興味を覚えたらしいリーシャがガチャを回したいというので最初の10連は彼女にまかせることにした。
えいやっとボタンを押すリーシャ。
少し離れた場所に魔法陣が描かれ、10人の猛者が出現する。
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Aだぁ」
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Aだぁ」
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Aだぁ」
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Cだぁ」
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Aだぁ」
「くはは俺を呼んだかマスターッ。共にハーレム王国造ろうぜェ」
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Aだぁ」
「ひゃはははははは、次に殺されてぇ奴はどいつだぁぁぁぁぁ!?」
「おお? 召喚されちまっただか。オラァ村人Aだぁ」
「さぁ共に祈りましょう。主は我々をいつも見ております」
……さて、なんと言えばいいのだろうか。
まず、村人A率が半端ねェんですけどっ!?
なんだこの10人中7人村人って、いや、一人Cだった!? ってそんなのどうでもいいわっ!!
俺は即座にメニューボタンを押し込むと抗議メールを書き込み神様に送信。
返答はすぐだった。
―― 仕様です ――
「うがああああああああああああああああああああ!?」
神様はクソ運営だった件。
マジか畜生。ガチャの度に村人A出てくんのかよ。殆どが村人Aかよ。マジふざけんなッ!!
まぁ、いい、奴らは皆削除対象確定だ。ついでにそこのクソ野郎!
キッと睨みを聞かせるのは、初回戦闘ではっちゃけやがった快楽殺人者レゴウ。
速攻削除に決まってんだろテメーは!!
レゴウを速攻削除してふと我に返る。
融合はまだ出来ないみたいだが、もしかしたら物語を進めることで出来ることが増えるタイプのソシャゲじゃないか?
だったら、ああ、だったらよぉ。
その時僕に悪魔が囁いた。
プロローグ周回ははっちゃけ過ぎて垢BANくらった。
ならば、村人Aの仕様を自分から変えたくなるように仕向けちまおう。くく、くくく。はーっはっはっはっはっは。
「くく、くくく。はーっはっはっはっはっは」
僕が黒い笑みを浮かべていると、隣に並んだリーハが真似るように高笑いを始めた。
互いに、まるで自分の方が高笑い上手だとでも主張するように、一歩も引けない高笑い勝負が始まった。
「うわぁ、壊れた男女が居ますよシオ姉ちゃん」
「う、うむ」
しばし二人で笑いあった俺たちは、スッキリした気分で握手を交わす。
何故だろう、僕はその時、魔王と真の意味で友人になれた、そんな気がした。
と、とにかく、続きだ続き。
今回新たに手に入ったのは、村人C、エロ盗賊ゴルディ、狂信者レスティスである。
あれ? なんだろう、凄く嫌な予感しかしないのは?
ちなみに村人Cが☆1、ゴルディが☆3、レスティスも☆3である。
とりあえず、レスティスさんに聞いてみるか、神聖属性なら回復魔法とか使えそうだし。
「あのーレスティスさん」
「はい、何でしょうダイスケ様」
「ケンウッドの爺さん、治す事って可能か?」
「ケンウッド様ですか? 神の導きがございますれば、必ず助かるかと」
「いや、そうじゃなくて……あ、コレ多分ダメなやつだ」
「神の手により取捨選択される我々が、我々の意志程度で神威を成そうなどおこがましいとは思いませんか?」
目がぐるぐるしてる。これ確かに狂信者だ。自分の信じた神様以外信じない奴だ。
「あーその、ほら、君がケンウッドさんの病気直すのも神意かも、とか……」
「それは御使い様とはいえアナタが決めることではありませんでしょう? ご安心ください。神は貴方の行いをしっかりと見ています。さぁ貴方も祈りましょう。ケンウッド様が神の身許へ導かれんことを……」
あの、それ、ケンウッドさん死んでませんか?
「うへへへへ。嬢ちゃん凄い恰好だねぇ、おじちゃんとエロい事しようぜぇ」
「死ね、下衆が」
「ぐぎゃああああああああああ!?」
そして僕とレスティスが話し合ってる最中にリーハに手を出そうとしたゴルディが攻撃を受けていた。
しかもリーハのレベルは16、ゴルディはレベル1。オーバーキルである。
「ふふ、なぁマスター。男って奴ぁよぅ。ハーレムを一度は夢見るもんさ。俺の夢、あんたに託すぜ……」
ご、ゴルディ――――――――ッ!!?
「む、死んでしまったか? 不甲斐ない」
む、むごい、ナンパしただけなのに、いや、下心率直に告げてたけどさ。
殺すことはないだろ、ほら、仲間図鑑から普通に削除されてるじゃないかーっ。
ってことは、今のガチャで手に入ったキャラで使えそうなのは、実質レスティスだけか。
思わずレスティスを見る。
神に祈りましょう。それしか言わない役立たずではなかろうか?
……よし、もう10連、回そうか。




