ことの真相、真犯人は奴だった
10話をタップしてイリスに次の場所を尋ねる。
玉座のあたりに戻ればいいようだ。
僕らは警戒しながら謁見の間へと戻る。
玉座一つがある謁見の間。既に死体は片付けられたのだろうか? 一人の男が玉座に座っていた。
男はパルマを見るなり眼を見開く。
どうやらパルマはさっきの暗殺者により殺されたと思っていたのだろう。
「おやパルマ皇女、まだ生きていらしたのですな」
「貴方は……宰相、ウバウス!?」
犯人宰相だった!? そういえばこいつだけ死んでなかったわ。
というか、シークレットの時も宰相だったから宰相がまた犯人だとは思わなかった。
神様に連続で宰相犯人説はどうかと思いますよ?
そして宰相の名前聞いてたらまず間違いなく真相分かってたよ。なんだウバウスって。皇帝の座を俺がウバウスとかいいたいのか?
「ふふ、はい、私はウバウスですパルマ皇女」
「貴方が、お父様たちを!」
「まどろっこしいのですよ皇帝陛下は。帝国からの侵攻はすでに始まっているのです、ならばこそ早急に次の皇帝を決めねばならない。なのに二人のどちらを皇帝にするか未だに指定すらしない。それというのも互いに足らぬ部分があるからです。タウロス皇子は軍人としては最適だった。軍部からの信頼も厚い。しかし政治を行うには力不足。まさに脳筋ですからな。ケニス様は政治については問題は無いのですが、こと戦争に関しては及び腰。可能であれば戦争はタウロス皇子に任せ、内政をケニス様が対応すればよいのですが、二頭政治をするには兄弟仲が悪過ぎる。ならば、邪魔になる頭全てを取っ払ってしまえば風通しが良くなりましょう」
簡単に言えよ。今の皇族が邪魔になったから皇帝の位をぶんどりましたってな。
「そんな理由で、お父様たちを!?」
「政治に関してはケニスなどおらずとも私がいればいい。そして二人の皇子の死を貴女に被せてしまえば軍部も私に味方してくれましょう。私ならば上手くやれる。この国を長く繁栄させられる。ああ、そうだ。皇位につく正当な理由ができますね。パルマ皇女。私の妻におなりなさい。全てを黙って我が妻となるならば、命だけは助けて差し上げましょう」
うん、屑宰相さんだなこの人。
セフィーリアさんも同意見らしく、いつでも殺せますよ? と銃を取り出す直前に構えている。
いつでも早撃ち出来る状態らしい。
「私は……」
パルマが何かを叫ぼうとするのを、サボが制した。
そのままパルマを守るように前に出る。
「残念だがパルマは俺が先約済みでね。つまり、あんたの邪魔をする皇族ってのはまだ一人残ってんだわ。このサボっていう皇族がな」
銃をテンガロンハットのツバに付けてふっとニヒルに微笑むサボ。
爆死しろサボテン野郎。
「チィッ、どこの馬の骨とも分からん芋風情が。こいつ等を殺せ!」
おお、どっからともなくアサシンの群れが。
第10話なのに雑魚戦か? いや、違う、この戦場フィールド、見覚えがあるぞ。
謁見の間全てが戦闘フィールドになったようだ。
敵は無数のアサシン達。
これ、ルーカが敵になった時のイベントに酷似してる。
多分だけど全員参加の大戦戦闘だ。
「クハハハハハハハ!! 塵芥どもよ天を見上げ絶望せよ! 我が名はグレヴィウスリーハ! 貴様等を悉く撃ち滅ぼす者である。星屑達乃虐殺!!」
あ……
四方八方から迫り来るアサシンの群れに焦りを覚えた瞬間だった。
魔王陛下のフィールド全体への開幕必殺攻撃。
一瞬にしてアサシンの群れが消え去った。
後に残るのはレッドバー状態の宰相ウバウスただ一人。
そこに、セフィーリアさんがピストルを取り出し呆然としていたパルマに渡す。
「え?」
「トドメは、貴女自身で付けなさい。貴女の絶望を救えるのは貴女自身よ。その決意を乗せて、敵対する絶望を打ち抜くの、私に出来たのだから、貴女にも出来るでしょ?」
「セフィーリアさん……」
手にしたピストルにごくりと息を飲む。
セフィーリアに言われるままに構え、焦りを見せるウバウスに銃口を向ける。
「ま、待てパルマ皇女、あ、貴女が皇帝陛下となればいい、私はソレを支えましょう。もともとこの国を守れれば私は……」
「お父さま、ケニスお兄様、タウロスお兄様……仇を、撃ちます!」
引き金が引かれる。
決意と共に撃ちだされた銃弾がパルマの絶望を打ち砕く。
逃げることすらしなかったウバウスの額に風穴が開かれた。
って、今のどうみてもパルマ斜め上に撃ってたぞ!?
はっと後ろを見れば、銃から硝煙を靡かせるサボの姿。
静かにっとジェスチャーしているので言うなってことらしい。
セフィーリアからも言ったらあんたの側頭部撃ち抜くからね。と無言の圧力。
どうやらアイツを殺したかどうかよりもアイツに向けてパルマが銃を撃ち抗った、そして撃ち勝ったという事実があればよかったようだ。