その敵は、複数だった!?
目の前を往来する人々の中に、そいつは一人だけ逆向きで歩いていた。
後ろ歩きしてた? 違う。前後逆なんじゃない。上下逆なんだ。
頭を地面に付けながら空中を歩くおじさん。
髪は地面に擦りつけられ見事に頭頂部が禿げあがってしまっている。
地面には彼の髪らしき物が本当は生えてたんだよ。と自己主張するように点々と落ちていた。
アレは歩いているのか、それとも頭を引きずって移動しているのか。
あまりにも可哀想なので速攻神様にメールした。
するとグレイ? グーレイ? さんとやらが今この国を上から精査中だからついでに直しとくと連絡があった。
どうやら向こうでも粗探しはしているようだ。
ただ、一つの国を丸ごと俯瞰しているせいで数あるバグを見付け過ぎて手が追い付いていないらしい。
なんか駄女神様も手伝って直し始めてるらしいけど、またやらかすんじゃないその人。あ、女神か。
目の前にいた禿げ散らかしたおっさんの上下が突然入れ変わり、髪がふっさふさと生え始め……髭が地面まで垂れさがる。
髪も後頭部側は地面に届くほどに生え、お姉さんがその髪を踏んで行く。
ちょ、長くなり過ぎ……あ、ほら、おっさんが踏んだ瞬間前に踏み出したせいで頭が後ろに残って倒れたじゃん。
―― 駄女神ぃぃぃぃぃッ!! ――
神様の心の叫びがメールとして届いた。
だから僕に伝えず駄女神本人に言えよ神様。
多分首を両手で掴んで駄女神さんを揺さぶりながら叫んでいるんだろう神様を思い浮かべる。
うん、頑張れ。
まぁ、いいや。とにかく、今の変な人バグもそうだけど、僕が見てしまったこの国一番のバグはそれじゃないんだ。
目の前に二つもバグがあったから近い方先に伝えちゃったけどさ、最大のバグは、アレだよアレ。
家が、動いてる。
正確に言えば家が街道を歩いている、いや、歩いているというかランダム歩行状態でずり、ずりっと移動しているというべきか。
正直眼を疑ったよ。まさか人の代わりに家が移動してるとはね。
これも神様にメールしておこう。
しばらく待っていると、家が動かなくなった。
十字路の真ん中で鎮座したまま動かなくなり、通行人が行動不能になって渋滞が引き起こされる。
皆なぜ前に行けないのか戸惑い、しかし家が全ての道の真ん中を塞いでいるためどんどんと人が溜まっていく。
―― 駄女神ぃぃぃぃぃッ!! ――
あーあ、また駄女神さんに頼るから。
ヘッドロックかましながらコブラツイストに移行する神様とギブギブと叫んでいる駄女神様が脳裏に浮かぶ。
うん、まぁ、頑張れ。
―― ダイスケ君、悪いけどこの国のバグは僕らの方で精査しておくから君は次の話を進めておいてくれないかな? ホイホイ君の気力が持たないから ――
グーレイさんからストップが掛かった。
家が突如瞬間移動して本来あるべき場所に戻り、人々の往来が再開される。
このグーレイさんとかいうのはかなりデキる神様っぽいな。ホイホイ君もいい人材が助っ人にきてくれたもんだ。
このまま帝国調べるのも良かったけどグーレイさんに言われたので9話をタップする。
イリスによればやはりエイドリーが敵として出現するっぽいので大通りを戻る。
どうやらこの狂人、誰かれ構わず襲いかかる本当の意味でおかしな人だったらしい。
「うぉれぇぇぇわぁぁぁ、オマエだぁぁぁぁぁ!!」
僕らの姿を見付けた瞬間突撃してくる。
戦闘準備すらしてなかったので焦ったが、そんな僕の前に飛び込む一人の男。
古き英傑ウッディが割り込み、モストマスキュラーのポーズでエイドリーを威嚇する。
するとエイドリーがその場で立ち止まりオリバーポーズを取った。
「「フンッ」」
二人同時にサイドチェスト。
からの、ダブルバイセプス。
サイドトライセプスからのアブドミナルアンドサイ、トドメのフロントラットスプレッド。
そこからしばし睨み合う。
うん、よくわかんないけど今のうちに戦闘キャラ編集。戦闘開始!
筋肉達磨二人が互いの肉体美を見せ合う間にサシャ二人とタダシ、セフィーリア、若ケンウッドの五名が……ヘスティカーナ討伐部隊の編成だった。まぁいいか。
NPCに強制的にウッディさんが割り込み、戦闘が開始される。
何故かWAVEが2つに別れてるけど、ケンウッドの一撃でとりあえずエイドリー撃破。
次のWAVEに入った瞬間、六体のエイドリーが出現した。
「「「「「「うぉれぇぇぇわぁぁぁ、オマエだぁぁぁぁぁ!!」」」」」」
ホワッツ!? エイドリーさんが一杯!?
皆揃ってモストマスキュラーポーズを披露する。
ウッディまで一緒にしない。アホか?
「暑苦しくてかないません。とりあえず、全員殺せば問題ありませんよね?」
そしてセフィーリアさんにより諸共に射殺されるエイドリー6体とウッディ。
ガチムチキャラは一瞬にして抹殺されました。




