考察と想定外
「でも、彼女が裏切り者だとすれば、私達を助けたのはなぜでしょう?」
シークレット?
言われて気付く。確かに、マルサ発見で囲まれた僕らを煙玉で助けて反抗組織まで案内したのはベロニカ本人だ。
それって、確かにおかしいよな。なんで助けた後で?
「きっと油断させたかったのでしょう」
答えはウーラさんからもたらされた。
「油断させたかった?」
「ええ。状況を聞く限り往来で兵士達と闘おうとしたのでしょう。帝国のスパイだったベロニカからすれば民に被害も出るし、兵士に多大な死傷者がでるかもしれない。それならば一度逃げて貰い、我々反抗組織ともども不意を打って捕縛した方が一網打尽で被害も少ない。と思ったのかも知れないヨー」
成る程、確かにそれなら理解はできる、かな。
まぁ実際はどうかわからないけど、納得はできた。
「それで、これからどうします?」
「そうだネー。折角全員集まってる訳だし、脱走がばれる前に襲撃しかけちゃおっかねー。全員プランΣ。可能性はゼロに近かったけどベロニカが犯人だった場合を想定した侵入計画も考えてあったんだヨ」
抜かりは無いネ。とチャーミングに笑みを浮かべるウーラさん。キモいです。
あとその隣に並ぶなタラッシュ。その青首大根みたいな太い足がスカートから覗くのがキモいんだ。あとデブ二人が並ぶと暑苦しい。
どうやら7章2話はこのまま突撃してプランΣを敢行するようだ。
僕らは折角なので手伝いに向かうことにした。
何をするかわかんないけどとりあえずウーラさんと行動しとけばいいみたいだし、梅雨払いでもしておくか。
ウーラさんの後を付いて行く。
反抗組織の人たちは少しずつパーティーを組んで自分の配置へと向かい始め、城門に付く前には皆が居なくなりウーラさんだけになっていた。
これ、ウーラさん襲われたら即死案件なんじゃ……
「護衛はよろしくネー」
「あ、やっぱそういうことっすか」
「えっと、次の戦闘は城門で起こるみたい」
イリスに教えられて了解と告げる。
なるほど、このままウーラさん陽動を行うんだな。
城門へと真っ直ぐに進む。
が、そこで神様はミスをしていた。
進み続けるウーラさんが城門を通過する。
城門前に陣取っていた兵士二人は彼をスルーした。
イベントは……起こらなかった。
「おや? なんだか不思議だね?」
普通に通り抜けちゃったウーラさんが困った顔をする。一応陽動だっただけに反応なしでは困るのだ。これでは作戦も意味が無くなる。
折角だしこのまま玉座に向かってみよう、多分そこまで行けちゃうはずだ。
戸惑うウーラさんを今度は僕らが引っ張って玉座の間へとやってくる。
玉座には帝王様が厳かに座り、その傍には宰相さん。そしてベロニカが悲痛な顔で立っていた。
が、僕らが来たというのに王様は前を見据えたまま、他の面々も誰何の声すら上がらず僕らを放置である。
うん、イベントが起こってないから次のイベントである彼らが行動出来なくなっているようだ。
王様の前に向って手を振ってみたが反応は無く、ベロニカの胸を突こうとしたらシークレットとパルマが怖い顔をしていたので即座に止めて、頬を突くに留める。
反応、ないや。
「これは、どうなって……?」
ウーラさんごめん、コレ、プレイヤーが進めないと意味ない奴だ。
でも、そうなると素通りしちゃったのはどうすればいいんだ?
もう一回入り直せばいいのか?
一度城門前まで戻ってみる。
しかし、兵士たちは完全スルー。目の前で変な顔しても前を見据えたまま微動だにしない。
イリスに聞いてみたけどここが戦場になるのは確からしい。
ウーラさんに聞いてもイベントらしいイベントは起こらない。
彼に話しかけるのがトリガーでもないし、兵士さんに話しかけるのもトリガーじゃない。
なら何がトリガーになって次の話が始まるんだ?
僕らは必死に探した。
けど彼らが動き出すことは無かった。
もしかしたら位置かもしれない、といろんな位置を通過してイベント発生しないかも調べてみた。でも出来ない。
これ、どうしろっての?
神様ヘループ!!
―― うん? おかしいね。発動自体はタップと共に開始される筈なんだけど? ――
グーレイさんも小首を傾げる。
―― あ、グーレイさんや、これ、ほら、案内役必須イベントだよ。ルーカが居ないと発動しない条件 ――
―― あ、ほんとだ。ホイホイ君、これ、なんでルーカ必須? ――
―― え? ……ああ、確か彼女の台詞が一つあったから条件にしていたような…… ――
―― じゃあ必要ないから削除しとくね ――
そしてルーカの数少ない見せ場が一つ、神様により削除されたのであった。
アイツが知ったら地団太踏んで悔しがるだろうなぁ。