七章開始、そして牢屋へ
ふぁーふ。
大きく伸びをして僕は起き上がる。
ベッドは普通に寝心地が良いのがいいね。
ここは神様に感謝だな。
プレイヤーが寝る場所だけいい感じのベッドがセットされてるのはありがたい。
起きた後は顔を洗って皆で食事を貰う。
食事を終えるとウーラさんのいる団長室へと向かった。
まぁ、これ以上伸ばす必要は無いからさっさと始めようってことなんだ。
ウーラ団長の傍にはベロニカも居て、二人とも部屋で何をするでもなく座ったままぼーっとしていた。
おそらく僕が7章始めるまで毎日こうやって無為な時間を過ごして行くのだろう。
なんというか、申し訳ないな……
さっそく7章をタップ。
その瞬間、何やら扉の向こうが騒がしくなる。
なんだ? と思った次の瞬間、兵士が雪崩の如く押し寄せて来た。
「ええーっ!?」
「な、なんだ!? どうなって……」
「居たぞウーラ=ギルモンだ! 捕らえよ!!」
あれ? これってもしかして……
なんだ、止めろ。そう告げるウーラさんが瞬く間に捕まる。
セフィーリアさんが全力抵抗してたけど、どうやらイベントらしく何度殺されようともゾンビの如く復活して捕らえようとしてくる。
おい神様、これ凌辱エンドとかあったら確実殺しに行くからな!!
ウーラさんともども僕らは捕まった。
魔王陛下も成す術なく捕まっており、セフィーリアさんだけが全力振り絞って脱出してしまった。
あの人ほんとこういう絶望に強いなぁ、一応イベントらしいから縁があったらまた。とは告げておいたけど、出来ればもう会わない方向でお願いします。
そのままレジスタンスメンバーと共に連行された僕らは、全員纏めて城の牢屋にぶち込まれた。
あの兵士覚えとけよ。牢屋に入れる際僕の尻蹴飛ばしやがったからな、地獄を見せてやる。
牢屋に入れられた後は人数確認。ルーカとセフィーリアが居ないけどそれ以外は全員ここに連れ込まれている。
別々の場所じゃなくて良かったよ。
「クソッ、なぜ居場所がバレた……」
舌打ちしたのはウーラさん。
そのまま誰も喋らず沈黙が訪れ……イリスが近寄って来て肘で押して来る。
ああ、これって僕が話しかけないと言葉が続かない奴か。
「あの、もしかして僕らのせいっすかね?」
「ん? ああ、いや。そう言う訳じゃないヨー。前々から裏切り者が居るのは分かっていたんだヨ。でも誰が反逆者かわからなかったから放置してたんだヨ、失敗だたねー」
はぁっと溜息吐いてお手上げポーズ。
僕の推理は間違っていたのかもしれない。名前が裏切るもんだっただけで実際に裏切るのは別の人だったんだ。
もしかしたら7章開始前に裏切り者を探しておけばこんなことにはならなかったんじゃないだろうか?
いや、あの時点ではウーラさん以外怪しい人物は見当たらなかった。
あの状況で他の裏切り者を探せという方が酷か。
となると、牢屋行きは確定ってことか。
「参ったわね。牢屋から逃げだしたのにまた牢屋に戻ることになるなんて」
「そういえばマルサこっから逃げたんだっけ。どうやって逃げたの?」
「あ、気付いちゃいましたご主人様? もう少し売り込んでみようと思ったのにねぇ」
マルサは自分の有用さを伝えるために黙っていようとしたようだ。困り切った僕らに切りだすつもりだったのだろう。
「ふふふ、ここですご主人様。ここから牢屋を脱出できますよ」
何の変哲もない岩を押しのけるマルサ。
普通脱走されたら牢屋内徹底的に調べるはずなんだけどな。
手抜き過ぎだろここの兵士。
7章1話はこの脱出路から始まるようだ。
ウーラさんや反抗組織組員全員を引き連れ脱出を開始する。
というか、なんかあの人見掛けないけど気のせいか?
いや、気のせいじゃないよな。となると……まさかね。
脱出路は最初に国に入る時に通った水路に繋がっていた。
御蔭で魔物が現れ襲って来る。が、魔王陛下の敵じゃない。
すぐさま撃破して僕らは出口へと辿りつく。
うん、また侵入禁止の場所から出て来ちゃったよ。
ここから出て良かったんだよね?
ウーラさんは脱出したあとメンバーを数え、僕と同じ結論に至った。
あの人が居ない。
気付いた途端顎に手を当て、青い顔になる。
「ダイスケさん、私は今二つの可能性を考えてます。一つは彼女だけ別の場所に連れて行かれ拷問をされている可能性」
でも、僕らは全員同じ牢屋に連れて行かれた。一人だけ別の場所というのはおかしい話だ。
「そしても一つ。彼女……ベロニカが裏切り者である可能性」
結論は、それしかなかった。
反抗組織で地位が高いため基本行動方針などは彼女が知ることのできる情報で、機密情報だってウーラ自ら彼女に漏らしていた筈だ。
そうなると、僕らが最初に出会った時のことも真逆の可能性が出てくる。
アレはベロニカが兵士に襲われていた訳ではなく、ベロニカが兵士たちと情報交換をしていた場所に出くわしたのだ。咄嗟に助けてしまったが、むしろ彼女にとっては有難迷惑だったようである。