最初の村の特殊召喚石
僕は今、アニキとバギーでドライブ中だ。
痛々しい棘付きバギーを運転するアニキはまさに世紀末を生きる男の中の男。
ラメが煌めくジャケットを着込み、とげとげしい肩パットを嵌めたその姿は、あまりにも似合い過ぎて痺れる、憧れる。
助手席に座る僕は吹き抜ける風に髪を揺らしながら景色を楽しむ。
たまに、アニキのしぐさを覗き見て、そのかっこよさにドキリと……
って、何でじゃぁーッ!!
アニキの後ろでシークレットたちときゃっきゃうふふしようと思ってたのに誰も助手席座ろうとしないしっ!
気付いたら後ろはシークレットとパルマ、セフィーリアで埋まってるって言う、ね。セフィーリアさんまで来なくてよかったんだよ?
そしてコピーのリーハと魔王陛下が翼はためかせて僕らの左右を飛翔している。
バザール、ザルー、デーゴというアニキの子分たちは独自のバイクを持っているらしく、イリスとルーカ、ついでに被ったバザールとザルーのバイクも使ってサシャ二人とサクヤが二人乗りで移動していた。
汗臭い下っ端の後ろに乗らされたサクヤがずっと顔を顰めている。
ちなみにマルサは帝国に残ってスパイ稼業再開するんだと。ウーラさん付きでベロニカと共に働くらしい。
それで良いのかウーラさん、裏切りもんばっかりだよ君の部下。
残りのオリジナルメンバーなんだけど、大統領シュヴァイツァーの必殺で出てくるらしいヘリコプターに乗って空から僕らを追ってきている。
こちらに乗ってるメンバーはシュヴァイツァー、若きケンウッド、セルジュ、ヘスティカーナ、ウッディなどというメンバーである。
タラッシュ? 結局使う意味無かったからストックにぶち込んどいたよ。
後のコピーメンバーはストックから出せばいいので今は全員ストック行きだ。
今回は話をタップする意味が無いのでバギーでひたすら移動である。
一番最初の村までは結構あるので、当り障りのなさそうな第2章エピローグを選択してから最初の村へと向うのだった。城、また壊れたけど別にいいよね?
さて、ヘイグル君の墓があるこの村にも特殊召喚石がある筈なんだけど……
誰が持ってるんだろ? とりあえず村長さんに聞いてみるか?
バギーから降りてぞろぞろと村に入る。
外に出ていた人々は予想以上に多い来客に驚き慌て、逃げだした。
皆が家に入り込んでバタンバタンとドアや窓を閉めていく。
一瞬にしてゴーストビレッジに変化した。
村から人の息遣いが消えてしまった。
なんでじゃ!?
よくよく耳を澄ませて聞いてみると……
「ま、魔王じゃ、魔王がきおった。この世の終わりじゃぁ」
「お、お爺ちゃん、でもほらダイスケさん居るわよ?」
「奴ぁ洗脳されてもうたんじゃ。ああ、この世は終わりじゃぁ」
「いや、でも、ほら、こっちに手を振ってる」
「この世は終わりじゃぁ」
なんか余裕ありそうなお爺さんがこの世は終わりとか言いまくっている。
理由はまぁ、簡単だ。
魔王陛下がいらっしゃるからだ。
コピーじゃなくて本物がね。
それに気付いてないリーハさん。なんだこの村は? と小首を傾げていた。
これ、話し聞けるんだろうか?
とりあえず村長さんの家に向う。
ドアをノックしてしばらく、村長が青い顔でがちゃりとドアを開き、ちょっとだけ顔を見せて震えながら尋ねる。
「な、何の用だ小僧。ま、まさか儂の魂取りに来たのか?」
「爺さんの命とかいらないから。ここにいるのは魔王だけど攻撃とかしないから安心してくれ。えーっと、この村に特殊召喚石ってのがあると思うんだけど、ある場所知ってる?」
なんとか会話しようと努力したものの、村長は怯えるばかりでこちらの話を聞こうともしない。
仕方無いので若干脅すような口調になってしまったのは仕方無いと思う。
「は、はひぃぃぃ、へ、ヘイグルの遺体とともに墓に……」
埋めちゃったのかよ!?
え、どうしよう。これって墓暴いちゃって良いんだろうか?
はっ、そうか!
閃いた。
僕は全員でヘイグルの墓へと向う。
そしてその場でストックからヘイグルくんを呼びだす。コピーが二人いたので同時に呼び出し理由を告げ、イリスがスコップを渡す。
そのスコップ、どっから手に入れたの? ああ、ダイサクさんが持ってたのか。
自分の墓だし召喚石手に入れるためならまぁ、いいか? とヘイグル二人がヘイグルの墓を掘りかえす。
「なんとも言えない光景ですね。私、貴方の事を誤解してましたダイスケ。実は結構あくどいですね」
うん。シュール。
二人のヘイグルが穴掘ってる姿を見つめていると、セフィーリアさんが呆れた顔をしていた。
酷い言い草だ。僕ほど頑張ってるプレイヤーはなかなか居ないぞセフィーリア。君に何度殺されても怒りや恨みを持ってないだろう? 出来た人間なのだよ。
「ダイスケ、出来た人間はコピーヘイグルにヘイグルの墓暴きなんてさせないと思うわ」
だって他のメンバーが掘ったらなんか呪われそうなんだもん。