次期皇帝はこうして決まった
パルマからセフィーリアが銃を取りあげる。
武器を無くしたパルマはその場にへたり込み、ソレをサボが支える。
あとはバカップルの会話を聞けば終わりか。
「よく、がんばったなパルマ」
「サボ……これから、どうしよう? 私、お兄様たちにもお父さまにも死んでほしくなかった。皆で楽しく過ごせたらよかったのに……」
「ああ、俺もそう思う。だが、これが現実だ。俺たちは……」
「ん、つまり皇帝とお兄さん達生きてていいのか?」
「「へ?」」
僕は思わず呟く。
サボとパルマが驚くが、僕はソレを無視して少し前の話をタップ。
すると謁見の間に無数の兵士、宰相、そして玉座に座った皇帝陛下が現れる。
「「へ?」」
死んだ筈の皇帝と宰相が目の前に現れたことで呆然とする。
「パルマか……」
厳かに告げる皇帝陛下。
そう、僕らは皇帝に初めて面会したところまで戻ったのである。
ふっここからは神様のバグ次第だ。期待してるよ、神様!
「おうパルマ。帰って来たんだってぇ?」
「やぁパルマ。また会えて嬉しいよ」
アニキ二人がやってくる。
よし、この辺りかな。
「あ、お兄さん方悪いですが玉座近くに、あと宰相さんはちょっと離れて」
「え? はぁ……」
よくわからないながらも離れる宰相。
お兄さん二人を玉座前に配置して、僕らの仲間で玉座を囲む。
「んじゃ、ぽちっとな」
新たに出現していた5章エピローグを開始。
すると突然血を噴き倒れる宰相。
「な、なんだ!?」
「宰相!?」
「だ、ダイスケさんこれは!?」
いち早く気付いたのはパルマ。
驚き慌てて僕を見る。
あ、ルーカとイリスが気付いてニヤついている。
「ふっ。いいかパルマ。俺はプレイヤーだ。戦闘ステージの選択権は僕にあるのさ。つまり、君のお兄さんとお父さんが生存している状態で戦闘をキャンセル、エピローグに飛べば三人が生存した状態で、丁度宰相が倒され血を噴き出した場面に飛ぶのさ」
ここまで進めておけば王達を生存させたままクリアすることが可能となるのである。
――ちょ、ダイスケ君、またバグ利用しただろ!?――
ふっ、生存させる術を残している方が悪いのさ。
「どう、なっておる?」
「お父様。宰相はお父様やお兄様方を暗殺し、自らを皇帝にしようと画策していたのです」
「なんだと!? 本当かウバウス!?」
「く、くく、なんだこれは……なぜ、私が? くっ。皇帝、今からでも遅くありません、二頭政治をすべきです。どちらか一人では貴方が皇帝を退く方が国の危機だ。なればこそ、全てを廃しこの国を守るために私が……ぐふっ」
「宰相、そなたは……我を排してまでこの国の礎になろうとしていたのか……」
「何度も言ったではありませんか。この二人のどちらが帝位を継いだとてこの国に先は無いと。内政に強いだけでは外敵に潰される。外敵に強いだけでも内側から崩される。二人が力を合わせる。それが出来ないのならば皇族など不要の長物だと。我らが担うのはこの国全ての臣民のため、その礎となれぬ皇族など不要だ……と……」
宰相は力尽きその場に倒れ込む。
なんか、彼の方が正しいこと言ってるような気がして来たんだけど、これ、本当に皇族生かしたままでよかったのかな?
「ウバウス……すまぬ」
玉座から立ち上がった皇帝はウバウスの亡骸の前で膝を折ると、彼の亡骸を抱き締める。
「お前はいつも、この国を考えていたのに、国政を考えるべき我は我が子のことばかり、そなたに愛想を付かせ暗殺という手段まで行わせようとしていたのだな……」
ごめん、実際一度は成功しちゃったよその暗殺。
「そなたの思い、遅ればせながら受け取った。我もまた鬼となろう。この国は任せよ。必ずお前の理想を叶えよう。千年続く皇国を実現してみせる」
うーん、宰相さんの本音は言わない方がいいよね。あの人絶対自分が皇帝に付きたいだけだったと思うんだ。
だってパルマを妻にしようとか調子乗ってたし。
まぁ、わざわざ言う程じゃないから黙ってるけどさ。
宰相の亡骸を丁重に弔うよう兵士達に告げて、皇帝は玉座に座り直す。
先程までの表情から一変、厳かな雰囲気漂う眉間に皺を寄せた厳つい顔になっていた。
その豹変ぶりに皇子たちも驚きを隠せない。
「ケニス、タウロス、パルマ」
名を呼ばれた三人がはいっと答える。
その場に傅き臣下の礼を取った。
あの、コピーパルマまでそれしなくていいと思うんだけど。
「我が居る間は治世は我が行う。しかし、我が動けなくなった時、判断を下せなくなった時はそなたらしかおらん。だが、皇帝の座を争うそなたらは互いを暗殺しようとしておるだろう?」
「そんなことは……」
冷や汗だらだらでケニスが告げる。うん、ダウト。あんた絶対考えてたろ。
「ウバウスの言葉はそなたたち自身で考えて貰いたかったがこのままでは無理だろう」
「い、いえ父上。私が武力だけでなく知力も付けますゆえ、なにとぞ私を皇帝に……」
空気読めタウロス。お前が皇帝にさせられないのたぶんそういうところだぞ。
智謀系ならケニスに軍配だな。
「よって皇帝にはそなたらは相応しくない」
「「なっ」」
「出来るならば新たな皇帝の元、政治をケニス、軍部をタウロスが司って貰いたかった。なれどそれでは近く国が崩壊すると憂いていた。お前達はあまりにも仲が悪い」
「「……」」
「よって次期皇帝はパルマ。否、パルマの選んだ者とする。傍で見ていたお前ならば皇帝がやるべきことも、兄弟たちの足らぬところも知っておろう。ソレを補える者が居るならばその者を付けてどちらかを皇とせよ。居ないならば市井より探して参れ」
つまり、パルマに次期皇帝の選定権を委譲したってことですか。
「馬鹿な!?」
「パルマ、俺だろ? 俺を選ぶよな!?」
「え? え?」
うん、だよね、戸惑うよね?
「えっと、じゃあ、サボさんで」
迷えよっ!?