巨悪? は去った
ガルガンラヴォスが跡形も無く消失した。
これは、倒したというよりも命令違反で粛清されたと言った方がいいのだろうか?
彼の敗因は、敵対者に彼の上司がいたことだろう。
戦闘態勢を整える前にリーハの一撃が襲いかかり、呆然とした顔のまま彼は消え去ってしまった。
なんか、魔王四天王なのに可哀想な気すらしてくるよ。
魔王四天王に入れ変わられていた帝王様も何処行ったのか気になるな。どこいったのやら。もう殺されちゃってるかな? ホイホイ君ならそういう話しになってる可能性が……
「むぅ、全て終わっておったか」
よろめきながら謁見の間に入って来たのは、帝王様だった。
今度はおそらく本物だろう。
王族のいるだろう謁見の間の奥側の扉からやってきたおっさんを見た王子が慌てて駆け寄ってよろめく王を助ける。
「父上! ど、どうなっているのです!?」
「儂は今まで牢屋に繋がれておった。そこの女性が牢屋を爆破してな。枷が外れたので脱出して来たのだ」
そこの女性、ことセフィーリアさんははて、あんなの助けましたかしら? と小首を傾げていた。
うん、絶対塵芥扱いしてたでしょ。下手したら知らず一度は爆殺してるかもしれないな。
王子の手を借りて玉座に座った帝王は、ふぅっと息を吐いてウーラさんを見る。
「ウーラ……すまなんだな」
「帝王……?」
「我が不甲斐ないばかりにそなたには辛い思いをさせたようだ。お前と儂との理想郷、これからになるが必ず創ると約束しよう、我が弟よ」
「兄上……」
……ワッツ!? どうでもいいけど帝王とウーラさん兄弟設定だったの!?
今更分かってもどうでもいいよ。
あ、ちょ、回想いらない。
おっさんとおっさんの兄弟愛みたいな回想いらないから。
二人がなぜ敵対するに至ったのか、ガルガンラヴォスによる王の投獄とか、ウーラさんが変わってしまった兄を討伐し自分が王になる決意を決める場面とか、なんか重要そうな話が目の前で展開され始める。
現実世界で回想みせるのとか神様いろいろ苦心したみたいだけど、僕としては興味すらないのでとりあえずスキップを探す。
見つけた時には回想終了寸前でもはや普通に流しておく方がスキップ押すより速そうだったのでとりあえず全て見終える。
兄に裏切られた絶望から立ち上がったウーラが二人が思い描いた理想の為にベロニカたちと兄を倒す決意をするところで回想が終わった。
「そうか……兄上ではなく、ガルガンラヴォスが兄上になり済ましていたから私に……すまない兄上、そうとは分からず私は、兄上を打ち倒そうと……」
「気持ちは分かる。我もお前が理想を忘れたと分かれば容赦なく倒していただろう。全ては魔王四天王ガルガンラヴォスのせいである。罪には問わん。むしろ、これからの治世、お前にも手伝って貰いたいが、どうだ?」
「帝王閣下の仰せのままに」
ウーラさんが臣下の礼を取る。
ソレを見たベロニカや王子も同じように臣下の礼をとった。
えーっと、僕らもやった方が良いのかな?
「皇国より来られた客人たちよ。そなたらに頼むのは違うかもしれんが、我等はこの国を立て直さねばならぬ。魔王四天王は別の国々で恐怖を振りまいておるはずだ。そなたに彼らの討伐をお願いしたい。世界平和のため、魔王四天王を、そしてその元凶たる魔王を倒してくれ」
「だってさリーハ」
「良かろう、その依頼うけてやろう」
待って!? その倒すべき魔王はあんただろ!?
しかしリーハは面白いから良いではないか、とコピーリーハまで揃って笑い始めた。
魔王たちは自由過ぎる。自分の討伐を自分で引き受けるとか気違いにしか思えないけど!?
「ここから北へ向った先にハレン・チー王国がある。あの辺りもなにやらキナ臭いようでな、それと皇国にはこちらから謝罪報告を入れておく」
ここで出てくるのかハレン・チー王国。
あのムナゲスキーオリジナルが存在する王国だ。
危ない男共が跳梁跋扈する悪夢の国である。
「HAHAHA。マスターよ尻の締りは万全か」
ばしばしと背中を叩いて来たのはウッディ、お前不吉なこと言うなっ。はっ倒すぞ!
第8章はなんというかあまり行きたくない場所だ。なのでここで一段落した訳だし、最初の村から順に特殊召喚石探してみようか。
僕らは城を後にして宿屋へと向う。
道の途中でエイドリーがまた叫んでいたり、赤ちゃんがその股下潜り抜けて歩いていたけど全て放置することにした。
ここのバグも結構多そうだな。
出来れば自分の目で見付けて教えてあげたいところだけど……
まぁ、グーレイさんが必要ないって言ってる訳だし放置しとこうか。
「ご一泊ですか?」
「ブフォゥ!?」
宿屋のおっちゃんに話しかけた瞬間、彼の姿がガルガンラヴォスに変化したのは、多分バグだと思っていいだろう。